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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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Wisteria Memory 【2】 何を忘れてる? T:side

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一緒に物語を作って♪ バトン の回答を元に作った物語です。

『……何か……忘れてるのか……?』


(結局聞き出せなかったな……)

 翌日、少年────高征はまた、あの藤棚がある公園へと向かっていた。

 昨夜の内に、あの公園の事を祖父母に聞こうと思ったのに、久しぶりに我が子と孫に会えたせいか、高征が家に帰った頃には何故かご近所さんまで集まって宴会になっていた。
 当然、酔っ払った祖父母に話を聞けるはずもなく、まだ未成年の高征が酒を飲めるわけもなく、早々に布団に入り込んだのだけれど……どうしても気になってしまって、こうしてまた足を運んでいる、というわけだ。

 まだ午前中であるせいか、視界に入った公園では小さな子供達が数人いる。開発が進んで、この辺りにもだいぶ子供が増えたとは聞いていたが、今の子供は外で遊ぶ方が珍しいだろう。
 だが、何かがおかしい。普通幼い子供と言えば、ブランコの取り合いや滑り台、砂場に座り込んでいたりと様々な行動を取っているはずなのに、子供達は一箇所に集まっている。
 甘く強い香りを放つ、藤棚の下に。

(何だ?)

 訝しみながらも近づいていくと、子供達がこそこそと話している言葉が聞こえてくる。必死に小声にしているつもりだろうが、ある程度近づいた高征が聞こえるぐらいの声量だと言う事に、子供達は気付いていない。

「どうしよう?」
「けが、してるわけじゃないよね?」
「どこかいたいとか、でもないよね?」
「じゃあ、おひるねしてるだけ?」

 お昼寝? と首を傾げながらも歩を進めていく。立ったままの子供達の頭越しに見えたものは……。

「……は?」

 休憩用のベンチに横たわり、おそらくすやすやと眠っている少女。田圃と畑しかない田舎町ならいざ知らず、こんな町中で無防備に眠るとはこれ如何に。

「このおねーちゃん、どうしたんだ?」

 とりあえず、自分より先に来ていたであろう子供達に訊ねてみる。突然現れた年上の少年の姿に、一瞬子供達はびっくりしたけれど、自分達に危害を加えるわけではないと判断したらしく、「わかんない」と首を横に振った。
 公園に遊びに来たら既にいたのだと、子供達は口々に言う。どこか痛いのか、怪我でもしたのかと懸念したらしいが、少女はただ眠り続けているだけで、どうしたらいいのか途方に暮れていたらしい。
 しかも、子供達が傍にいて、あの声量で起きていないのだから、相当深く眠っているのだろう。

「おそとでねむくなったら、すぐかえるのよって、ママいってた」
「まぁ、普通はそうだろうな……。このおねーちゃんは俺が見てるから、みんなは遊んでおいで?」

 子供達はじーっと高征を見上げ、やがて何か納得したかのようにコクンと頷いた。
 何だかこの少女を預けるに足る人間かと、品定めをされた気分だったけれど、高征は気にせずに笑って子供達を遊びへと送り出した。
 ベンチは少女に独占されているので、高征はベンチを背もたれに、地面に直接座り込む。
 髪に隠れて、少女の顔はよく解らない。けれど着ている服からして、多分高征と同い年くらいだろうと思う。

(あれ……?)

 ふ、と頭に浮かんだ、今の状況によく似た光景。こんな風に、藤の花が咲く縁側で、体を猫のように丸めて眠る幼い少女と────。

(何だ……?)

 普段高征が暮らす街には藤の花なんてないし、今時縁側自体なかなか見ない。まして、幼い少女など、妹の紗由さゆ以外、高征には縁遠い存在だ。それなのに、どうして……。
 この藤棚と、ベンチと、横になって眠る少女という組み合わせが、高征の心に強く残る。
 少し強い風が吹いて、ざわりと葉擦れの音を響かせる。垂れ下がる藤の花も一緒に揺れて、ひときわ強い匂いがその場を包み込む。

「ん……」

 頬にかかっていた髪が鬱陶しかったのか、少女が指先でそれを払い、ゆっくりと起き上がった。

「……起きた?」

 高征にとっては小さな呟きで、少女に向かって告げたわけではないけれど。少女はびくりと体を震わせて慌てて起き上がった。

「……え……あ、え、私……?」

 状況を把握しようとしているのか、きょろきょろと辺りを見回している。木々を見て、公園で遊ぶ子供達を見て、頭上で揺れる藤を見て、そしてようやく、高征を見た。

「大丈夫? どこか痛いとか、怪我してるとか、そういうわけじゃない?」
「あ、はい! 違います、大丈夫です」
「そっか。それなら良かった」

 安心したように高征が笑うと、少女も恥ずかしげに頬を染めながらそっと微笑んだ。

「あっ、おねーちゃんおきた」
「ほんとだー。おはよー!」

 少女が起きた事に気付いた子供達が、わらわらと藤棚の下に集まってくる。

「おねーちゃん、ねむくなったらおうちにかえらないとだめだよー?」
「ママにおこられるよ!」

 物怖じせずに話しかけてくる子供達に、少女が戸惑い、助けを求めるように高征を見てくるので、苦笑しながらも口を挟んだ。

「この子達が守ってくれてたよーなものかな。こんなとこで無防備に寝てたら、誰に襲われたか解ったもんじゃないし。……ま、この子達にとってはそんな意識、欠片もないだろうけど」
「……そっか。ありがとうね?」

 身を屈ませて、一人一人の頭をゆっくりと撫でていく少女が、不意に高征へと視線を向けた。

「あなたも、ありがとうございます」
「いや、俺は何もしてないから……」

 綺麗な所作で頭を垂れる少女に、高征は慌てた。実際、ここに辿り着いてから目覚めるまでの短い間、傍にいただけだ。
 もう大丈夫だから、遊んでおいで? と少女が子供達を送り出すのを横目で見ながら、高征は先程浮かんだ光景を思い返していた。

「……何か……忘れてるのか……?」

 高征にとっては何気ない独り言。だがその言葉に、少女が反応した。

「あなたも、ですか?」
「え?」
「私も、何か……忘れているような気がするんです。この藤棚、どこかで見たような気がして……でも、思い出せなくて」

 それで朝からここへやって来て、ボーッと見上げていたらいつの間にか眠ってしまったのだと、少女は微笑して、一つの言葉を呟いた。

「……ウィステリア」
「……それ……」
「藤の別名です。……それを、教わったような気がするんですけど……」
「俺も。……どっかで、教わったような気がする……」

 風が吹く。藤の花がゆらゆらと揺れる。何故か一緒に、苦いお茶の味と、甘い金平糖を思いだして……。

『おや、いらっしゃい』

 そう言って笑う、シワだらけの顔。

『たかくん、しぃちゃん、こっちだよ』

 少しだけしわがれた声に、呼ばれたような気がした。少女も同じだったのか、藤の花を見上げていた視線が声を探すように空を彷徨う。

『あー! それ、しぃの!』
『ちがうよ、ぼくのだよ!』
『こらこら、まだあるから取り合わない!』

 幼い少年少女と、青年の声。少年はきっと────高征じぶん。ならば少女は……。
 もしかして、という疑念が、徐々に確信へと変わっていく。声を思い出したと同時に、傍で笑っていた少女の面影が、目の前にいる彼女と重なって。

「た、か……くん……?」
「……しぃ……?」

 お互いに呼んだ名前に、そして相手の名前がそうである事に気付いた二人は、遊んでいた子供達が驚く程の大声を上げた。


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Comment

NoTitle

お知らせを頂いたのでのこのことやってきました。
二週間ほど経ってしまいましたが…。
この先二人がどうなるのか…展開を気にしつつ、日曜日を待ちます。
ところで、今度私のブログでこのお話の紹介をさせていただいてもいいでしょうか。今度と言っても、次いつ雨が降るかわからないのですごく遅くなるやもしれませんが。
  • posted by 小雨
  • URL
  • 2013.08/18 20:24分
  • [Edit]

Re: NoTitle

こんばんは、読んで頂けるだけで嬉しいです!
一気に更新出来なくて申し訳ありません。ちょこちょこ修正をかけているので……。
嬉しいお申し出、ありがとうございます。
自分が作った作品に自信はあまりないのですが、
小雨さまが読んでそうしたいと思われたのでしたら、是非と申し上げたく思います。
完結するまで一ヶ月以上ありますし、どれだけ遅くなったしても私は構いません。

コメント、ありがとうございました。
  • posted by 琳架
  • URL
  • 2013.08/18 20:38分
  • [Edit]

NoTitle

今日雨が降ったので紹介させていただきました。
不快な表現等ございましたら訂正いたしますのでコメントにどうです。
  • posted by 小雨
  • URL
  • 2013.08/21 21:56分
  • [Edit]

Re: NoTitle

ありがとうございます。
後ほど伺わせて頂きますね。
  • posted by 琳架
  • URL
  • 2013.08/21 22:21分
  • [Edit]

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