Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

頂き物 雨の弓 「夏の果実よりも」

 今年も朱音さんが、3周年のお祝いSSを書いて下さいました!
 しかも雨の弓ですよ~♪ 雨の弓が好きな方は必見です。私じゃこんな風に書けません。
 それでは、追記よりどうぞ。


 夏と言えばもちろん暑くて。暑いならば求めるは避暑地で。
 避暑地に相応しいのは海。海には目を細めてしまうくらいに照り付ける太陽がお似合い! ……だと思っていたんだけど。
 目の前に広がっているのは、月の明かりを受けてゆらゆらと煌めく広い海。人気は全く無くて、漂っているのはさざ波のみ。そんな中、泪ちゃんとレインの声が響く。
「あーぁ。真っ青な海が見たかったのに、ヨウくんのせいで夜になっちゃったわね」
「俺達も手伝ったけど、結局仕事の仕上がりが早くなるかどうかはマスターの腕にかかってるからなぁ」
「と言うことは、つまりヨウくんの仕事振りが悪いってことよね?」
「えっ、いや、そうは言ってないけど!?」
「お前らっ! 陰口は俺の聞こえないところで言えよ!」
 静かな浜辺に似合わない大きな音量での会話に、思わずユミと顔を見合わせて笑っちゃうわ。
「ねぇ、コーリさん。ああやって言い合っていても、皆の仲は良いですよね」
「もちろん。そうでなかったら、一緒に遊びになんて来ないもの」

 常に忙しいマスターのお仕事を全員で手伝っていた時の会話が、生前に過ごしたここに来た理由なの。
 連日続くあまりの暑さに、何気無く『海に行きたいよね』と呟いたところ、それをテーマに大いに盛り上がった。それぞれに夏の思い出を語り、それじゃあ懐かしい世界の海へと遊びに出掛けようと言うことになった訳。
 仕事さえ片付ければ楽しいことが待っている! と思い、各自が今までに見たことの無いようなやる気でバリバリと仕事に励んだっけ。
 だけれど予想以上に仕事量が多く、こなしてもこなしても次の処理が立て続いたので、目的地へとやって来られたのは夜中になってしまった。
 想像したのは青い海と憎いくらいの太陽だったけれど、夜の海も神秘的で素敵じゃない?
「まぁまぁ、落ち着いてよ。この時間帯だからこそ他の人がいないし、考えようによっては私達の貸切みたいじゃない」
「そうだよ! それに、夜には花火が映えるしね」
 事前に持って来ていた花火セットを胸の前でお披露目してくれたユミ。すると、ヨウくんの長い腕が伸びて来て、彼女と私とをいっぺんに抱き締めるの。
「二人は優しいなぁ。反対に、俺に優しくないショウカとレインには大量の仕事をプレゼントしようと思います」
「えっ、何ですって!?」
「マ、マスター! そりゃあんまりですよ!」
 喧嘩をしている風に見せかけて、本当はじゃれ合っているだけの三人を見ているととっても和める。やっぱり大好きよ、皆のことが。


