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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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Wisteria Memory 【9】 約束までもう少し T:side

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一緒に物語を作って♪ バトン の回答を元に作った物語です。

『しぃも、ちゃんと高校生になれたかな……』



「高征ー!」

 校門をくぐった途端、顔見知りどころか昨日も会っていた(一応)親友の理人りひとに大声で名を呼ばれ、晴れの日だというのに高征はがくりと肩を落とした。

「……入学早々、人を大声で呼ぶな馬鹿」
「いーじゃん、晴れて今日から高校生! なんだし」

 確か昨日も似たような事言ってたよな、と突っ込む気にもなれずに、高征はとりあえず無視する事に決めた。

「……先に行く」

 付き合ってられるか、と心中で呟く。クラス分けは事前に通知されてきているし、教室のある場所も解っている。置いてきた理人はちょっとだけ心配だったけれど、高征の中学からは、結構この高校に入学した人間が多いから、誰かしらは連れてきてくれるだろう。
 そう、今日は高校の入学式。めまぐるしく過ぎたあのゴールデンウィークが終わった後、高征は本格的に受験戦争に突入した。ついでに生徒会役員なんていう肩書きも持っていたために、一学期と二学期の半ばまでは相当慌ただしかった。

(まぁ、そのおかげで推薦取れて、結構楽だったんだけどさ)

 クラスメイトの誰よりも先に、高征は推薦入試で合格を果たした。なので、高征の受験勉強は一般入試を目指すクラスメイト達よりも早く終わりを迎えた。
 が、それが良い事か悪い事かと聞かれると……微妙なものがある。
 受験が終わったのを良い事に、クラスメイトは次から次へと高征に教えを請うてくるし、あげくに教師にまで「頼んだぞ!」と言われ。生徒会の後輩達は、ことあるごとに相談と称して高征を頼りにやってきた。

(……あいつら、ちゃんと新歓出来んだろうなぁ……?)

 卒業した中学の、新入生歓迎会の心配までしてしまう自分に、ちょっと呆れる。今は自分が新入生だというのに。
 昇降口で靴を履き替え、階段を上がり、3階のA組を目指す。アルファベットのHのような形をしているこの校舎は、左側が職員室や実験室などがある教育棟、右側が生徒達が過ごす教室棟となっている。その二つを繋げる渡り廊下の一階は、中庭だ。
 そこに一つの特徴のある木を見つけて、高征は紫乃の事を思い出した。

(しぃも、ちゃんと高校生になれたかな……)

 かつて埜上夫妻と一緒に撮った写真と、紫乃と子供達と一緒に映った写真。その二枚は、写真立てに入れて、自宅の机の上にある。

(あと一ヶ月、か……)

 あと一ヶ月もすれば会う事が出来る。紫乃が高征との約束を、覚えていてくれれば、という前提があるけれど。
 そんなことを考えながらA組につき、ドアを開けようと手をかけた。ら、反対側からがらりと開けられて、高征の手は行き場を無くした。

「ちょ、前っ」
「え、わわっ」

 とん、と軽くぶつかってきた華奢な体。高征にとっては軽い衝撃でも、彼女にとってはそうではなかったらしい。鼻の頭をぶつけたのか、手の平で覆い隠しながら高征を見上げて来る。

「ごめんなさ────、え?」
「ごめん、大丈────、!?」

 互いの顔を見た途端、時が、止まったような気がした。
 一年前より長い髪、少しだけ大人びたように見えるのは制服のせいか、それとも薄く化粧でもしているのか。

「紫乃? どうしたの?」
「あっ、高征このやろー! 人を置いてくんじゃねぇ!」

 理人の文句はすっぱりと聞き流し、目の前にいる彼女の友達(だろう)の言葉を反芻する。
 紫乃────。そう、聞こえた。

「……しぃ!?」
「たかくん!?」

 何で!? と声をあげた高征と紫乃を、これから共に過ごすであろうクラスメイトが不思議そうに見ていた。
 話したい事は山のようにあるはずなのに、言葉が出てこない。見つめ合ったまま十数秒が経って、ゴツッと高征の頭に鈍い衝撃が走った。

「いって……何すんだ理人!」
「可愛い子に見とれてんのは良いけど、そこにいられちゃ誰も入れねーっての!」
「あ」

 そういえば、とドアを塞いだままだった事に気付いた高征の背を、どんっ、と理人が何の前触れもなく押した。

「うわっ」
「きゃあっ!?」

 思わず紫乃を抱き締めるような形になりながらも、反射的に踏ん張った足は、数歩踏み出しただけで倒れる事を免れた。

「理人、お前なぁ……っ! しぃ、大丈夫か?」
「う、うん、平気……」
「……っと、悪いっ!」

 慌てて紫乃の体を抱き締めていた腕を解けば、顔を真っ赤にしている紫乃。つられて高征まで顔が熱くなる。

「……何やってんのお前」
「……誰に言われても、お前にだけは言われたくないっ!」

 先程の仕返しに、理人の頭に拳骨を落とすと、「いってーっ!!」と理人の大声が教室に響き渡った。
 入学式も無事に終わり、明日からの予定の説明を受けて、帰宅。それが本来の高征の予定だったが、何故か理人と、紫乃の友達だという女子に捕まり、学校近くの喫茶店へと連れて行かれた上に詰め寄られ、二人の関係を話す羽目になっていた。

「えー、じゃあ本当にそれだけなのー? つまんない」

 全部を話してしまうのは何となく嫌で、端折りに端折って話した。
 子供の頃一緒に遊んでいて、去年再会して、そしてまた今年同じ場所で会おうと約束しただけだ、と。
 紫乃の友達────結那ゆなと言ったか────はつまらなそうに唇をとがらせ、紫乃は「一体何を期待してたのよ……」と呆れ顔だ。

「ずるいぞ、高征! こんな可愛い子俺らに黙っとくとは!」
「言う必要ないだろが!」

 というか、本来なら再会は来月のはずだったのだ。が、蓋を開けて見れば何と高征と紫乃の家は2駅しか離れていないことが判明した。つまり、通っていた学区が違うだけで、知ってさえいればいつでも会える距離にいたわけだ。

「でも入試の時、たかくんいなかったよね?」
「ああ、俺、推薦入試だから」
「うそ、そんな頭良かったの!?」
「待て、どーゆー意味だそれは」
「あ、あはは~」
「笑ってごまかすな!」

 紫乃の中の自分は一体どういう人間なのだと、ちょっとだけ落ち込んだけれど、目の前で紫乃が笑っているのを見ていると、どうでも良いような気になってきた。

「たかくん」
「ん?」

 呼びかけられて、アイスコーヒーを持ったまま視線を移す。

「高校入学、おめでとう!」
「……不意打ちだろ、それ……」

 突然、何の前触れもなく告げられた言葉と、花が咲くような笑顔。不意打ちのそれは、高征にはとても可愛く映った。

「え、なに?」
「いや、何でもない。しぃも、おめでとう。これから、よろしくな?」
「こちらこそ」

 にっこりと笑い合う二人に、取り残されている結那がぽつりと呟く。

「……何かすっごい入りづらいんだけど、この雰囲気」
「え? 何で?」

 紫乃の不思議そうな声に続いて、理人が本気で言ってるのか? と訝しげな顔をして問いかけてくる。

「何でって……お前らそれ、無意識?」
「何が?」

 意味が解らなくて高征が問い返すと、何故か理人と結那、二人揃って長い溜息をつかれた。

「……ダメだこりゃ」

 その言葉の答えが解るのは、お互いを意識し始めた後だった。


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