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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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Pure Snow 【前編】

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眠れなかったので、突発バレンタインSS。


 どうして、あなたを好きになってしまったんだろう。
 友達の彼氏だと、解っていたはずなのに。
 昨日作ったバレンタインのチョコは、今も鞄の中で眠っている。

雪花せつか
「きゃあっ!?」
 不意に、頬に触れた熱さに驚いて、和泉いずみ雪花は思わず頬を抑えて振り向いた。
「加川くん……!?」
「ドアの音にも気づかないって、どんだけ集中してんだよ? ほい、外出たついでにコーヒー買ってきた」
 笑いながら手に持った缶コーヒーを渡してくれるのは、加川とおる。雪花の隣のクラスで、同じ放送委員会で、雪花の友達である幸野こうの郁未いくみの彼氏で……そして、雪花の想い人、だ。
 今日は二人が放送当番で、最終下校時刻を知らせるまでにはまだ時間があるからと、投書箱に寄せられた、昼休みにかける曲のリクエストを集計していたのだが、彼は部活の後輩に呼ばれて今の今まで席を外していた。
「部活、いいの? 私一人でも大丈夫だよ?」
 雪花は、今日は部活を休むと言って来ているけれど、徹は後輩が呼びに来るくらいだから何か大事な用だったのではないかと思った。
「平気平気。副部長来たし」
 自分用に買ってきたらしい、もう一本の缶コーヒーを開けながら、徹は雪花の手元を覗き込む。
「こっち、どこまで進んだ? って、……聞くまでもないか」
「見事にバラバラなリクエストばかりだから……書き出すだけでも一苦労よ」
 机の上に山となったリクエスト用紙は、彼が出て行った時とさほど変わらないように見えるだろう。一応、20枚程は終わったのだが、一枚の紙で5曲までリクエスト出来るので、ちっとも減らない。
 書き出したら、その後にはパソコンに打ち込みをしなければならないし、やる事はたくさんある。
「ってか、1年の奴ら見事にサボったな」
「これだけあれば、やりたくなくなるのも解るけどね」
 毎日少しずつでも処理しておけば、ここまで溜まることもなかったはずなのだが。
「次の委員会で説教プラス、ペナルティ追加決定だな。ペナルティ考えとけよ、雪花」
「え、私が考えるの!?」
「いや、俺も考えるけど」
 さりげなく隣の席に座られて、思わぬ距離に鼓動が跳ねる。
 逸る鼓動に気付かれぬよう、雪花は缶コーヒーで手を温めながら、僅かに椅子をずらした。
「これ、ありがとう。お金、後でもいい?」
「いいよ、そんなの。飲んで少し休んでな、続きは俺がやるから」
「……ありがと」
 一応この部屋も暖房は付いているけれど、それによる喉の渇きを覚えていたから、このコーヒーは有り難い。もう一度礼を言って、プルタブを開ける。
 最新曲から、少し古い昔の曲、たくさんのタイトルがレポート用紙に縦に並び、その横には数を数えやすいように「正」の字が続いている。
 自分の字と、彼の字が並んでいく。こく、こく、と少しずつコーヒーを飲みながら、彼の横顔を盗み見る。
 けれど思い浮かぶのは、屈託なく笑う郁未の姿だった。
(郁未ちゃん……バレンタインなのに、私と加川くんが二人でいても、何とも思わないのかな……?)
 雪花が徹を知ったのは、去年のバレンタインの翌日だった。「昨日から付き合ってるの」と紹介されて、互いによろしく、と挨拶をしただけ。
 特に関わることもなかったし、ただの友達の彼氏、だったはずなのに……。
 4月になり、何故か同じ委員会になって、委員長と副委員長をそれぞれ(じゃんけんで負けて)任され。選択授業も何故か同じで、各クラス一名ずつの代表にもなって。
 そうして一緒に過ごす時間が長くなった頃から唐突に、郁未と笑う彼を見て、胸が軋むのに気付いた。……好きなのだと自覚するのに、そう時間はかからなかった。
『雪花』
 郁未がそう呼ぶからと、いつの間にか名前を呼ばれるようになっていた。それが嫌ではなかったし、呼ばれる度に鼓動が速くなった。
 だからなるべく二人きりは避けるようにしているのだけれど、当の郁未が事あるごとに雪花を巻き込む上に平然と彼と雪花を二人きりにしてくれる。今日も、バレンタインだというのにバイトだからと、彼女は早々に校舎を後にしている。
 ……信頼を、裏切るような真似はしたくないのに、一つ、また一つと、彼を知る度に惹かれていく自分が嫌になる。
(やっぱり……渡せないよ……)
 鞄の中に忍ばせてある、ラッピングしたチョコレートの箱を思い出す。
 義理だから、と嘘をついて渡せばいいと、渡せたならそれだけで満足だと自分に言い聞かせても、チョコに込めた想いは、義理なんかじゃない。
 心の中でそっとため息をつくと、放送室の扉がガチャリと開いた。
「和泉、加川。雪降ってきたぞ」
 徹の担任でもあり、放送委員会の担当でもある教師が告げた単刀直入な言葉に、思わず二人は席を立ち、窓の外を見た。
「うわ、マジかよ……」
「道理で寒いはずだわ……」
「そうすぐには積もらないとは思うが、雪の放送だけかけたら、今日はもう帰った方がいい。和泉はバスだし、加川は自転車だろう?」
「ですね。雪花」
「うん」
 教師の言葉に素直に返事をして、雪花は放送のスイッチを入れた。放送を知らせるチャイム音の後に、言葉を続ける。
「校舎内に残っている生徒は、早めに帰宅の準備をして下さい。雪が降って来ていますので、積もれば交通機関の乱れが予想されます。繰り返します……」
 もう一度同じ言葉を繰り返し、雪花は放送機器のスイッチを切った。その時にはもう、徹が机の上を片付けてくれていて、あとは帰るばかりとなっていた。
 きょとん、とする雪花に、徹はニッと笑いかけて、マフラーを投げて寄越す。
「帰ろ」
 一緒に、という言葉が聞こえた気がして、雪花は郁未に対する罪悪感を持ちながらも、拒むのも嫌で、こくんと頷いた。

 → 【後編】

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