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11/19 ヤマラッキョウ 「つつましいあなた」

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拍手SSの再掲です。

11/19 ヤマラッキョウ 「つつましいあなた」
桜涙 藍里→朱里



「……こんなところに、ずっと……いたんだね。一人で……」

 未だ朱里が目覚めぬ中、それでも起きた時に帰る場所を作るために、離れから元の朱里の部屋へ荷物を移したのは先程の事。明日は朱里のための服を買いに行くのだと、両親は張り切っていた。

(無理、してなければいいけど)

 藍里はいい。朱里と同じ、人ならざる能力を持っていることを自覚したから。だが両親は違う。二人とも普通の人間だから……人ならざる能力に怯えるのは、無理からぬ事だと思う。
 だけど両親は、眠る朱里の頬に触れた。額を撫でた。まだ恐怖が消えたわけではないだろうに。

(でも……)

 朱里の目覚めを心待ちにしている両親の姿をこの目にしているのも事実だ。

「朱里ちゃん……」

 すべてが移動したり、処分したりして何もなくなった部屋で一人、藍里は朱里の名をぽつりと呼んでみる。
 かつてここには質素なベッドと、古い木机。クローゼットの代わりだったチェストと、申し訳程度の本棚。食器も、茶碗に箸、少し大きめの皿、汁椀とマグカップ、コップが一つずつあるだけだった。
 本当に、必要最低限の生活をしていたのだ。両親が渡していたお金にも、あまり手がつけられていなかったと聞いている。

「早く起きて……?」

 みんな、待っているのだ。藍里も、竜城も、一海も。両親や伯母も、朱里が目覚めるのを待っている。
 起きたら色んな事を一緒にやろう。いっぱい楽しいことをして、いっぱい笑って。
 つつましく過ごしてきた彼女はきっと、同年代の女の子の楽しみを知らないだろうから。

「藍里? どうしたの?」
「お母さん」

 藍里の姿が見えないから探しに来てくれたのだろうか。きっと朱里には、今まで一度もしなかったであろう行動に、藍里は少し、胸が痛む。

「春とは言え冷えるわよ。明日、藍里にも買い物付き合ってもらうんだから」
「やっぱり行くの? 朱里ちゃん起きてからのが良くない?」
「ダメよ、朱里をびっくりさせるんだから!」

 楽しそうに笑う母を見て、藍里は心の中で朱里に呼び掛ける。

(きっと、大丈夫。だよね?)

 朱里の目覚めは近い。そんな気がした。


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