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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ 我がままに

暁のヨナ 目次へ 二次創作Index

 3周年記念SS第2弾・『暁のヨナ ハク×ヨナ』です。アンケートではLOVE SO LIFEの次で2位でした。

 ハクヨナだけでも良かったんですが、お一人の方が「無自覚にいちゃついて、ジェハにからかわれるのが見たい」と仰っていたので、ジェハだけちょこっと登場。お望みのものとは違う可能性もありますが(汗)
 他にも、ハクヨナ+愉快な腹へり達+ユンというリクエストがありましたが、そちらは思いつけば書きたいと思います~。

 こちらはフリー配布と致しますので、お気に召した方はどうぞお持ち帰り下さい。
 ですが、著作権は放棄しておりませんので、転載される場合にはこのブログのSSである事を明記して頂ければと思います。特に報告の必要はありません。

 では、続きからどうぞ。


 眠らなければいけないのに、どうしても目が冴えてしまって眠れない。少し外の空気を吸おうと、ヨナは隣で眠るユンを起こさぬように天幕を抜け出した。

「どうしたのヨナちゃん。眠れない?」

 見張りを兼ねて、火の番をしていたジェハに訊かれて頷く。

「……少し、散歩して来てもいいかしら」
「この辺は危ない動物もいないって、シンア君のお墨付きだから大丈夫だと思うけど、あまり遠くには行かないこと。いいかい?」

 子供に言い聞かせる親のような口調のジェハに、くすぐったいような感覚を思い出して苦笑しながら頷き、歩き出す。

(綺麗……)

 見上げる夜空には、丸い月とたくさんの星。星の明かりは月の明かりに負けてしまっているけれど、一生懸命瞬いているように見える。
 やがてぽっかりとひらけた場所に、背の高い人影を見つけた。

(ハク……?)

 草原に一人佇み、夜空を見上げているハクの後ろ姿に、ゆっくりと近づいていく。

「……武器を持って戦う今の姫さんを見たら、卒倒してましたか? ……イル陛下」

 武器を嫌った父の命令に背き、ヨナに弓を、剣を教えてくれているハク。彼の本来の主はヨナではない。後悔しているの? とヨナが口に出す前に、ハクの言葉が続く。

「俺は。俺は、誇りに思います」

(え……?)

 思いもしなかった呟きに、足音を殺して進んでいたヨナの歩みが止まった。

「俺が、姫の専属護衛である事に。……そして、ヨナ姫が俺の主である事に」

 とても力強い、言葉。それなのに、何故……どうして僅かな諦めと、悲しみが混ざっているように聞こえるのだろう。

(ねぇ、どうして……?)

 ハクの背中が、何だか遠く感じる。そう思った時には、ヨナは駆け出していた。
 足音に気づいたのか、ハクが振り返る。「姫さん?」と驚いたような顔も声も気にせずに、ヨナはただ、体当たりをするように抱きついた。

「……どうしました?」

 大刀を持たぬ手が、ヨナの背中をあやすように叩く。ジェハに子供扱いされるのは何とも思わなかったのに、今までハクにそうされた時だって安心感の方が大きかったのに、今は。抱きしめ返してもらえない事が、淋しい。

「……行かないで」

 違う、こんな言葉が言いたいんじゃない。だけど、これ以外に思い付かない。

「どこにも行きませんよ?」
「ううん。ハクは行っちゃう……。どんどん遠くなっていく」

 体はここにいてくれる。でも心は────今でも、遠い。主従関係が、自己を確立する事がそうさせている事に、ヨナは気づいていない。
 想いを言葉に出来ない代わりに、ぎゅ、と抱きしめる腕を強くする。離れたくない、そんな思いを込めて。
 鈍い音が聞こえた。ハクの持つ大刀が倒れた音。その音をヨナが認識した時には、ハクの両腕がヨナを抱きしめてくれていた。痛い程に……存在を、確かめさせるかのように。

「……姫さん」
「なに……え?」

 ことん、とヨナの肩にハクの額が押し付けられる。

「……俺が前に言ったこと、覚えてますか」

(前に言ったこと……?)

