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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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雨の弓 【夏祭りの夜】

雨の弓 目次へ 一次創作Index

 3周年記念SS第1弾・『雨の弓 レイン×ユミ』です。アンケートでは桜涙の次で2位でした。
 突発的に作った物語なのに、好きだと言って下さる方がいるのがとても嬉しいです。

 毎年の事ながら、こちらはフリー配布と致しますので、お気に召した方はどうぞお持ち帰り下さい。
 ですが、著作権は放棄しておりませんので、転載される場合にはこのブログのSSである事を明記して頂ければと思います。特に報告の必要はありません。

 では、続きからどうぞ。

「ユミ、いる?」
「あ、はい!」

 訓練を終えて、普段着に着替えようとしたユミの部屋の扉がノックされ、聞こえたのはコーリの声。扉を開ければそこにはショウカも一緒だった。

「どうしたんですか?」
「良かった、いてくれて。はい、これに着替えて」
「え?」

 ショウカに渡されたのは、白地に紫の花が咲いている浴衣。「早く!」と急かされるままに服を脱ぎ、浴衣を羽織る。すかさずショウカの手が伸びてきて、着付けが始まった。

「あ、あの、この浴衣……?」
「レインからの贈り物よ。ついでに伝言。『学校近くの神社で待ってる』ですって」

 学校近くの、神社? この世界に学校はもちろんないから、雲の下にある学校……多分、雫とひかりが通った学校の事だろう。何かあっただろうかと小首を傾げて、この浴衣の意味を考える。

(夏祭り……?)

 場所が神社で、浴衣を着るとなると夏祭り以外に思い付かない。

「はい、出来た」
「じゃ、次は髪ね」

 あれよあれよという間に鏡台の前に座らせられて、コーリの指先がユミの髪をまとめていく。

「これで良し、っと」

 はい、行ってらっしゃい、と用意されていた下駄を履き、巾着袋を渡され、背中を押された。
 カラン、コロン、と下駄の音を響かせながら、雲の下の世界へ行くための噴水に辿りつき、ユミはパシャン、と水に身を投じる。
 まだ、空から見る地上の景色には慣れないけれど、それでも空中散歩を楽しむぐらいの余裕は持てるようになった。

 視線を地上へ向けて、かつて自分が暮らしていた町を思い浮かべる。雫と出逢えた学校、その近くの神社……。引き寄せられるようにユミの体は落下し、やがてたくさんの人込みの中に着地した。
 大きな鳥居、参道は提灯に照らされていて、怖いくらいに明るい。

(レイン、どこだろ?)

 死神となったユミとレインの姿は、只人には映らない。視線を巡らせ、ただ一人の愛しい人を探す。通り過ぎた視界の中に、ふっと黒髪を見つけて……ユミは固まった。

(え……?)

 自分で見たものが、信じられなかった。レインが、一人の少女を守るように抱きしめていたから。

(誰……?)

 少女は生者だ。レインの姿が見えるわけもないのに、彼は愛おしげな瞳で少女を見ている。胸が苦しくなって、それでも視線を外すことは出来なくてジッと見ていると、レインがユミに気付いた。

「ユミ! こっちだ」

 破顔とも言える笑顔に、呼ばれるままに足を進め、ユミは少女に視線を移す。少女はレインやユミに気付くことなく、しきりに携帯電話を気にしている。

「レイン……この子は……?」
「散々ナンパされて困ってたみたいだから、水の障壁作って守ってた」

 携帯電話を気にしているのは、待ち合わせをしているからなのだろう。少女が待ち人と会わない限り、誰も少女に触れることは出来ないようにしていたらしい。

(って、聞きたいのはそうじゃなくて……!)

 レインの手が、少女の頭を撫でる。

「……俺の、親戚」
「え?」
「ここに着いた時、何か惹かれて……ちょっと力使って血を遡ったら、俺の姉貴の曾孫だった」
「な、なぁんだ……」

 それならばあまりにも愛おしげな瞳の理由にも説明がつく。一瞬でも浮気を疑ってしまった自分が情けない。

「ん? どした?」
「何でもない! ……そっか、繋がってるんだね」

 長い長い年月の中、血が受け継がれていく。死神という特殊な存在でなければ、出会えなかったであろう子孫。

「ごめん、しずく! 待たせた!」

 目の前に現れた少年の姿に、少女の顔がパッと輝く。二人手を繋いで鳥居をくぐる姿を見送り、ユミは呟いた。

「……しずく、だって」

 偶然かもしれない。けれどレインは、同じ名前である事に顔を緩ませた。

「俺らも行くか」
「うん。あ、そうだ。レイン、浴衣ありがとう」
「見た時に、ユミに似合うと思ったんだ。俺の見立ては正しかった、うん」

 言外に似合ってると言われて、ユミの頬が赤らむ。
 手を繋いで鳥居をくぐり、参道に並ぶ露店を眺めていく。

「……うまそー」
「食べられないのが残念だね」

 たこ焼、焼きそば、お好み焼きにかき氷。おいしそうなものはたくさんあるのに、実際に口に出来ないのは少し淋しい。

「他の人には俺達の姿見えないからな~。下手すりゃ盗み食いになるし」
「上に戻ったら、みんなでパーティーしよ?」
「だな。……あ、そろそろ始まる。ユミ、飛ぶぞ」
「え?」

 腕を引かれ、そのまま空中に浮かび上がる。

「どこ行くの?」
「特等席!」

 言葉と同時に、夜空に突然光の花が咲いた。

「わぁ……っ!」

 光の筋が伸びて、色とりどりの大輪の花に変わる。地上からではなく、少し高い空から見られるなんて────。

「俺達だから出来ること、だろ?」
「うん!」

 細い光の筋が、雨のように降り注ぎ、ユミはそういえば、と一つの疑問を口にした。

「ねぇ、雫は何で『レイン』って名前になったの?」
「は? そりゃ水を操るから」
「水ならアクアさんもそうでしょう? 何で『雨』だったのかなって」

 アクアも、友達になったカナミもそうだ。他にも色々名前はあっただろうに、どうして『雨』だったのか。

「……俺が聞いた最後のお前の願いが、『虹が見たい』だったからだよ」

 レインが照れたように、ぶっきらぼうに告げた。

『虹が見たいな。雫と一緒に』

 虹を形作るのは、水と光。その片方を担う名前と能力を選んだのはレイン自身。
 叶えられなかった約束の代わりに、虹を作り出したかった。ひかりの手術が成功して、目に光を取り戻したいつかの未来で、彼女が見られるかもしれないと思ったから。

「レイン……」
「な、何で泣くんだよ!?」

 解らない。でも、レインの言葉を聞いて、胸がいっぱいになった。想いが、雫となって零れ落ちる。
 頬に大きな手が触れて、顔をあげると同時に下りてきた唇。宥めるような優しいキスで終わって欲しくなくて、ユミはレインの浴衣をきゅっと握りしめた。


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