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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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Wisteria Memory 【5】 偶然か奇跡か T:side

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一緒に物語を作って♪ バトン の回答を元に作った物語です。

『……偶然なのかな、奇跡なのかな』




「あっ、きのうのおにーちゃんだ」
「おー、おはよう。元気だなぁ」

 その日、公園に先に辿り着いたのは高征の方だった。10時を過ぎると昨日と同じ子供達が続々と公園に集まってくる。紗由も連れてくれば良かったかな、とは思うものの、当の紗由はここに来てまで持ってきた宿題で手一杯だ。

「きのうのおねーちゃんはー?」
「もう少ししたら来ると思うよ」
「じゃあ、それまであそぼー!」

 と、強い力で引かれて、砂場でトンネル作りを手伝わされる羽目になった。

(しっかし……人見知りしないよな、この子達)

 物怖じしない、と言えばいいのか……ここが元は田舎町だからなのか、それともこの町自体がそういう雰囲気なのか。何の衒いもなく挨拶をするだけでも危ないと言われている、高征が住む場所とは雲泥の差だ。

「おにーちゃん、ほってほって!」
「あっ、そんなにほっちゃだめ!」

 子供達の小さな手と、高征の手では取れる砂の量も違う。砂遊びなんて何年ぶりだ、と考えていると、背後でクスクスと笑う声がした。

「しぃ!?」
「おはよ」
「おはよ、って何笑ってんだよ」
「だってたかくん、夢中になってたから」

 私が来たことにも気付いてなかったでしょ? と言われて、高征は言葉に詰まった。

「おねーちゃんもやろー?」
「おねーちゃんはスカートだからちょっと無理かな。ごめんね」
「……それ、ずるくないか?」
「だってスカートしか持ってこなかったんだもの!」

 まさか砂遊びに誘われるなんて思わなかったし、と言い訳する紫乃が何だか必死に見えて、高征は喉の奥で笑う。
 やがてトンネルが完成し、高征はようやく子供達から解放された。紫乃が空けておいてくれたベンチのスペースに腰を下ろし、どう切り出そうか少し悩む。

「……言って、良いよ?」
「しぃ?」
「覚悟、してきたから」

 なかなか切り出せない事が、逆に答えになってしまったようだ。高征は、すっ、と息を吸って、言葉を発した。

「やっぱり、……亡くなってたよ」
「……そう……」

 紫乃の顔が俯いていく。覚悟はしてきたと言っていたけれど、自分で想像するのと、実際に聞かされるのとではまた違うだろう。

「うちのじぃちゃん達も、いつこの公園が出来たのか覚えてない。お孫さん……あの時のお兄さんはまだ、この町内にいるらしいけど……ほら、今個人情報漏らせないから」
「うん……そうだよね」

 会えるものならば、会いたいと思う。けれど、会ってどうすると問われれば……どうしたいのかが解らない。

「……会いたかったなぁ……」

 ぽつり、と呟く声と一緒に、俯いた髪の隙間から見える頬を伝う、一筋の涙。

「……仕方ないんだけど、な」

 昨日まですっかり忘れていた自分達。あの老夫婦は、自分達が忘れていた事をきっと責めはしないだろう。子供なんてそんなものだよ、と、きっと笑って言うに違いない。
 なかなか顔を上げない紫乃の頭を、高征が宥めるようにぽんぽんと軽く叩けば、紫乃はくすっと笑って顔を上げた。

「……何か、お父さんみたい」
「……同い年のお父さんがいたら見てみたいもんだな」
「ふふ、ごめん。……たかくんの手、優しいね」

 静かに離れて宙に浮いた高征の手を、紫乃の柔らかな両手が包み込む。引き寄せるように頬に導かれて、そこで高征はハッと我に返った。

「ちょ、……しぃ!」
「え? ……あっ、ご、ごめんなさいっ」

 多分紫乃の行動は無意識だ。というか、無意識であって欲しい。
 触れあった手が、自分のものとも、妹の紗由とも違っていて。それが紫乃を、否応なく女の子だと認識させた。

(何かすっげ鼓動早いんだけど……!)

