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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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Wisteria Memory 【10】 藤の下で、またひとつ S:side

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一緒に物語を作って♪ バトン の回答を元に作った物語です。

『同じ事考えてたのに、先に言っちゃうなんてずるい!』


 そして、5月。約束の日────。
 高征と待ち合わせたのは、駅近くのスーパーだ。手ぶらで行くのもなんだし、と紫乃が決めた。

(……何か、デートみたい)

 男の子と二人で、一緒にお出かけ。結那にこの事が知られたら、「デート以外の何だって言うのよ?」とでも言われそうだ。

(その前に、「聞いてないわよ!?」って怒られそうだけど、ね)

 高征と再会して一ヶ月。クラスでは席こそ遠いものの、事あるごとに一緒にいるようになった。というより、理人と結那が気が合っているらしく、高征と紫乃は振り回されっぱなしだ。
 けれど、高征といるのはとても楽しい。同時に、彼が結那と楽しそうに笑っていると、心が微かに軋む。

『高征のこと、好き?』

 理人にそう言われた時の自分が一体どんな顔をしていたのかは解らないが、瞬間的に顔を赤くしてしまって、「やっぱり」と笑われた。そしてその単語にこそ驚きはしたけれど、「ああ、そっか」とすとん、と納得してしまった。
 以来、高征と目を合わせられなくてしばらくは困っていたけれど、それもいい加減慣れた。今はただ、高征の傍にいると高鳴る鼓動を宥めるのに必死なぐらいだ。

『伝えないの?』

 あいつも紫乃ちゃんのこと、好きだと思うよ? と理人に背中を押されて早一週間。どうせ伝えるのなら……あの藤棚の傍がいい。そこでなら、例え振られたとしても……一年前の自分達の関係に戻れるような気がしたから。

「しぃ! 悪い、待たせた!」
「あ。おはよー、たかくん」

 高征だけが「しぃ」と呼ぶ。それが特別な響きに思えて、呼ばれる度に嬉しくなる。それから二人はスーパーで果物ゼリーの詰め合わせを買って、翔真の家へと向かった。
 辿り着いた翔真の家では、珪子がニコニコと二人を招き入れてくれて、仏壇に手を合わせたあとに、二人で同じ学校に通っている事を報告すると、珪子が「ええっ!? そんなの有りなの!?」と高い声で驚いた。

「すごいわ~……。ロマンチックに言うなら運命よね、もう」
「お前の口からロマンチックなんて言葉が出て来るとは……明日は雨か」
「何か言ったかしら、翔真?」

 じろり、と珪子に横目で見られた翔真は「何も言ってないぞ、うん」と誤魔化すように咳払いをした。相変わらずの二人に、高征と紫乃は忍び笑いを堪える事が出来ない。

「ところで二人とも、こんな所に来てて良かったのか?」
「え?」
「いや、高校生って言ったらそれこそ遊び盛りだろ。ゴールデンウィークなんて絶好の遊び日和だし」

 確かに、理人や結那、その他数名の友達に、ゴールデンウィークはみんなで遊ぼうと提案されていたが、高征と紫乃にとっては、ここへ来る事の方が大事だった。4月に再会してしまった時点で、約束はもう無効のようなものだったけれど、それでも、あの藤を見に行きたい。
 高征だけではなく、紫乃もそう言った。だからこそ、ここに来たのだ。

「思い出を大切にしてくれるのは嬉しいけど、自分達の思い出を作る事を忘れちゃダメよ」

 今の高征と紫乃には、たくさんの未来があるのだから、と、保育士らしく優しく諭す珪子に、高征が笑顔で答えた。

「大丈夫です、最終日にみんなで遊園地なんで」
「そういえば結那が異様に張り切ってたんだけど……何かあるの?」

 絶対それまでには帰ってくるのよ! と念を押してきた結那の顔を思い出す。

「ゴールデンウィーク限定のイベントがどーのって言ってたような気がするけど……」
「なら、いいんだ。せっかく一緒の学校になったんだし、たくさん思い出作っておいで」
「大丈夫よ、きっとこの二人、運命だから!」
「……その根拠はどこから……」

