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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 抱きしめて

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時々、夜中に泣いて起き出す双子。その原因は……。


 詩春は知らないけれど、時々、双子は夜中に目を覚ます事がある。そんな時は大抵、父や母の夢を見て、そして、現実にいない事に気付いて、政二にすり寄ってくるのだ。

「ぱぱ……ままぁ……」

 どこにいるかも解らない兄。空から双子を見ているであろう義姉。生きているはずの兄がせめて、連絡さえしてくれれば……政二だって「いつか帰ってくるから大丈夫」だと双子に言ってやれるのに。
 こんな時、政二はこの場にいない兄を少しだけ恨むのだ。

「ったく……何やってんだよ兄貴……」

 義姉に先立たれて、ショックだったのは解るけれど……幼子を置いて出て行くなんて。それが数日、1ヶ月ならまだいい。だが兄はもう一年近く音信不通だ。とりあえず捜索願は出しているものの、いい大人が、しかも自分で望んで出て行ったとなれば、警察が連れ戻してくれる可能性は皆無に近い。
 すり寄ってくる双子を抱きしめるように腕を回して、政二もそのまま眠った。



「ぎゃーっっ!!」
「わわっ、葵くんっ」

 葵の叫び声が突然聞こえてきて、政二はガバッと飛び起きた。何が起こったのかと寝乱れた髪も直さずに、リビングへと続く引き戸を開ける。

「どうした!?」
「あ、松永さん……。ごめんなさい、起こしちゃいましたね」
「いや、いいけど……どうした?」

 詩春の膝の上に座っている葵は涙目で、茜はそんな葵を不思議そうに見ていて。政二も一緒にしゃがみ込むと、詩春が苦笑した。

「えっと……葵くん、ゴムボールの上に座ろうとしてたらしくて……」
「……座れなくて後ろにバタン、とか?」
「はい」

 予想通りの答えに、政二は小さく吹き出した。慌てて口元を覆うけれど、目敏い葵に見つかって、じぃっ、と睨まれてしまった。

「こぶ、出来てる?」
「はい、少し……あの、氷持ってくるんで」
「あ、俺持ってくるよ」
「ありがとうございます」

 全く、子供の行動には驚かされる。そう苦笑しながら小さなナイロン袋に氷を入れて口を縛り、洗ったばかりのタオルで包んだ。

「ほら葵、少し冷たいけど我慢な?」

 タオルごと小さな頭に押し付けると、驚いたらしい葵の体がビクッと震えた。

「松永さん、代わります。その体制じゃ辛いでしょう?」
「うん、ありがと……。茜? どうした?」

 葵を抱き抱えている詩春の方が、確かに効率がいい。そう判断して彼女にタオルを押さえ付ける手を代わってもらい、そばに胡座をかいて座ると、茜がよじよじと膝の上に上ってきた。ぎゅ、と小さな手が政二のシャツを握り、俯いたまま小さな声が政二を呼ぶ。

「……せーたん……」
「ん?」
「ぱぱ……ままは……?」
「あー……」

 今の光景が、茜の記憶の中の何かにひっかかったらしい。朧げな記憶でも、愛されていたことは、子供でもちゃんと解っているのだ。

「ぱぱとまま……どこ?」

 問われても、今の政二には何も言えない。彼が無事かどうかさえ解らないのだから。

「ホント、何してんだかあの兄貴は……」
「……連絡とか、ないんですか……?」

 政二の呟きに、思いがけず詩春の声が問い掛けてきた。

「あっ、ごめんなさい私、差し出がましい事聞いて……っ」
「いや、いいよ。……連絡も何もないんだ、ずっと音信不通で。通帳とか残ってればまだ、金の動きで何とか解るだろうけど」

 何もなかった。もう、二度とこの家に戻るつもりがないのか……いや、兄はそんな事が出来る人間じゃない。茜と葵を置いて、ずっと行方を眩ませられるような人じゃなかったはずだ。
 しかし、もう一年が経つ。詩春がいてくれるからここまで何とかやってこられたけれど、同時に不安にもなる。
 このまま、兄は帰ってこないのではないかと────。

「帰ってくるよ、って言ってやりたいけどね。こればっかりは保証出来ないから……嘘でごまかして、茜と葵に余計辛い想いはさせたくない」
「そう、ですね……でも……」
「ん?」
「松永さんがいてくれて……茜ちゃんや葵くんは良かったと思います。それに、多分……お兄さんも」

 どこか淋しそうに微笑む詩春が、何だかこのまま消えてしまいそうだった。

「松永さんがいたからこそ……お兄さんは出て行けたんだと思います。松永さんに預けておけば安心だから」
「安心、って……」

 そう思われているであろう事を、喜んでいいのやら。

「少なくとも、松永さんに預けておけば……施設とかで淋しい想いをさせることがないでしょう?」

 それは、施設暮らしな詩春が自ら感じていることだろうか。

「こうやって、抱きしめてくれる人がそばにいるのは……いいことだと思います。だから……抱きしめてあげてください、たくさん」

 葵は詩春の腕の中でうとうとし始め、茜は政二を涙目で見上げたままだ。おそらく会話の中身までは解っていないだろう茜を、弱い力で抱きしめる。

「あのな、茜……。パパは今、いないけど……俺がいるから」
「せーたん?」
「俺も、中村さんも、ここにいるから。な?」

 そう言って小さな背中をぽんぽんと叩くと、小さな頭がコクリと頷く。

「ほーら、元気出せ! 今日はこれから出掛けるんだから。あ、もちろん中村さんも一緒にね」
「え、わ、私もですか?」
「うん。水族館の無料パスもらったんだ。しかも期限今日まで」
「水族館……」
「久し振り?」
「はい!」

 やっぱり彼女は、明るく笑っている方が可愛い。さっきのような淋しげな微笑みは、見ているこっちの胸が痛くなる。

「ふく、きるーっ!」
「あおくんもー!」

 パタパタ走り出す茜の後を、トテトテと葵が着いていく。その後ろ姿を眺めている詩春が小さく呟いた。

「茜ちゃんと葵くんには、私みたいな想い、してほしくないから……」
「中村さん……」

 思わず手が伸びた。髪を撫でるように、指先でそっと梳いて。

「松永さん……?」
「中村さんが、あいつらに注いでくれてる想いは、ちゃんと残るよ」
「え……」
「赤の他人でも、それでも。一緒に遊んでくれたこと、抱きしめてくれたことはきっと、覚えてる」

 両親がいないことは、確かに淋しいと思うけれど、その淋しさをほんの少しでも詩春は埋めてくれているから。

「中村さんを抱きしめてくれる人も、きっといるよ」

 母親ではなくとも、これから、詩春を抱きしめてあげられる人はきっといる。
 そう言いながら、詩春の隣に誰かがいる事を想像してみると……ちょっと、少し……いや、大分面白くなかったりする。
 そんな自分の気持ちに気付かない政二は、そのまま双子が来るまで詩春の髪を撫でていた。



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