「はいっ、コーリさんはどの花火にしますか?」
 優しい笑顔を浮かべて花火がたくさん入った袋を差し出してくれたので、特に何も考えず適当に一本を選んでみると。
「あ、それは線香花火ですよ。コーリさんにぴったりですよね」
「え? それはどう言う……」
「ユミー! 俺達も早く花火で遊ぼうぜ」
「あっ、うん、今行く!」
『前からそんな風に思っていました』とばかりに自然と零れたユミの言葉の真意を問おうとしたんだけど、レインに呼ばれた彼女は幸せそうな笑顔を浮かべて走って行ってしまった。
 どう言う気持ちが含まれた呟きだったのかしら? 線香花火のイメージは、切ないや他の花火と比べて華やかさが少ない、なんだけど。
 ……遠まわしに嫌味を言われた? まさかね、あんな良い子がそんなことを言うはずが無い。
 思考を巡らせながらも少しばかり呆然としていると、肩をとんとんと叩かれた。その合図に顔を上げると、こちらの様子を窺う明人くんと目が合う。
「ぼーっとして、どうした? 花火をもらったんなら、火を点けてやるぞ」
「あ、うん。お願い」
 点火してもらうまでの空き時間に、離れた場所で吹き出し花火片手に笑い合っているレインとユミを眺める私の目。二人は本当に仲良しで、いつも一緒にいるし、憧れのカップルだよね。
 視線を手元へと戻すと、火を宿した花火の儚げな光に目を奪われる。真ん中にぷっくりとした赤を抱いて、小さな花弁を散らしながらひと夏を生きる風物詩。
「……何だか不思議だよね」
「ん?」
「こうして皆でいられることが。あの時、私が命を終えなければ……、死神としての道を選んでいなければレインとユミとも会っていなくて。明人くんと泪ちゃんも死神になっていなかったかも知れないでしょ?」
 柔らかな優しい光を感じると何故か過去のことが過ぎって、『今』に辿り着くまでのことを巻き戻し再生してしまうの。
 もしも、なんて願っても仕方が無いことだけれど。もしもあの時、何事も起こらなければ。
 私は明人くんと泪ちゃんが付き合っている訳では無いと知り、自分の早とちりを笑いながら安堵したかな? その後は高校に入学して友達を作って、卒業の頃には明人くんに気持ちを伝えていたのかな?
 そして、目の前に広がっている世界を当たり前として捉えられる、命ある未来を二人で描けたのかな……なんて。
 中心の輝きがぽとりと落ちた時、そっと名前を呼ばれた。
「……透子」
「何? あき……って、え?」
 頭を抱き寄せられる感覚。頬に明人くんの短い髪が触れるくらいに近くて。
「色んな偶然が少しずつずれていれば、数えきれないくらいの未来はあったと思う。だけど、一つだけ言えるのはな」
――俺の隣にお前がいて、透子の隣に俺がいること。それだけはどんな未来が待っていても変わらない事実だから――
 耳元で聞こえた自信ありげな声に、顔が思い切り熱くなる。だけど、どこにも否定する要素は無いの。
 だって、手に入れられなかった世界を想像した時でも、いつも彼は私の隣にいてくれる。予想と違う道を進んだ今だって、ここにいてくれている確かな事実があるのよね。
「明人くん、これからもずっと……例え転生しても傍にいてね」
「当たり前だろ。泪花はもちろん、レインやユミだって傍にいるよ。何せ、透子は線香花火みたいだからさ」
「あ、それ、ユミにも言われたの。私はそんなにも儚げかしら?」
「そう言う意味じゃなくて。この花火は真ん中に丸い光を持つのが特徴だろ? 『光梨』と言う名前を持ったお前を中心にして、皆はそれに導かれた周りを舞う細かな光なんだよ」
「私が皆を導いた? まさか、そんな素敵なことをした覚えはないわ」
「そうかそうか、自覚が無いところがまたらしいな。だけど、俺は間違い無く透子に導いてもらったんだ」
 不意に真剣な表情を見せて、まっすぐにこちらを見つめてくるなんてずるい。だって、そんなことをされると……ほら、心臓が高鳴って、もう何も言えなくなってしまう。
 大きな手の平に頬を包まれて、条件反射で目を瞑りかけた時、
「マスター、コーリ! スイカ割を始めますよー!」
 遠くから聞こえてきたレインの声にびっくりして、ぱっと離れてしまう。さっきとは違った意味で動悸がして、滲む変な汗。
「……全く、邪魔しやがって。レインの仕事は更に増量決定だな」
 軽く舌打ちをした後、意地悪なことを言うので笑ってしまった。
 あーぁ、レインはもうマスター専属秘書と間違われるくらいに忙しくなるんでしょうね。可哀想に。


