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11/20 レモンバーベナ 「広い心」

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拍手SSの再掲です。

11/20 レモンバーベナ 「広い心」
塩の街 秋庭×真奈


「捨てて来いっ!」
「嫌です!」

 ああ、この攻防戦は何度目だろう。いつしか塩と化してしまうかもしれぬこの世界の中で出逢い、拾われ、このままこの家に居着いてから……。

「解ってんのか、これで何度目か!?」
「だってほっとけないじゃないですか!」

 真奈が瀕死寸前の犬や猫を拾って来るのは今に始まったことではない。人を拾ってきたこともある。その度に秋庭は「捨てて来い」と言うけれど、真奈が聞いた試しはない。

「もーいい、とっとと入れ!」
「はい!」

 満面の笑みで返事をすれば、「はああ」とこれみよがしな溜め息が背後で聞こえた。

「秋庭さん、溜め息つくと幸せ逃げちゃいますよ?」
「溜め息つかせてる張本人が何を吐かしてやがる」

 まったく、とぶつぶつ毒づきながら、秋庭は台所へと消える。戻ってきた時には、水を張った小さな器を片手に持っていた。

「秋庭さん……」
「ほら。水、飲めそうか?」
「多分……いえ、どうでしょう」

 とにかくやってみなければ。真奈が抱くがりがりに痩せた猫の鼻先に、秋庭が器を寄せてくれる。水の匂いに気づいたのか、はたまた弱々しく開いた瞳で認識したのか、猫はひどくゆっくりした動作で口を開け、舌先で水を舐めた。

「舐めましたよ、秋庭さん!」
「見りゃ解る」

 ぴちゃ、ぴちゃ、と、ほんの少しずつ水が減っていく。その様子がとても嬉しい。

「ありがとうございます、秋庭さん」
「何がだ」
「この子に優しくしてくれて」
「別に……」

 照れているのかぶっきらぼうな秋庭の態度に、真奈はくすくすと喉の奥で笑う。

「お前が来てから、俺の心は海よりも広くなったような気がするぞ」
「私が来る前から、秋庭さんはそうですよ?」
「知らないだろーが」
「でも、解ります。だって私を助けてくれたじゃないですか」

 いつ塩になってしまうかも解らないこの世界で、他人なんかどこ吹く風のこの世界で。真奈を見つけて、助けてくれたのは秋庭だけだったのだ。

「秋庭さんは優しい人です。ね?」
「……お前もな」
「え、何かいいました?」

 小さく呟かれた言葉が聞き取れなくて訊ねたけれど、「何も」とぶっきらぼうな短い言葉が返ってきただけだった。


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