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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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虹霞~僕らの命の音~ ひとりにしないで

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 本日、8/28で、いつもお世話になっております朱音さまのサイト「空想 i 」さまが3周年を迎えられました。
 お祝いSSとして、またもや勝手に「虹霞~僕らの命の音~」の二次創作を書かせて頂きました!
 思いつけば朱音さんの他の作品でも書いてみたいんですけどね。いつも虹霞が浮かんでしまうので……。

 それでは追記からどうぞ。




 それは、突然の事だった。
 妖華に頼まれた物を渡しに、六耀の部屋の扉を開けた瞬間、彼女が縋り付くように時雨に抱きついてきたのだ。

「うわっ、り、六耀……っ!?」
「……ひとりにしないで……」

 潤んだ瞳に上目遣い。普段の六耀ならばまずしないであろうその仕草と言葉に、時雨の鼓動が速くなる。

(な、何が起こったんだ一体……!?)

 数時間前までは、いつもと変わらぬ六耀だったはずだ。少し傍を離れただけなのに、何故こんな事に。

「君は、僕の……ただ一つの……」
「……六耀?」

 囁くように呟いた後、六耀の頭が時雨の肩に寄り掛かる。僅かにかけられた体重が、彼女が眠りに入ったことを知らせてくれた。

「何が起こったんだ……?」

 先程心の中で告げた言葉を今度は口に出す。だが、当の六耀は眠ってしまったし……。
 無意識に抱き寄せた、六耀の髪をそっと撫でる。

「言いかけて眠るなよなー」

 時雨は華奢な体を抱き上げて寝台へと運び、毛布をかけて、ほんの少しだけ、白い頬に指先を滑らせる。唇に触れて、なぞって……顔を寄せる。

「……なんて、な」

 自嘲するように呟いて、体を起こす。時雨はいつでも六耀を求めているけれど、彼女は違うことを知っているから、自分勝手な行動はしたくない。

(まぁ、合意するわけもないけど。……我ながら良く理性保ってるよ……)

 六耀が目覚めたら、ちょっとだけからかってやろう。やりすぎると妖華やら月花やらから報復されるだろうから、本当にちょっとだけ。
 この時は、そう思っていたのだけれど。

 一晩経っても、二晩経っても、六耀が目を覚ますことはなかった。
 薬師に見てもらっても、妖華や月花の力でも、六耀の目を覚まさせる事は出来ずに。

「リク~……。どうしちゃったの……?」

 春雷は泣き出しそうになるし、桜も日に何度も様子を見に来る。不知火は片っ端から六耀が口にしたであろうものを調べさせ――――何せ毒という可能性もあるのだ――――、妖華と月花は魔法書とにらめっこ状態。そして時雨はというと、六耀の傍を片時も離れなかった。

「時雨様、少しお休みになってくださいませ」
「いや……」

 六耀が眠り続けて早4日。最初の二晩こそ、楽観視して休む事が出来たけれど、今はとてもそんな気分にはなれない。

「時雨様がお倒れになったら、六耀様が悲しまれます」
「……どうかな。むしろ喜ぶんじゃ……」

 そんな考えが頭を過ぎる。六耀に好かれている自信など、はっきりいって無きに等しい。

「もー! トキがそんな事考える時点で、お休みは必要だってば!」
「そうだな、いつもの君ならそこまで自虐的なことは言わないだろう?」
「今夜は、私が傍におります。何かありましたらすぐにお知らせいたしますから、どうぞお休みくださいませ」

 桜の強い声に押し負けて、時雨はゆっくりと席を立った。歩き出そうとして、ふらりと体が傾ぐ。

「ほらぁっ、ちゃんと休まないからだよ!」

 傍にいた春雷がすかさず時雨の体を支えてくれた。ずっと座ってばかりいたせいで、体中がぎしぎしする。
 春雷の肩を借りるのは不本意ではあったが、とりあえずドアへ向かおうとしたその時、廊下を慌ただしく走る音が聞こえた。

