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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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Wisteria Memory 【10】 藤の下で、またひとつ T:side

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一緒に物語を作って♪ バトン の回答を元に作った物語です。

『言うならここで、って決めてたんだ』




 そして、5月。約束の日────。

「ええっ!? そんなの有りなの!?」

 駅で待ち合わせ、お土産に果物ゼリーの詰め合わせを買い、翔真と珪子の家を訪ねた高征と紫乃が、今は同じ学校に通っている事を報告した瞬間の、珪子の高い声である。ちなみに翔真は目を真ん丸に見開いている。

「け、珪子さん、そんな大声で」
「すごいわ~……。ロマンチックに言うなら運命よね、もう」
「お前の口からロマンチックなんて言葉が出て来るとは……明日は雨か」
「何か言ったかしら、翔真?」

 じろり、と珪子に横目で見られた翔真は「何も言ってないぞ、うん」と誤魔化すように咳払いをした。相変わらずの二人に、高征と紫乃は忍び笑いを堪える事が出来ない。

「ところで二人とも、こんな所に来てて良かったのか?」
「え?」
「いや、高校生って言ったらそれこそ遊び盛りだろ。ゴールデンウィークなんて絶好の遊び日和だし」

 確かに、理人や結那、その他数名の友達に、ゴールデンウィークはみんなで遊ぼうと提案されていたが、高征と紫乃にとっては、ここへ来る事の方が大事だった。4月に再会してしまった時点で、約束はもう無効のようなものだったけれど、それでも、あの藤を見に行きたい。
 高征だけではなく、紫乃もそう言った。だからこそ、ここに来たのだ。

「思い出を大切にしてくれるのは嬉しいけど、自分達の思い出を作る事を忘れちゃダメよ」

 今の高征と紫乃には、たくさんの未来があるのだから、と、保育士らしく優しく諭す珪子に、高征は笑顔で答えた。

「大丈夫です、最終日にみんなで遊園地なんで」
「そういえば結那が異様に張り切ってたんだけど……何かあるの?」
「ゴールデンウィーク限定のイベントがどーのって言ってたような気がするけど……」

 詳しくは覚えていない。興味もなかったから聞いていなかった、が、正しいのだが。

「なら、いいんだ。せっかく一緒の学校になったんだし、たくさん思い出作っておいで」
「大丈夫よ、きっとこの二人、運命だから!」
「……その根拠はどこから……」

 珪子の言葉にがくりとうなだれた翔真、という図を、紫乃はクスクスと笑いながら見ている。

(運命、ね……)

 何もかも決められている人生のようで、高征は余りその言葉が好きではない。けれど、紫乃と会えた事だけは……確かに偶然程度で片付けられる事ではないのかも知れないと思ってしまう。
 高校で再会してから、高征は自分がどんどん紫乃に惹かれていくのが解った。一ヶ月足らずの間に、色んな表情を、多分一番傍で見てきた。
 これからも、傍で見ていたいと思うほどに。
 だから、伝えると決めた。今日────あの藤棚の下で。

「たかくん? どうかした?」
「ん? いや、何でも……って、顔が笑ったまま戻ってないぞ、しぃ」
「だって珪子さん、結那みたいなんだもの」
「確かにな」

 喉の奥で笑う二人とは裏腹に、今の言葉を聞いた珪子は、「え。私、高校生と精神年齢一緒?」と、ちょっとばかり落ち込んでいた。
 去年と同じようにお昼をご馳走になって、高征と紫乃はまた来ます、と告げて翔真達の家を後にした。来年は三人でお出迎えするからね、という珪子のサプライズ付きだったが。

「翔真さん、知らなかったんだねー。珪子さんが妊娠してる事」

 何でそんな大事なことを言わないんだよっ! と怒っていた翔真を思い出す。

「っていうか、珪子さん楽しんでなかったか? 翔真さんの反応……」

 女は怖い、と思わず呟くと、私も入ってるの? と紫乃の突っ込みが入った。まさか、と笑って、高征は先に藤棚の所へと辿り着く。
 ややあって、隣に立った紫乃が、甘い香りを放つ青紫色の花を見上げて、顔を綻ばせた。

「今年も、綺麗に咲いてるね」
「うん」

 老夫婦の遺影には、既に挨拶をしてきたけれど、やはりここが一番、記憶が色濃く残る。
 だから、ここで。

「……あのさ、しぃ」
「なぁに?」

 紫乃は藤を見上げたまま。それでもいいと、高征は一度息をゆっくりと吐いて、すっ、と息を吸い込んだ。

「俺……、しぃとこれからもずっと一緒にいたい」
「え……」
「……好きなんだ、しぃの事」

 伝わっただろうか。はっきり声には出したつもりだが、と、じっと紫乃を見つめていると、驚いたように高征を見つめてくる、紫乃の瞳。

「たかくん……」
「言うならここで、って決めてたんだ。……俺と、付き合ってください」

 交わしていたはずの視線が、紫乃の方から逸らされる。だんだんと俯いていく紫乃の姿を見て、このまま友達がいい、といわれることを覚悟した。

「……っ、い……っ」
「え、何……」

 小さな声が聞き取れなくて問い返すと、顔を真っ赤にした紫乃が高征を睨み付けた。

「同じ事考えてたのに、先に言っちゃうなんてずるい!」
「っ、それって……」

 あ。と紫乃が拙いことを言ったかのように、両手で口元を覆い隠す。
 それが、紫乃の答えなら。
 若干余裕が出て来た高征は、両腕を伸ばして、彼女の華奢な体をそっと抱き寄せる。

「た、たかくん……」
「もう一回言おうか?」
「いいっ! ……私も────好き。たかくんと、一緒にいたい、です……」

 小さくなっていく声の中、高征が聞きたかった言葉が確かに聞き取れて、紫乃を抱き締める腕に力を込めた。

 去年はまだ、恋じゃなかった。翌年の約束をしたのは、ただもう一度会いたかった、それだけの理由だった。
 でも、事あるごとに紫乃を思い出した。同じ受験生だったからか、相手も頑張っていると思えば頑張れた。いつしか支えられていることに気づき、絶対に胸を張って会いに行くと決めていた……。
 少しずつ、少しずつ。会わなくても降り積もった想い。きっと、高校で出会わなければまだ自覚すらしていなかっただろうけれど。

 おずおずと、抱き返してくる細い両腕が、紫乃が……今はとても愛しい。

 藤棚の下でまた一つ、記憶おもいでが増えた瞬間だった。


【9】 高征へ ← 【9】 紫乃へ ← Wisteria Memory 目次 → 【10】 紫乃

※目次の追記に小雨さまへのお礼とちょっとした裏話を追加しました。
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