 クラスの女子とも結構仲が良い方だから、触ったり触られたりはしょっちゅうある。だけど今の紫乃に触れられたのとは、全然違う感覚。
 ちらりと横目で紫乃を見れば、ほんのりと頬が赤く染まっている……ように見えるのは、高征の気のせいだろうか。

「あ、そ、そうだ! あのね、お茶持って来たの」
「お茶?」
「そう、あと金平糖も」

 お茶と金平糖────それはあの頃の思い出そのままの……。

「懐かしいでしょ?」

 おばあさんが淹れてくれた苦いお茶と、甘い甘い金平糖。同じ数だけ小皿に分けられていたのに、高征はその甘さが欲しくて、紫乃の皿から奪っていた事を思い出す。

「今度は取っちゃわないでね」
「さすがにしないって、この歳で」

 そう苦笑すると、バッグの中からステンレスボトルと数個の紙コップ、それに二人で食べるには量が多いのではないかと思える金平糖の袋が出て来た。

「……ちょっと多くないか?」
「私達がここで食べてたら、子供達も欲しがるかも知れないと思って」

 ポケットティッシュから引き出したティッシュペーパーを、高征と紫乃の間に引いて、その上にざらりと十数個の金平糖を乗せる。色とりどりのそれは、日の光を浴びて星のように輝いた。

「はい、どうぞ」

 紙コップの一つに注がれるのは、熱い緑茶。久しぶりに飲むお茶は、昔ほど苦いとは感じない。
 そして、金平糖を一つ、口の中に放り込む。

「うわ、やっぱ甘い」
「そりゃ金平糖は甘いでしょ」

 笑いながら紫乃も一つ、と金平糖をつまむ。高征はガリッと噛み砕いてしまう方だが、紫乃はゆっくりと舐め溶かす方らしい。
 昔は縁側で、そして今は藤棚の下で。風景は違えど、同じ藤の傍で、再会した二人が揃ってお茶を飲む。

「……偶然なのかな、奇跡なのかな」

 こうして紫乃と会えた事。藤を見つけられた事。……思い出した、事。

「おじいさんとおばあさんが、呼んでくれたのかも知れないね」
「したら、お孫さんも呼んでくれりゃいいのに」

 そしたらみんな揃っただろ? と、高征が淋しそうに告げたその時。

「あら、誰か先に来てるわ」
「うん、もしかしたら本当に……」

 まだ若いであろう男女の声が、背後で聞こえた。
 思わず振り向いた高征と紫乃が見たのは、柔らかく、優しい微笑みを浮かべた男性の姿。

「高征くんと、紫乃ちゃん。かな……?」

 間違いなく自分達の名前を呼ばれて、二人は静かに頷いた。男性はちょっと待ってて、とぐるりと公園を迂回し、女性と一緒に入り口から入ってくる。
 途端に、子供達がその女性を見て、パッと駆け出し、あっという間に取り囲んだ。

「けいこせんせい!」
「みんな元気ねー。先生も混ぜてくれる?」
「いーよー!」

 男性は女性に「さんきゅ」と呟いて、真っ直ぐ藤棚の下へとやってくる。どういう反応をしたらいいのか解らなくて、二人は微動だに出来なかった。

「……緑茶に、金平糖、か……。覚えていてくれるとは思わなかった」

 どこか懐かしく感じる顔形と、少しだけ淋しげな瞳。そしてその言葉に、高征と紫乃はもしかして、と期待を抱いた。

「久しぶり。埜上翔真しょうまです。君たちが知る、『藤の庭のおじいさん』の孫だよ」

 うそ、と隣で紫乃が呟く。その瞳に、どんどん涙が溢れて……。

「うん、嘘じゃないよ。……覚えていてくれて、ありがとう。二人とも」

 その言葉を皮切りに、紫乃の涙は止まらなくなった。


【4】 高征へ ← 【4】 紫乃へ ← Wisteria Memory 目次 → 【5】 紫乃へ → 【6】
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