 言われた事はたくさんありすぎて、どの事だか解らない。答えられずにいると、ヨナを抱きしめていた腕が離れ、代わりに固い肉刺だらけの手が頬に触れる。

「ハク……?」
「……あんたにとって、俺は何だ?」

(私にとっての、ハク……)

 従者。仲間。ヨナを全力で守ってくれる、ただ一人。だけど、それが正解なのか解らない。
 ────違う、きっと全部が正しくて、そして全部が間違っている。

「……答えられないなら、抱きついたりしないでくださいね」

 切なげに笑って告げるハクは、大刀を拾い、「行きますか」とヨナが来た道を戻る。
 また、背中を向けられて。見ていたく、なくて。

「ハク……っ!」

 背中から細腕を回して抱き締める。苛立つように「だから……っ」と呟くハクの声と共に振り向こうとする気配を感じて、ヨナは鋭く声を発した。

「振り向かないで!」
「姫さん……?」
「……ごめんなさい……」
「何がです」
「どんな言葉が正解なのか、……解らないの」

 今の自分の気持ちを表す言葉が見つからない。

「わがままなのは解ってる。だけど────ねぇ、ハク」
「はい?」
「ハクがいなくなるのは嫌……。それだけでは、理由にならない?」

 長く、長く、沈黙が続く。何故だか泣きそうになった時、ハクを抱きしめている両手が彼の手に覆われて、指先が、絡まる。

「……本当に、わがままですね」
「ごめ────きゃ!?」

 ぐっ、と腕を引かれ、あっと言う間にハクの唇が額に触れた。

「俺もわがまま、させてもらいました」

 何が起こったのか解らない。でも触れたのはハクの唇とヨナの額。それを認識した途端、顔が熱くなるのが解った。

「そ、その手の冗談はしないって……!」
「冗談じゃないんで」
「え……?」

 妙に真剣な声音に、ヨナが身動き出来ずにいると、ハクはいたずら顔で笑った。

「……っていったら、どーします?」
「やっぱり冗談なんじゃないっ!」
「っと」

 ハクを殴ろうとしたヨナの両手は、呆気なく捕えられた。

(あ、あれ……?)

 心音がうるさい。抱きしめられているわけではないのに、ただ手が触れているだけなのに、今は違う。

「ハク、あの……っ」

 言葉を発した瞬間、コツン、と頭に軽い衝撃が来た。導かれるように顔を上げれば、月明かりの中で穏やかに微笑うハク。手が伸びて、ヨナの髪をくしゃりと撫でる。
 その距離は、とても近くて。その笑顔が、今は嬉しい。

「……ハク、笑ってる」
「はい?」
「ハクが笑ってると、私も嬉しい」

 自然に頬が緩んで、笑顔になる。と、途端にハクが視線を逸らした。

「……凶悪……」
「え、何?」
「いえ、別に。そろそろ戻りましょう」
「ハク?」

 手を繋がれたままだから、足は自然に歩きだす。ヨナの歩調に合わせて歩いてくれるハクの横顔を盗み見る。
 まだ、一緒に歩いてくれる。いつかハクが離れる日が来てしまうかもしれないけれど、今はまだ、傍にいてくれる。それを感じることが出来たから、ヨナは少しだけホッとしていた。

「……ところで姫さん」
「なに?」
「髪、すっげボサボサなんですけど」
「って、さっきハクが頭撫でたからでしょう!?」
「そーでしたっけ?」

 片手は繋いだまま、飄々としたハクに言葉を連ねるヨナ。そのまま天幕まで戻った時、見張りのジェハに一言、「人目を忍んで逢い引きかい?」とからかわれ、ハクの大刀が宙を飛んだ。


暁のヨナ 目次
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