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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 暗闇の中で

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 3周年記念SS第4弾・『LOVE SO LIFE 松永×詩春』です。アンケートでは堂々1位でした。他にLOVE SO LIFEサイト様がないせいと、原作が人気なんだと思いますが……。

 かなり久しぶりに書いたので、イメージと違う可能性があります。

 こちらもフリー配布と致しますので、お気に召した方はどうぞお持ち帰り下さい。
 ですが、著作権は放棄しておりませんので、転載される場合にはこのブログのSSである事を明記して頂ければと思います。特に報告の必要はありません。

 では、続きからどうぞ。


「雨、すごいですね」
「通り雨ならすぐ止むと思うんだけど」

 バチバチと窓を叩く雨音。ゴォッと吹き荒れる風。まるで台風が来ているかのような天気。
 最近の天気は不安定過ぎる。ゲリラ豪雨なんてしょっちゅうだし、先日はどこかで一時間に100ミリという雨が降った。道路は冠水し、車も半分近く水の中。そんな光景を今日もニュースで見たばかりだ。

「あいつら、眠っててくれて良かったかも」
「葵くん、大きい音苦手ですもんね」

 そう、双子はとっくに夢の中だ。今日は保育園で散々遊び回ったらしく、夕飯を食べている時から既に眠たげだった。幼い二人は強い雨音や雷の音を怖がるから、正直言って、熟睡していてくれるならその方がいい。

「ごめん、こんな日まで双子の面倒見てもらっちゃって」
「私が二人を迎えに行った時は全然降ってなかったので、気にしないで下さい。松永さんこそ、寒くないですか?」

 この豪雨の中、政二はタクシーで帰ってきたとは言え、どうしてもびしょ濡れになるのは避けられなかった。帰って早々、双子を先に入らせたお風呂に入り、その後は詩春が入れた温かなお茶を飲みながら、宿題に悩んでいた詩春に、勉強を教えてくれている。

「寒くはないよ、大丈夫。……このまま雨が止まなかったら、車で家まで送っていくよ」
「え。だ、ダメですよせっかく温まったのに!」

 冷えた体を温めたばかりなのに、また雨に打たれては元も子もない。そう考えて詩春は必死に首を横に降った。

「心配してくれるのは有り難いけど、こんな雨の中、女の子一人帰せるわけないでしょう」

 天気の荒れていない、静かな夜なら話は別だが、今日は徒歩で松永家に来ている詩春は、それこそ施設に帰るまでにずぶ濡れだ。風邪を引かれたら困るのは政二だし、……会えない可能性を作るくらいなら、送って行った方がいい。

「で、でも、いざとなったらタクシーという手も……」

 一応、施設の方に帰りが遅くなるかもしれないと連絡した時に、雨が止めばそれで良し、止まなければタクシーで帰って来なさいと言われている。

「ダメ。今回ばかりは拒否権無し。ね?」
「はい……。ありがとうございます」

 とは言えまだまだ雨が止む気配はないし、もう少し彼の傍にいられる事が、詩春には嬉しい。

「じゃあ、勉強の続き、しようか」
「あ、はい!」

 相変わらず距離が近くてドキドキしているけれど、今はこっちが優先! と、詩春は一生懸命集中しようと努力していた。

「そしたらこっちの数式を当て嵌めて……」

 窓の外が強く一瞬光る。思わず身を竦ませた詩春に、優しく声がかかる。

「大丈夫?」
「あ、はい、今のはちょっと怖かっ……!」

 答えかけた詩春を遮るかのように、ドンッ! と雷が落ちる音。そして────。

「あ」
「て、停電?」

 一瞬のうちに真っ暗闇に包まれ、詩春は慌てて立ち上がる。

「か、懐中電灯どこでしたっけ」
「ちょ、待った!」

 多分この辺、と政二が伸ばした手は見事に詩春の腕を捉えた。が、真っ暗闇の中、突然腕を捕まれた詩春は驚いて体のバランスを崩す。

「きゃ……っ」
「危なっ」

 ぐいっ、と腕ごと体を引かれ、衝撃を覚悟した詩春だったが、体のどこにも痛いところはなかった。

「中村さん、大丈夫……?」

 頭上から聞こえた声。とても近くて、詩春の体は硬直した。

「中村さん?」
「ま、松永さんっ?」

 暗闇で何も見えない。ただ解るのは、背中が温かいことだけ。本来なら床に倒れていたはずの体が、温かい何かに包まれている。

「……ごめん、目が慣れるまでちょっと、このままで」

 下手に動くと、怪我しかねないからと告げたものの、政二は内心では動揺していた。目はすぐに暗闇に慣れるだろうけれど、……思わず抱きしめた華奢な体を、離したくないと思ってしまったから。
 雷の光は、暗闇の中だと殊更に明るい。閉じた瞼の裏にまで焼け付くような光は、詩春を怖がらせるだろう。

(せめてもう少し、雷が遠ざかるまで……)

 言い訳だとは気づいていたが、……温かな温もりを、手放したくなかった。

 一方詩春は、今の自分の状況を必死に把握しようとしていた。
 多分、政二に抱き締められている。わがままを言って泣いたあの日と同じ感覚だと、解る。

(……こ、鼓動が聞こえませんように……!)

 速くなる心臓の音が、耳につく。

(……違う……?)

 確かに自分の鼓動も耳につくのだけれど、それとは違う、もう一つの微妙に早いリズム……。

(松永さんの、心臓の音……?)

 意識した瞬間、かあっ、と頬が熱くなった。あの日は抱き締められていても泣いていたから、平常心とは掛け離れていたけれど……。
 鼓動はどんどん速くなる。それなのに、何故かこの温もりに安心感を覚える。

(……これが、好きって事なのかな……)

 普段なら双子もいることで、抑えられている気持ちが、溢れ出しそうになる。
 気持ちを塞き止めるように、詩春はぎゅっと両目を閉じた。

 雷が遠ざかり、未だ電気のつかぬままの部屋に漂う静寂を破ったのは、政二の携帯電話だった。

「……っと、ごめん中村さん」
「い、いえ……」

 呆気なく離れた腕と温もり。携帯電話の光がわずかに室内を照らし、話し始める政二の姿がちゃんと見える。

(……好きです……)

 心に、すとんと浮かんだ言葉。告げるつもりはないけれど、優しくされる度に膨らむ想いを、詩春は胸の中にきつくしまい込んだ。


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