「? どなたでしょう?」

 城の中を、こんなに慌ただしく走る者はまずいない。可能性があるとすれば春雷ぐらいだが、彼女はここにいる。
 次の瞬間、ものすごい勢いで六耀の部屋の扉が開いた。

「六耀様っ!」

 入って来たのは、勘違いから六耀と友人になった、とある国のお騒がせ姫・玲音だった。

「れ、玲音!?」
「まぁ、玲音様でしたの」
「こんばんは、不知火様、桜様。深夜に突然のご訪問、お許し下さいませ」

 優雅に一礼する姿は、さすが一国の姫というべきか。だが、その一国の姫が、何故ここに……。

「いや、構いませんよ」
「どうなさったのです?」
「それは……ああっ、やっぱり六耀様はお目覚めではないのですね!?」

 部屋の中の寝台に横たわる六耀を見た玲音は、顔を真っ青にして寝台に駆け寄る。やっぱり、という言葉が気になって、時雨は叫んだ。

「な……何で玲音が知ってんだ!?」

 六耀が目覚めないことを。この城でも、知っているのは時雨達と薬師ぐらいなのに。

「桜、知らせたのか?」
「いいえ? 玲音様、何かご存知なのですか?」
「ご存知も何も、原因は私です」

 あまりにも簡単に答えられて、時雨の反応が遅れた。

「……何だって!?」
「正確には、私が出したお手紙ですわ」

 曰く、玲音の国で最近新開発されたお香が、いい香りだと爆発的に売れたらしい。ならば六耀にも、と玲音がお香を送ったのだが……その後、少し時間を置いてから副作用が出る人間が続出したらしい。
 そう、今の六耀のように、眠り続けてしまう副作用だ。

「六耀様、いつもでしたらすぐにお返事を下さるのに、今回はまだでしたから、もしかして、と」

 そして、玲音の疑いは現実となってしまったのだ。

「お香とは、盲点でしたわね」
「そうだな。して、玲音姫。解毒……いや、回復法は」
「この中和剤でお目覚めになりますわ」

 その手に握られていたのは小さな小瓶。ガラスで出来たそれを、時雨は思わず奪い取った。

「……どーやって飲ませれば良いんだ?」

 六耀の唇は閉じられているし、眠っているとなれば、よほどでなければ嚥下出来ない。

「それはやっぱり口移しでしょう!」

 待ってましたとばかりに登場したのは、時雨の師匠である月花。反射的に後ずさり、時雨は小瓶を渡すまいと胸に抱え込む。

「うげ、月花! いつ来たんだ!?」
「うふふ~っ、さぁ時雨、寄越しなさいっ」
「待つんだ月花、口移しならば師匠である我が」
「何なら私が」
「何か仰いました、お兄様……?」
「いや、冗談だよ桜」
「相手が誰でも、そんなことさせるかっ!」

 六耀とキスなんて、例え師匠であっても許さない。二人の手から必死に守る時雨を横目に、玲音がふぅ、と溜息をついた。

「誰が飲ませると言いました?」
「……へ?」

 ぎゃあぎゃあとわめいていた三人の動きが、ぴたりと止まる。

「香りだけで充分ですのよ」

 玲音が時雨から小瓶を奪い、蓋を開けて六耀の枕元に置いた。

「少しすればお目覚めになりますわ」

 玲音のその言葉を信じ、その場にいた全員が固唾を呑んで六耀の様子を見守った。

*****

(……いい匂い……)

 色とりどりの花畑の中に一人、六耀は佇んでいた。自分が何故こんな所にいるかは解らないが、鼻腔をかすめる柔らかな香りが、辺りに満ちている。

「でも、何だか……淋しい場所」

 自分以外誰もいない空間だからだろうか。そう認識した瞬間、自分が今、ここに一人でいるという事が、とても怖くなった。

「……だ、誰か……いないの……?」

 応えは返らない。見渡す限りの花畑の中に、ただ一人。

「……と、時雨……っ」

 いつもなら、呼べば振り返ってくれる彼。鬱陶しいぐらい傍にいるくせに、どうしてこういう時はいてくれないのだと、理不尽な怒りにも似た感情が心に宿る。

「何でだよ……っ!」

 いてもたってもいられなくて、六耀は走り出す。同時に、足元に咲く花を散らすことになったけれど、今は安らげる淡い香りよりも、欲しい存在(もの)がある。

「時雨……っ! どこにいるんだよ!?」

 どうして時雨だけを求めるのか、六耀にも解らない。けれどこの時だけは、師匠よりも、親友よりも、逢いたいと願ったのは白髪の彼だけだった。
 どれだけ走っても、走っても、花畑からは抜け出せない。足も疲れてきて、やがて六耀はへたり、と座り込んだ。

「……ひとりに、しないで……っ!」

 何故こんな弱音が零れたのか……何故時雨ばかりを求めるのか。六耀の頭の中は、彼の存在に占められていた。
 閉じていた瞼の裏に、微かな光が入り込む。何か変化があったのかと、六耀はおそるおそる瞳を開けた。

「花が……光ってる……?」

 それは、六枚の花びらを持つ、可憐な白い花。それはいつか彼に貰った、白銀の欠片の結晶に似ていて……。
 そっと手を伸ばして、光る花を指先で手折る。と同時に、求めていた声が聞こえた。

『六耀……』
「時雨……?」
『六耀』

 問い返しても、彼の声は自分の名前を紡ぐだけ。けれど、その声を辿っていけば彼に会える気がして、六耀は手に光る白い花を持ったまま、歩き始めた。

*****

 待つこと数分――――六耀の瞼が震え、その奥から綺麗な瞳が覗いた。

「……うわっ? 何、どうかした!?」

 目を開ければ、知っている顔が勢揃い。そりゃ驚くよなぁ、と呑気に時雨が思っている間に、春雷に先を越された。

「リク~っ、よかった!」
「ハル? どうしたのさ一体」

 六耀が訊ねても、春雷は抱き着いたまま。とりあえず、と時雨は答える前に問いかけた。

「……体、どこもおかしくないか?」
「時雨? うん、何かすごくすっきりしてるけど、何でかな?」
「4日も寝てればな」
「4日!? え、何があったの、時雨が僕に変な魔法かけたとか?」
「何で導き出される推論がそれなんだよっ」

 がっくりと肩を落とした時雨だが、結局は、まぁいいか、と考えを切り替えた。時雨にとってはやはり、動かぬ六耀よりも、時々微かに笑ったり、ちゃんと会話をしてくれる六耀の方がいい。
 ……会話の内容はさておいて、だが。

「そーいや玲音」
「はい?」
「六耀が眠る前さ、何か言いかけてたんだけど」
「ああ、それも副作用の一つですわ。本格的に眠りに入るにはタイムラグがあるらしく、夢うつつの状態でどなたかにお会いすると、本心をぺろっと言ってしまうとか……」

 それがきっかけでお付き合いを始めた方もいらっしゃいますし。と続いた言葉に、時雨は「ホントかよ」と思った。

『ひとりにしないで……』

 潤んだ瞳で告げられた言葉。あれが本心だというのなら。

(絶対、一人になんかしてやんねー)

 例え六耀が、それを本心だと認めずとも。
 次の瞬間、六耀が体を奮わせたのは、時雨のそんな決意を感じたせいか否か。




※後書き 兼 言い訳
 朱音さんへのお祝いSSでしたー。
 最初こそ、最近良く聞いている歌をイメージして作ったのですが、どんどん違う方向へ……あらら? 城内に住む誰かでは、六耀さんに毒を盛る事はまず無いと思ったので、お騒がせじゃじゃ馬姫・玲音に再登場して貰いました。というか、自分で勝手に作っておいて、玲音の存在忘れてました……(笑)
 本当は誰かに口移しで薬を飲ませようと思ったのですが……誰にさせても報復が怖そうで。六耀さん、みんなに愛されてますからね~。

 改めまして、朱音さん、3周年おめでとうございます! いつも気にかけて下さってありがとうございます、そして、これからもお付き合い頂ければ幸いです♪
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