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暁のヨナ その言葉がこんなにも

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 言葉に含まれる、その想いに……。


「ハクのバカ!」
「バカとは心外ですね。姫様よりは現実を見てますよ」
「それが現実でも、私はお前を手放す気はないわ!」

 先程までは言い返せたはずの言葉達を、思わず飲み込んでしまう程、鋭くハクを射抜く、涙に濡れたヨナの瞳。真っすぐに見つめられて、ハクはそっと視線を外した。

(ったく、この姫さんは……)

 何が一番いいのか、ヨナにだって解っているはずなのに。

「……面が割れてるのは俺だけなんですよ」
「解ってる!」
「ここで姫様が出たら……何の為に俺達はここまで来たんですか」
「解ってるわ! でもだからって、ハクを囮にする理由にはならないでしょう!?」

 城の兵士に囲まれているこの状況で、ハクが言っていることが一番正しいことは解っている。ユンは戦闘に向いていないし、キジャ達四龍の存在を、今はまだ知られるわけにはいかないのだし、ヨナが出ていくなんて以っての外。

(解ってる……! でも)

 今、ハクと離れるのは怖い。四龍を信じてないわけではないのに、それでも、ハクの存在が、ヨナにとっては……。

「……命令よ、ハク。今、あなたが囮になることは許さない」

 本当は、命令なんかで縛りたくない。だけど、ハクを納得させられる理由も、言葉もないヨナに出来るのは、主従という立場を利用することだけだ。

「……命令、ですか……」

 けれど、今回ばかりはその命令に背かざるを得ない状況なのだ。ハクはため息をついて、ヨナを諌めようと口を開く。

「今回ばかりは、聞けません」

 相手は城の兵士達。かつてはハクと共に緋龍城を守っていた人間もいる。そして、その事実が指し示すのは、それだけの手練れでもあるということだ。だからこそ、聞けない。

「ハク!」

 声をあげるヨナの前に、ハクは片膝をついて頭を垂れた。

「……いかなる罰も叱責も、覚悟の上で申し上げております、ヨナ姫様」
「……やめて」
「どうか、お聞き入れを」
「やめて!」

 慇懃すぎるほどの口調は、仕える者としては当然のもの。つい先刻、主従という関係で縛ろうとしたくせに、ヨナはそれが嫌だった。
 ハクは、その姿勢のまま動かない。ヨナも、これ以上何を言えばハクを止められるのか解らない。

 糸が張るような緊張感が砕けたのは、シンアの一言だった。

「見つかる」

 瞬間、ハクと四龍の気配が鋭利なものに変わる。

「ちっ!」
「ハク、だめ!」
「ユン、姫さん頼んだ!」

 行かないで────。そんな言葉さえ言う間を与えず、ハクの体は城の兵士に向かって駆けていく。

「ハク……!」

 城の兵士達の声が聞こえる。ハクを追い掛ける声。そして、恐らくハクの大刀が、振り下ろされる音……。

「キジャくん、シンアくん、後を頼むよ」
「ジェハ? そなたまで行く気か!?」
「僕なら暗器で影から攻撃出来るからね。ハクの援護にはぴったりでしょ」

 そう告げた後、ジェハはヨナの前に屈み込み、優しく頭を撫でた。

「だからヨナちゃん、そんな不安そうな顔してちゃダメだよ」
「え……」
「じゃ、行って来るね」

 ジェハが龍の力を持つ脚で飛んでいく。その様を虚ろな瞳で追っていると、ユンがヨナの両肩をグッと抱いた。

「大丈夫、ヨナ。信じよう」
「ユン……」
「不安は災いを呼ぶ。娘さんがそんな顔してたら、勝てるものも勝てない」

 何よりハクは、ヨナを守るために戦っているのだから────。
 そんな言葉が、間近に据えられたユンと、隣に立つゼノの瞳から伝えられた気がした。

(今の私に出来るのは、信じること)

 ハクを、ジェハを信じる。絶対的に守られる事を信じるのではなくて、彼等が無事にヨナの元へ戻ることを、信じる。
 不安で虚ろになっていたヨナの瞳に、力強さが戻り、ユンはホッと息をついた。
 ヨナは両手を祈るように組み合わせ、ただハクとジェハが戻るその時を待ち続けた。

「……終わった」

 シンアがそう告げたのは、どれくらいの時が経ってからだろう。とても長い時間にも思えたけれど。

「……姫様」

 待ち望んでいた声が、耳に届いた。

「ハ、ク……」
「姫様?」

 片膝をついて、覗き込んで来る顔。頬に僅かな傷を見つけて、ヨナはそっと指先を伸ばした。

「……馬鹿……」
「さっきから馬鹿馬鹿と……え?」

 伸ばした指先は、ハクの肩の生地をぎゅっ、と握り。

「バカ……っ!」

 その指先に、力を込めて体を引き上げ。

「ばかぁ……」

 ハクが無事なことを確かめたくて、彼の首に両腕を回して抱きついた。

「ひ、姫様!?」
「おやおや」

 ヨナ自身、恐らく無意識であろう行動に、キジャが慌てて、ジェハはニヤニヤと笑っている。ユンは安堵したように息をつき、ゼノは穏やかに微笑んで。シンアはその仮面の奥で、透き通る瞳が微かに和んだ。

「……っ」
「姫さん?」

 小さな嗚咽が耳に届いて、ハクはそんなに心配をかけたのかとヨナの顔を見ようとした。しかし、思いの外ヨナの腕の力は強くて離れない。

「ハクのバカ……!」
「……はいはい、もう馬鹿でいいですよ」

 少し伸びた暁の色の髪をそっと撫でて、華奢な体を抱きしめる。
 彼女の「馬鹿」という言葉の中に、確かに含まれているハクへの想い。それがどんな形であったとしても。
 その言葉が、こんなにも愛おしく感じるのだから。


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