 私達二人が戻って来たことを確認したレインは、マスターが意地悪いことを言っていたなんて知る由も無く、楽しそうな表情を浮かべてスイカ割のルール説明をしてくれた。
「じゃんけんで負けた人は目隠しをして、その場で十回転してもらいます。その後、数メートル離れた場所に置いてあるスイカを無事に割れれば成功となります!」
「それじゃあ、早速行きますよー。じゃんけん……」
 ユミの掛け声と共に、一斉に形作った手を中心に集める。ある程度の人数が揃っているのに私以外の皆はパーを出し、私だけがグーを出すなんて有り得るかしら?
「……皆でぐるになってない? 一回戦であっさり勝負がつくなんて不自然じゃない?」
「疑り深いわねぇ。ほらほら、タオルを巻くからちょっと屈んでちょうだい」
 じゃんけんで負けてしまったのは少しばかり悔しかったけれど、泪ちゃんに促されるともう逆らいようがない。
「跡が残ったり、痛くないように軽めに結んでおくわね」
 こうして泪ちゃんの声が後ろから聞こえてくるこの感覚、懐かしいな。子供の頃はこんな風に髪を結ってもらいながら、お喋りしたっけ。あの時と違うのは、髪をセットしてもらっているのではなく、視界を奪われていると言う点だけど。
「じゃあ、この棒に額を付けて十回回ってくれよ」
 レインの指示通りに行動すると、思った以上にふらつく身体。視界が閉ざされているために、本当に左右が分からない。
 さっき、置いてある場所を確かめたはずのスイカを求めて、とりあえずもつれそうな足を前進させよう。
「コーリ、そっちじゃなくてこっちだ!」
「え、レイン? どっち? スイカはどこ!?」
「もっと右です。私が手拍子しますので、その音のする方に来て下さいね」
 ユミの可愛らしい声が聞こえた後、小さな手拍子が聞こえる。不自由な今を少しでも救ってもらうべく、パンパンと響く音だけを頼りにふらりふらり、よろよろと歩く。
 途中で若干手拍子の音に変化があったように感じたけれど、
「透子、おいでー」
 明人くんの声が聞こえたことによって、私が頼りにするのは彼に変わったんだと思っただけ。何やらやけに楽しそうな声色と、やけに黙り込んだ他の皆の様子をおかしいと怪しめば良かった……。

「はい、ストップして」
 制止を促す声が聞こえたので、きっとちょうど良い位置に目標があるんだと信じて疑わなかった。それに、ようやっと平衡感覚が戻ってきて、後は棒をスイカに振りかざすのみ……だと思ったのに。
 急に腕を引っ張られて、倒れそうになる身体。
「きゃーっ!?」
「はい、ゴールおめでとう」
 その直後、耳元で聞こえたすごく楽しそうな明るい声。強く抱き締められる感覚。
 何事かと思って慌てて目隠しを外すと、満面過ぎる笑みを浮かべている明人くんと目があった。
「なっ!? え?」
 一体何がどうなっているのかが分からなくて、頭の中にハテナをたくさん浮かべている私に構わず、彼は物凄く満足したように頬を染めて笑いながら白状するの。
「手拍子のする方向を目指してよちよちと歩く姿が、赤ん坊の頃を思い出させてあまりに可愛くて。ついつい独り占めしたくなって誘導してしまった……」
「しみじみと自白している場合じゃなくて! スイカは!?」
「ん? あっちにあるだろ」
 平然と言ってのけた明人くんが指した方向に目を向けると、和やかな雰囲気で赤い果肉を食べているいつものメンバー達がいた。
 私の視線に気付いたらしい皆はにこにこ笑って、だけどこの状況から救ってくれる気は無いらしい。
「ごめんな、コーリ。マスターに『これ以上邪魔をするとどうなるか分かってるのか?』と言いたげな目で睨まれたから、企みを阻止出来なかったんだ」
「私達のことはお気になさらず、ラブラブして下さいね」
「待って、私の分のスイカは置いておいてよ!」
「こーら、透子。俺よりもスイカを取るってのか?」
「そ、そうじゃなくて。だけど今の季節にしか食べられない物だし、ね?」
 相手は人でも無く果物なのに、わざとやきもちを妬いたような顔をする明人くんが可愛くて仕方が無いの。
 幼馴染で、お兄ちゃんで、仕事仲間で、そして恋人で。私を取り巻く人間関係において、明人くんはいつの時代でも近くにいてくれるよね。
 ここにある愛しい今を感じると、もう一人の幼馴染の声が飛んで来た。
「大丈夫よ、コーリの分は取ってあるから。だけどヨウくんの分は私達で食べちゃうからねー」
「ちょっ、ショウカ!? 俺の分も置いとけ!」
「こら、明人くん。私よりもスイカを選ぶの?」
 泪ちゃんの言葉に慌てた様子が見受けられたので、さっき言われたことをそのまま言い返す。すると一瞬だけ呆気に取られた顔をしたけれど、その後すぐに悪戯っぽく笑って、
「そんな訳無いだろ?」
 柔らかく唇に触れたのは、夏の果実よりも甘い感触。




 読んでてにやにやが止まらなかったです……本気で。それでは、感想行きます。

 舞台は夜の海。え、夜? 昼じゃなくて? と思ったら、ヨウの仕事が終わらなかったんですね(笑)確かにヨウが休みを取るには、前倒ししなければ無理ですからね~。ヨウをいじめるショウカとそれに上手く乗せられてるレインの会話がこれまた面白かったです♪ レイン、いつからこんな弄られキャラに……いや、私もレインはいじめやすいんで、何とも言えないんですけど。しかし和むなぁ、このメンバーは……。私が書くと、どシリアスに向かいますし。

