Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Wisteria Memory 【9】 約束までもう少し S:side

TOP
Wisteria Memory 目次へ 一次創作Index

一緒に物語を作って♪ バトン の回答を元に作った物語です。

『たかくん、ちゃんと高校合格したかな……』


 まだ人も疎らな教室の中で、紫乃は友人の結那ゆなと一緒にベランダに出ていた。春風が心地よく、伸びた髪を遊ばせる。

「いい眺めー。ね、紫乃」
「眺めは良いけど、バスじゃなくて徒歩の人は大変だよね、あの坂……」

 高台にあるこの高校は、緩やかだが長い坂がある。ここからでは人の顔の判別がつかないが、バスを降りてくる人間は晴れやかな顔をしているのに対し、徒歩や自転車で坂を上がってきた人間は何だか体が丸まっているように見える。

「かっこいい人いないかなー」
「……結那、中学の入学式の時も同じ事してなかった?」

 結那曰く、格好いい人と付き合う人はまた別らしい。どれだけ外見が格好良くても、結那は誰とも付き合うことはなかった。

「彼氏とかじゃなくてもさ、格好いい人と友達になれたらラッキーじゃない?」

 そういうものなのだろうか? と紫乃はいつも考えてしまうけれど、自分の考えが古風な自覚はあるので、結那の話に合わせていた。

(彼氏、かぁ……)

 その単語は、紫乃に高征を思い出させる。『彼氏とか連れてくるのナシな?』と、悪戯顔で笑った彼を。

(たかくん、ちゃんと高校合格したかな……)

 今日は高校の入学式。高征がどこのどんな高校を受験したのかは解らないけれど、どこも同じような日にちで入学式が行われるはずだ。
 二人の約束の日まで、あと一ヶ月。高征が覚えていればの話ではあるけれど……。

 ゴールデンウィークが終わり、紫乃は志望校のレベルを上げた。今までは余裕圏内の高校を志望していたのだけれど、……挑戦したくなったのだ。高征と会った時に、安全圏を受験したことを恥ずかしく感じたくなくて。そして、彼に胸を張って会いたくて。
 夏休みも夏期講習に通い、試験ではどんどん順位を上げ、それでもギリギリまでこの高校を受験するのは賭だった。
 有り得ないと思いながらも、受験会場で高征を探したりもしたけれど、結局彼の姿は見つけられず。深呼吸をして、鞄の中に忍ばせた写真を入れた封筒を一度胸に抱えて、落ち着いて受験した結果、見事合格を果たしたというわけだ。

「あ。唯が着いたって」

 結那の携帯電話に、別のクラスになってしまった中学の時の友人からの連絡が入ったようだ。

「会いに行く?」
「そだね、まだ入学式まで時間あるし」

 ベランダから移動して、ドアを開けながら「あ、そうだ結那」と結那を振り向いた時。

「ちょ、前っ」
「え、わわっ」

 結那に言われて慌てて前を向いたが既に遅く、目の前に突如現れた人に鼻からぶつかってしまった。
 あんまり高い鼻じゃないのに、と手の平で覆い隠しながら、とりあえず謝ろうと顔を上げ。

「ごめんなさ────、え?」
「ごめん、大丈────、!?」

 互いの顔を見た途端、時が、止まったような気がした。
 一年前よりも高い背。髪は少し短くなっていたけれど、驚いた顔はあの日紫乃が背後から声をかけ、振り向いた時と同じ顔。

「紫乃? どうしたの?」
「あっ、高征このやろー! 人を置いてくんじゃねぇ!」

 結那の声が聞こえたけれど、それよりも、彼を呼んだであろう単語の方が気になって。そして同時に、口を開いた。

「……しぃ!?」
「たかくん!?」

 何で!? と声をあげた高征と紫乃を、これから共に過ごすであろうクラスメイトが不思議そうに見ていた。
 話したい事は山のようにあるはずなのに、言葉が出てこない。見つめ合ったまま十数秒が経って、ゴツッと鈍い音が聞こえ、高征が振り返る。ちなみに紫乃からは高征の体が壁になっていて、その背後で何が起きているかは解らない。

「いって……何すんだ理人!」
「可愛い子に見とれてんのは良いけど、そこにいられちゃ誰も入れねーっての!」
「あ」

 そういえば、と高征が体を退けようとした瞬間、彼の体が紫乃に向かって倒れてきた。

「うわっ」
「きゃあっ!?」

 咄嗟に高征の手に抱き締められ、転倒を免れたと紫乃が知るのは、彼が紫乃を呼んでからだった。

「理人、お前なぁ……っ! しぃ、大丈夫か?」
「う、うん、平気……」
「……っと、悪いっ!」

 すぐに高征の腕は離れ、紫乃は無意識に両手で顔を隠した。絶対に顔が赤くなっている。

「……何やってんのお前」
「……誰に言われても、お前にだけは言われたくないっ!」

 目の前で、おそらく友達であろう人間の頭に拳骨を落とす高征の顔も少しだけ赤くなっているのに気付いた紫乃は、自分だけじゃないことにホッとしたのだった。
 入学式を無事に終え、あとは駅前で少し遊んで帰ろうかと思っていた紫乃の思惑は、結那のにっこり笑顔と「逃がさない」とばかりに発するオーラですべて崩れた。
 今まで紫乃に全く男の影がなかったのに、何故高征のことを知っているのかを聞きたいのだろう。仕方ない、と苦笑していたら、彼女はあっという間に高征の所へ行って、彼とその友人であろう男子生徒を捕まえ、学校近くの喫茶店へと連れ出すことに成功したのだった。

「えー、じゃあ本当にそれだけなのー? つまんない」

 子供の頃一緒に遊んでいて、去年再会して、そしてまた今年同じ場所で会おうと約束しただけだ、と、結構色んな箇所を端折った説明に、結那は不満そうだった。

「一体何を期待してたのよ……」

 つまらなそうに唇を尖らせる結那とは正反対に、高征にくってかかっている男の子────理人────の声は大きい。

「ずるいぞ、高征! こんな可愛い子俺らに黙っとくとは!」
「言う必要ないだろが!」

 ここに来るまでの途中で、何故ここにいるのかの話になり、現住所を答えたところ、高征の家は紫乃の家から電車で2駅ほどしか離れていないことが判明した。通っていた学区が違うだけ、という事実に、二人で苦笑いだ。
 それを思い出して、「あれ?」と紫乃は首を傾げた。

「でも入試の時、たかくんいなかったよね?」
「ああ、俺、推薦入試だから」
「うそ、そんな頭良かったの!?」
「待て、どーゆー意味だそれは」
「あ、あはは~」
「笑ってごまかすな!」

 ごめんなさーい、と笑えば、高征も笑ってくれる。有り得ないと思っていた再会が嬉しくて、紫乃はコトン、とアイスコーヒーをテーブルに置いた。

「たかくん」
「ん?」
「高校入学、おめでとう!」

 ストローを唇に挟んだままの高征に、まだ言っていなかった言葉を告げる。と、彼は何故かふっと視線を外し、ぼそっと呟いた。

「……不意打ちだろ、それ……」
「え、なに?」
「いや、何でもない。しぃも、おめでとう。これから、よろしくな?」
「こちらこそ」

 にっこりと笑い合う二人に、取り残されている結那がぽつりと呟く。

「……何かすっごい入りづらいんだけど、この雰囲気」
「え? 何で?」

 紫乃の不思議そうな声に続いて、理人が本気で言ってるのか? と訝しげな顔をして問いかけてくる。

「何でって……お前らそれ、無意識?」
「何が?」

 意味が解らなくて高征が問い返すと、何故か理人と結那、二人揃って長い溜息をつかれた。

「……ダメだこりゃ」

 その言葉の答えが解るのは、お互いを意識し始めた後だった。


【8】 紫乃へ ← 【9】 高征へ ← Wisteria Memory 目次 → 【10】 高征へ → 【10】 紫乃
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。