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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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頂き物 「透明硝子」

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「空想 i 」の朱音さまから誕生日のお祝いSSを頂きました!
『明るき陽の光を』のヨウとコーリです。

 追記からどうぞ。


 夜空に浮かぶ三日月。
 その切っ先は鋭く光り、様々な物を切り裂きそう。恋人同士の仲も、確かに想い合っているはずの心さえも……。
 大きな窓から見えたお月様に有り得ない想像をしてしまうのは、私の心境が影響していることは分かっている。だからこそ、零れかけた小さな溜め息を飲み込んでから、書棚に向かっていた身体を反転させて彼を盗み見るの。
 積み重なった書類の束を傍らにペンを走らせているヨウくん。時折聞こえる「どうしたもんかな……」との独り言。少しばかり苛立った様子で頭を掻いている姿に、肩を竦めてしまう。
 ここ最近、いつにも増してお仕事が忙しいから、溜まった疲れのせいで冷静な判断も難しくなっているんだろうな。気分転換のために淹れたコーヒーだって、時間の経過と共にただ寂しげに湯気を消しちゃったくらいだし。
 普段はあんまりお手伝いをすることは無い私が、どうしてヨウくんの部屋で処理の済んだ書類のファイリングなどの雑用をこなしているかと言うと、夕方のやり取りを思い出す必要がある。

「あっ、透子! 探していたのよ」
「泪ちゃん? どうしたの、何かあった?」
 レインとユミとのお茶を終えて、部屋へ戻ろうと廊下を歩いていた時に泪ちゃんに声を掛けられたの。
「うん。実はね、明人くんのお仕事を手伝ってあげて欲しいの。どうも彼はお疲れみたいで、私がからかっても『あ? あー、うん』とか言って、手ごたえの無い返事をするのよ」
「えっ……、そうなの?」
 驚いた。いつも言い合ってばかりの明人くんと泪ちゃんが喧嘩をしなかったことにも驚いたけれど、私は明人くんがそんなにも多忙さを抱えているとは知らなかったから。
 泪ちゃんは私よりも彼のことをきちんと見ているんだと知って……少し落ち着かなくなった。
 何だかんだ言って、二人が仲良しなのは知っている。お互いに想う気持ちは恋愛感情じゃないことだって分かっている。
 だったらどうして……心は曇るのかしら。

 分厚いファイルの表紙をぱたんと閉じて書棚に戻したと同時に、さっきから堪えていた溜め息がふと漏れてしまった。
 泪ちゃんは本当に明人くんのことを良く知っているし、見守っている。口喧嘩するにしても二人は対等で、年齢や身長差など、どこを取ってもバランスが良くて。
 ぽつりと零れた言葉。二人の仲を羨ましがった時、毎回のように浮かべてしまう疑問。
「……明人くんはどうして泪ちゃんを選ばなかったのかな」
 すると、背後でバサバサッと紙がなだれ落ちる音がした。驚いて振り返ると、目を大きく見開いて、顔を少し青くした人がこちらを凝視していて。
 わぁ、マスターは怖いと思っている死神仲間に、今のヨウくんの顔を見せてあげたい!
「今、何て言ったんだ?」
「明人くんはどうして泪ちゃんを選ばなかったのかな、って言ったの」
「いや、それはちゃんと聞こえたよ! そうじゃなくて、どう言う意味で今の言葉を口にしたんだ?」
「だって、明人くんと泪ちゃんはお似合いなんだもん。どちらかが何かを言えばもう片方が的確な返しをするでしょ? そこまで相性ばっちりなのに、どうしてくっ付かなかったのかなと思って」
「お前な……」
 呆れきった表情を浮かべながら、落とした書類を拾い集める彼。私もそれを手伝うと、意図せずに指先がそっと触れた。
 明人くんの気持ちは泪ちゃんじゃなくて、私に向けてくれていると知っている。こうして触れる彼の体温を、一番近くに感じられる存在は自分なんだって自惚れたい。
 だけど……たまに不安になる。私にとって大切な二人が、一緒になった方がしっくりくるんじゃないかと思ってしまう。
「透子?」
「もしもの話だよ? 泪ちゃんと私が逆だったとしたら、明人くんは私と言い合って、そして泪ちゃんとくっ付いてたのかな?」
「いや、それは無いだろ。って言うかその場合、俺は八歳も年下な泪花の面倒を見ない、悪いお兄さんになってただけだと思うぞ」
 悪戯っぽく笑いながらの言葉に、一瞬きょとんとしちゃう。
 私にとっては優しいお兄さんだったのに、相手が泪ちゃんになると面倒を見ないの?
 そうは言っていても、足元で駄々をこねる泪ちゃんに根負けして最後には抱っこしてあやしてあげているんだろうな。
 そんな場面を想像して、思わず込み上げる笑み。手を口元へ持って行ってくすくすと笑っていると、その手を軽く掴まれてふわっと抱き寄せられた身体。
「あ、明人くんっ?」
 突然の抱擁にびっくりして、腕の中で解放を求めてみるけれど放してくれる気は無いみたい。それどころか、もがけばもがくほど腕には力が込められる。
「さっき言ってた、俺が泪花を選ばなかった理由な? それは、透子を選んだから。年齢差なんて飛び越えて、俺が好きになったのは透子だったから」
 耳元で聞こえた低い声での答えに、じわじわと熱くなる頬。照れ臭くて、落ち着かなくて、でも幸せが満ちて。
「こんな簡単な理由じゃ納得いかないか?」
 降り注ぐ温かい声に、首を左右に小さく振る。心に咲いた感動を素敵な言葉で表したいけれど、置き換えてしまうと私の本心では無くなりそう。
 だから、緩んでいく口元のまま一言だけ伝えるの。
「ありがとう……」