 線香花火をやりながら呟くコーリの言葉が、何だかすごく印象的でした。本当にこの子達は突発的に書いたので、設定も何もかも後付けだったんです。だけど、今考えると、コーリがあの時命を終えなければ、死神になっていなければ、今のこの光景は有り得なかったわけで……そして、ヨウが告げた言葉が、とても嬉しかったです。
 あのまま透子が生きていたとしても、明人が傍にいることは変わらない未来だった。命を終えて、一度は離れてしまうことになったけれど、それでも今は傍にいる。思っていたのとは違った形でも、コーリの傍にヨウはいるから。
 線香花火=光梨の解釈も、とても素敵で、読んでいる内に何だか泣きそうになりました。
私が表現したかった物を言葉にして下さる朱音さんに感謝です。
 それにしても、ヨウの仕返しはとんでもない仕事の量になると思うから、レインは覚悟が必要ですね~。それこそユミと逢ってる時間までなくなっていたりして。
 雨弓メンバーでスイカ割り! 楽しそう~、混ざりたいかも……と思ってました。泪花との姉妹のような関係がちょこっと出て来るのが嬉しかったです♪ スイカ割りの棒を持ったまま、よろよろと歩くコーリ。うん、声がヨウだけになったところで疑わないのがコーリです。だってコーリにとっての彼は、絶対的信頼に値する存在ですから。なのに……ヨウってばさっきレインに邪魔されたことがよっぽど悔しかったんでしょうね。コーリにしてみれば突然の事態にビックリするだけでしょうけど。
 そしてコーリとヨウのやりとりを気にもせずにスイカを食べてる他のメンバー(笑)そうだよね、人の恋路を邪魔する者はっていうものね、うん(←納得して良いのか?)
 そして、色気より食い気ですかコーリさん(笑)うん、でもコーリらしいわ。レインやユミの前ではお姉さん役な彼女だけど、ヨウとショウカの前では途端に妹に変わってしまうから。
 最後はラブラブで大満足です♪ 朱音さん、素敵なSSをありがとうございました!
 以下、おまけSSです。

「は? コーリが線香花火? どこがだよ?」
「え、だってそのままじゃない?」
 コーリのイメージそのままをユミがレインに告げた途端、レインは素っ頓狂な声を上げた。
「ああ、そういえばそうかもね」
 隣でショウカまでが納得しているものだから、レインは一体どういうことだと、更に首を傾げた。
「線香花火っつったら、儚げだとか言う印象しかないんだけど。コーリのどこが儚げなんだか全くわかんねー」
 人を起こす時には腹の上に乗っかるし、事あるごとに小突いてくるし、と続く言葉に、コーリは苦笑すると同時にちょっとだけ情けなくなった。
(私、レインと同じ事思ってたわけ……?)
 線香花火と言えば、儚げという印象しか持たなかったコーリにとって、レインの言葉にどう反応して良いのか解らなくなってしまったのだ。
「……突っ込みどころ満載なんだが、とりあえず。レイン」
「何ですか?」
「……こいつ、お前を起こす時に腹の上になんか乗ってんの?」
「そーですよ、思いっきりドスンと……って、マスター顔っ! 般若になってます!」
 へーぇ、と顔は笑っているのに声が低い。隣にいたコーリは身の危険を感じて、そっとショウカの隣に移動しようとしたのだが。
「こら、逃げるな透子!」
「だ、だって明人くん怖いっ! 泪ちゃん助けて!」
「もー、ただのじゃれ合いでしょー? 明人くんたら大人げないわよ?」
 しゃくしゃくとスイカを齧るショウカは呆れ顔だ。
「自分の女がそんな事してるって知って、妬かない男はいないと思うけど? あー、アクアは妬かないのか、そーかそーか」
「ちょっ、明人くんとアクアを一緒にいないでくれる!?」
「透子お前、レインを起こすの禁止! 行くならユミに行かせろ!」
「ダメよ、ユミだとミイラ取りがミイラになっちゃうんだもの!」
「レインが一人でまともに起きればいいだけなんじゃ……?」
「「「それもそうだ」」」
「結局矛先は俺かよっ!!」
 静かな夜の海に、レインの絶叫が響き渡ったのは言うまでもない。

スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR