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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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Angel's Ladder 【6】 転生 <完>

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一緒に物語を作って♪ Part4の回答を元に作った物語です。

『……それが、彼を殺したそなたへの罰だ』


 カーン、カーン……。冷たい夜に、遠くで聞こえる鐘の音。その音色しか、刻む時を知らせてくれない。
 見回せば、一人では広すぎる、何もない部屋。在るのはただ、我が身の温もりだけ……。明かりを求めて天井に手を伸ばしても、暗闇しかない。朧げに、指の輪郭が見えるだけだ。

(確かスイッチ、あったわよね……)

 立ち上がって壁のスイッチを押しても、明かりはつかない。

(壊れたのかしら……?)

 窓から差し込む夜の光を頼りに、ゆっくりと歩く。一歩ずつ、一歩ずつ。長い間枷を付けられて、この部屋しか歩かなかった体は、当然弱り切っていた。
 窓ガラスに手を伸ばす。今宵は満月。そう、初めて枷を解き放った、あの日と同じ……。差し込む光を遮るように触れたガラスは、どことなく冷たくて。

(冷たいのは……私の心……?)

 窓からそっと、星空を見上げてみる。ここから見る夜は、もう終わりだ。何故ならここにはもう、フィルカを捕らえるものは何もないのだから。
 窓の鍵を外して開ければ、冷たい夜風が伸びっぱなしの髪を揺らす。冷えそうな体を、両腕で僅かながらも温める。
 窓の下を、肩を縮めながら、豆粒のように動く人々は、きっともっと寒いだろう。フィルカはここで『自由』を奪われていたけれど、この部屋の中はいつも温かかったから。
 ……もう、その魔法は消えてしまった。一瞬だけ、手に入れた『自由』が疎ましくなったけれど。

(……行こう)

 パタン、と窓を閉める。もうここにはいられない。フィルカは罪を犯したのだから。人間を殺すという、大罪を────。

 軋むドアを開けて、外への一歩を踏み出す。真冬の寒さに少し身を震わせたが、今は『自由』を手に入れた喜びの方が大きかった。

(クライド……あなたのおかげだわ)

 目指すのは、日の出が綺麗な場所。日の光を浴びればきっとこの罪は浄化される。そして戻るのだ。ずっとずっと、願っていたそらへ。
 場所さえうろ覚えだが、辿りつけるだろうか。
 そんな不安を押し殺して、白き翼を紅く染めた天使は、果ての大地を目指し歩き始めた。

 時折歩き、時折翼を使って飛び、フィルカはそらへの入口へとようやく辿り着いた。
 血に染まった翼は、雲の隙間から降り注ぐ太陽の光に浄化され、今では白銀に戻っている。
 雲の隙間から降り注ぐ光は、神が作り出した天と地を繋ぐ道。
 人はそれを、天使の階段と呼ぶ────。

「神よ……請願の儀がございます……」

 クライドの魂をしっかりと胸に抱いたまま、フィルカはゆっくりと光の道を上っていく。
 ほんの数秒、目を閉じていると、足が地についた感覚がした。そして聞こえる、厳かな声。

「フィルカ、よく戻った。長き任、辛かっただろう」

 神の姿は見えずとも、ここは神への謁見の間だと気付いたフィルカは跪づき、頭を垂れた。

「……ただいま、御許に戻りました」
「して、請願の儀とは?」

 こんなわがまま、叶えられるかは解らない。だがフィルカは、あんな理由で生を終えてしまったクライドが悲しくて。
 ずっと胸に抱えていた両手を、そっと開く。

「彼を……いえ、この魂を……天使として、生まれ変わらせていただきたく……」
「それは……?」
「私から長く自由を奪った足枷から助けてくれた……私が、殺した人の……魂です」
「殺した? フィルカ、そなた」
「すべて、お話いたします……」

 クライドが秘められた王子だった事、どうせ呪い殺されるのならと、フィルカの枷を解いた事、呪いに蝕まれて苦痛に歪む彼を見ていたくなくて、……魂と肉体を切り離した事……。
「何と言われようと、私が彼を殺した事は事実。そらを去れと仰るのならそうしましょう。ですが彼は……この魂だけは」
「もう良い。顔を上げよ、フィルカ」

 告げるべき言葉を遮られ、フィルカは言われた通りに顔を上げた。

「そなたの願い、叶えよう」

 クライドの魂が、大きな光に包まれる。光の中で、どんどん大きくなっていく影。それは、最後に見たクライドの姿そのものだ。

「クライド……!」

 手を差し延べる。だが、フィルカが呼び掛けてもその目は開かない。まだ足りないのだ、天使に必要な力……聖なる力が。

「……聖力はフィルカ、そなたが彼に与えよ」

 聖力を分け与えるということは、フィルカが高位天使ではなくなるということを意味する。

「……それが、彼を殺したそなたへの罰だ」

 神は罰だというけれど、それのどこが罰なのだろう。フィルカの願いを叶えてくれて、その上同じ階級であれば傍にいられる時間も長くなるのだから。

「……ありがとう、ございます……っ!」

 フィルカは頭を下げて礼を告げると、口づけと共に、クライドに自らの聖力を流し込む。これ以上は無理、と、唇を離して、クライドの瞳が開くのを待った。
 時間にすれば、ほんの数秒だっただろう。しかしフィルカにとっては、それまでの時間はとても長く感じられた。

「ん……フィルカ……?」
「クライド……!」

 未だぼんやりしながらも身を起こすクライドに、フィルカは思い切り抱きついて。勢い余って床に倒れ込み、クライドに「痛いです!」と文句を言われる羽目になったという。

 二人が天使としての生を終え、再び人間として大地に生を享けるのは、ずっとずっと先の話────。


<完>

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Comment

NoTitle

うぅぅ。本当に完結しているだと…。
むー。もっと早く教えてくださいよ。結構楽しみにしてるのにぃ。おかげで孫(?)の顔を見るのが遅くなってしまったではありませんか。
天使。素敵な話をありがとうです。
  • posted by 小雨
  • URL
  • 2014.01/19 15:24分
  • [Edit]

Re: NoTitle

はい、完結してました(笑)
勝手に書いたので、どうしようかと思って……完結してから考えよう、と。
では、次のがもし書けたとしたら、連載開始と同時にお知らせするようにしますね。

コメント、ありがとうございました。

  • posted by 琳架
  • URL
  • 2014.01/19 15:40分
  • [Edit]

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