 珪子の言葉にがくりとうなだれた翔真、という図を、クスクスと笑いながら見ている紫乃の横で、高征は何故かボーッとしている。

「たかくん? どうかした?」
「ん? いや、何でも……って、顔が笑ったまま戻ってないぞ、しぃ」
「だって珪子さん、結那みたいなんだもの」
「確かにな」

 珪子が余りにも結那の性格に似ているので、何だか学校にいるような気になっていた。
 それから去年と同じようにお昼をご馳走になって、高征と紫乃はまた来ます、と告げて翔真達の家を後にした。来年は三人でお出迎えするからね、という珪子のサプライズ付きだったが。

「翔真さん、知らなかったんだねー。珪子さんが妊娠してる事」
「っていうか、珪子さん楽しんでなかったか? 翔真さんの反応……。女は怖い」
「それって、私も入ってるの?」

 そうではないと思いたいけれど、と期待しながら悪戯顔で高征を見上げると、彼はまさか、と笑って先に藤棚の下へと向かって行く。

「良かった……」

 怖い女と思われてたら、これから言う言葉を躊躇うところだった。
 高征の隣に立ち、紫乃は垂れ下がる無数の花を見上げて顔を綻ばせた。

「今年も、綺麗に咲いてるね」
「うん」

 ここで出会って、離れて、再会して……実際に一緒に過ごした時間はとても短いのに、紫乃の中で高征の存在はとても大きくなっていた。それを、どんなタイミングで伝えたらいいかと悩む。

「……あのさ、しぃ」
「なぁに?」

 悩んでいても、返事だけは返す。藤を見上げたまま次に続く言葉は何だろう? と考えていると、思わぬ言葉が耳に届いた。

「俺……、しぃとこれからもずっと一緒にいたい」
「え……」
「……好きなんだ、しぃの事」

 うそ、と口に出しそうになった。けれど高征の瞳は真剣で。……何を言葉にすればいいのか解らなくて、ただ、彼を呼んだ。

「たかくん……」
「言うならここで、って決めてたんだ。……俺と、付き合ってください」

 言葉が、確定された。それは、紫乃と同じ気持ちだという事で。素直に嬉しい、の、だけれど。……先に言われたことが、何だか悔しい。

「……っ、い……っ」
「え、何……」

 聞き返されて、紫乃はキッと高征を睨み付けた。

「同じ事考えてたのに、先に言っちゃうなんてずるい!」
「っ、それって……」

 あ。と、言ってからこれが答えも同然だという事に気付いて、慌てて口元を両手で覆い隠したけれど、高征の顔は少しだけ嬉しそうだ。
 どうしよう、と内心でおろおろしていると、柔らかく抱き寄せられた。

「た、たかくん……」
「もう一回言おうか?」

 どこか、からかいを含んだような声に、反射的に「いいっ!」と答えてしまい、……ゆっくりと深呼吸をして、言葉を紡いだ。

「……私も────好き。たかくんと、一緒にいたい、です……」

 言っている内に恥ずかしくなって、声がだんだん小さくなってしまったけれど、高征にはしっかり聞こえたようだ。紫乃を抱き締める腕が、僅かに強くなったから。
 去年はまだ、恋じゃなかった。翌年の約束をしたのは、ただもう一度会いたかった、それだけの理由。
 でも、事あるごとに高征を思い出した。同じ受験生だったからか、相手も頑張っていると思えば頑張れた。いつしか支えられていることに気づき、絶対に胸を張って会いに行くと決めていた……。
 少しずつ、少しずつ。会わなくても降り積もった想い。きっと、高校で出会わなければまだ自覚すらしていなかっただろうけれど。
 おずおずと、高征の背中に両腕を回し、紫乃も彼を抱き締め返す。

 甘い香りに包まれて、藤棚の下でまた一つ、記憶おもいでが増えた。

【9】 紫乃へ ← 【10】 高征へ ← Wisteria Memory 目次

※目次の追記に小雨さまへのお礼とちょっとした裏話を追加しました。
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