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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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図書館戦争 遣らずの雨

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『遣らずの雨、みたい……』
※堂上×郁 革命後?


 堂上の怪我も治り、戦線に復帰して2回目の公休の日。郁にしては珍しく、彼を待つ立場になっていた。
 想いが通じ合ってから、初めてのデートに遅刻したくない、という気持ちも確かにあったのだが、実際は何て事なく、先程まで柴崎と手塚と、三人で出掛けていたからという簡単な理由だ。

(教官、まだかなぁ……)

 人であふれる駅前に立ち、郁はキョロキョロと視線だけでなく首も回す。

「……お前、それはイヤミか?」
「きゃあ!?」

 突然、斜め後ろから聞こえた、苦笑混じりの声。思わず飛び上がって、振り返れば、声の主は穏やかに笑っていた。

「きょ、教官いつの間にっ!」
「お前の視界から外れていた間なのは確かだな」
「う……」

 そんな意地悪を言わなくても、と郁は小さくなった。郁よりも身長の低い堂上を、入隊当時は散々罵倒したのを揶揄されているようで、何となく居心地が悪い。
 俯いていると、頭にぽん、と温かな手の平が乗せられた。

「冗談だ」

 瞳を細めて笑うその顔は、あの日のデートの時と同じ、とても甘くて、優しくて……自分が女の子扱いされるのに慣れていない郁は、瞬時に顔を赤くした。

「み、見ないでください……っ」
「解った、でも歩かないと上映時間に遅れるから」

 ぱし、と片手を掴まえられて、おまけに指先が交互に絡まる繋ぎ方をされて、郁の頬はますます赤くなっていった。
 今日は、カミツレを飲んだ時に約束した映画デートだ。もちろんあの時は、堂上とこんな関係になれるとは夢にも思っていなかったけれど。

「前評判は上々みたいだな、今日見る予定の映画やつは」
「ですねー。封切りしたばかりだから、もしかしたら立ち見も有り得るかも……」
「3時間程度の立ち見なら、何てことないだろう。俺も、お前も」

 むしろ椅子に座っていた方が、郁には窮屈なのではないかと、堂上は要らぬ心配までしてしまう。

「楽しみです! テレビの予告だけでワクワクしてましたもん、あたし」
「その顔見れば解る」
「えっ」

 元々顔には出やすい方だが、堂上といると更に顔に出るらしい。ある意味、素でいられるのはいい事だとは思うけれど、つくづく取り繕う事が苦手だなぁと実感してしまう。

「まぁ、俺も楽しみだ。原作も好きだし」
「あ! あたしも読みましたよ原作!」
「またキャラ読みか?」
「はいっ!」

 難しいとこは全部飛ばし読みか斜め読み、の郁と、しっかりストーリーを読み込む堂上ではおそらく、映画を見た後の感想も違うだろう。でも、その感想の違いも楽しめるといいと思う。そうして互いのプライベートを知っていける関係になったのだから。
 あえて昼時の上映時間を選んだせいか、席はまだ若干空いており、二人は立ち見をする事なく上映開始を待ったのだった。
 そして、3時間後────。郁はアクションの派手さと、CG効果にすっかり魅せられていた。

「すごかったですね、あのCG!」
「ホントに日々進化していくなぁ。……っと」

 映画館を出ようとした堂上は、外を見て足を止めた。

「雨か……」

 ぽつ、ぽつ、と地面に出来た黒い円は、みるみるうちにその範囲を広げていき、あっという間に土砂降りになった。折りたたみ傘を持っている人は、傘を開いて次々と映画館を出ていく。

「すいません、あたし、傘……」

 出てくる時は見事な晴天だったので、傘を持ってきていない。おずおずと切り出すと、堂上は気にするなと笑った。

「天気予報では晴れだったから、俺も持って来てない。通り雨かもしれないし、少し待ってみるか」
「そうですね」

 とはいえ、このままここにいては邪魔になるだけだ。上にカフェがあるからと、とりあえず移動することにした。
 テーブルに案内され、飲み物とケーキの注文を終えた郁は、窓の外に降る雨を見てぽつりと呟いた。

「遣らずの雨、みたい……」

 カラン、と出された水の中の氷が揺れる音に気づいた郁が、堂上に視線を戻すと、彼は驚いたように郁を見ていた。

「? 何ですか?」
「いや……お前の口から『遣らずの雨』なんて言葉が出てきた事にちょっと驚いた」
「な、あたしだってそれぐらいの言葉は知ってます!」
「違う、馬鹿にしたんじゃなくて、だな。あ~……」

 何故か堂上が言い澱む。先程の言葉が馬鹿にされたわけでないのなら、その理由は是非とも聞きたい。
 期待を込めて堂上を見つめていると、「意味」と呟かれた。

「はい?」
「意味、言ってみろ」
「えっと、帰ろうとする人を引き止めるように降り始める雨の事、ですよね?」
「で、このタイミングでお前がそんな事を言い出した」
「? どのタイミングですか?」

 きょとん、と郁が首を傾げると。堂上は盛大なため息をついた。

「……お前だもんな、仕方ないか……」
「な、何かすっごく馬鹿にされた気分なんですけど……!」
「だから馬鹿にはしていない。雨といえば、雨の中のアクションシーンもすごかったな、さっきの映画」
「あ! あれホント泥だらけでしたよね~! その分、必死さがすっごい伝わってきて!」
「そうか? 俺は必死というよりは切なさだったぞ」
「もちろん、切なさもあったんですけど」

 そうして二人は、先程まで見ていた映画の感想を肴に、遣らずの雨がやむのを待っていたという。


~帰寮後・郁~

 結局うやむやになってしまった遣らずの雨の意味。それを柴崎に告げた途端……。

「あーやってらんない、もう見てらんないわ~」

 と、暑くもないのに片手うちわで顔を仰いでいる。

「え、ちょ、何よ?」
「そんな言葉が出てくるって事は、帰りたくないって意思表示してるようなものじゃない?」

 遣らずの雨は、人を帰らせまいと降る雨の事。そして郁がそう感じたのなら、もっと堂上と一緒にいたいという気持ちの現れでもあって。

「な、あたしそんなつもりじゃ……!」
「教官も解ってるから安心なさいな」

 とは言われたものの、やっぱり気になって、でも彼に直接は言えないと、一晩悩む羽目になったのだった。


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