 生前から続く兄妹のような関係じゃなくて、今や私達は恋人同士になれたんだよね。明人くんの言葉で、事実を改めて実感出来たことが嬉しい。
 手を掴んでいた指先が軽く顎を捉えて、促されるまま顔を上げると、窓から再び見えた三日月。
 さっきはその姿を見て不安になったけれど、唇に触れた優しさが恐怖をどこかへ飛ばしてくれたから。
 レインとユミも、泪ちゃんとアクアも、そして明人くんと私も。強い想いで結ばれている二人は、鋭い切っ先を持ってしても引き裂けないと信じたい。



 あえて明記してはいませんが、昨日は私の誕生日でした。そうしたら、いつもお世話になっている「空想 i 」の朱音さまが雨弓(というか明陽?)のSSを書いて下さったんです! では、感想行きます!

「透明硝子」。まずこの言葉に惹かれました。朱音さん曰く『透子と明人、二人の名前で透明。そして硝子のように繊細な透子の心は時に曇るけど、それを明人が拭えば透明に戻る』そうです。
 が、私は最初にタイトルを見た時、透子と明人の間にある透明な硝子=泪花、だと思っていました(笑)下手をすると、透子は明人より泪花の事が大好きですし、透子にしてみれば明人と対等な泪花に嫉妬もしますしね。決してお互いを見るのに邪魔はしないけれど、触れようとすると邪魔をする、みたいな感覚で。……やっぱ最強は泪花かしら?

 コーリにヨウの手伝いをするように頼みに来たショウカ。って、ショウカさん? ヨウは忙しいんだから、からかうんじゃないの(苦笑)まぁ、普段のヨウならショウカに応戦してますからね……しかも楽しんで。
 ショウカからヨウの様子を聞いた事で、ちょっとだけ嫉妬してしまうコーリ。その後のコーリが呟いた台詞に青い顔をしたヨウの姿が笑えました。「そんな空恐ろしい事言うなよ……っ!」とか思ってたのかな? 明人にとっては本当に、泪花は妹で、ケンカ友達ですから。
 泪花と透子の立場が逆転していたとしても、明人は透子を選んでいたと思います。書いてある通り、幼い泪花の面倒を一緒に見てたでしょうね。そしてやっぱり「透子ちゃんは泪花のなの!」とか言われて結局泪花に邪魔されてそうな……気が、すごくするのは何故だろう?
 最後は甘々な二人に大満足です♪ けど、仕事中だって事すっかり忘れてるんだろうなぁ……。と思ったら、おまけ小話が出来ました。

「マスター、追加資料を受け取りに……っ!?」
 ノックはしたが、ヨウの返事を待たぬ間に開けられた扉。けれどヨウはコーリを離してはくれなくて。
(ヨウくん……っ)
 塞がれた唇の代わりに、力が抜けそうな手で背中を叩いてみるけれど、後頭部に回った彼の手は、コーリを強く引き寄せたまま。
「お、……お邪魔しました!」
 暗がりでも解るほどに顔を赤らめたユミが扉を閉めた後、やっとコーリは解放された。
「ユミ、顔真っ赤だったな?」
「あ、当たり前でしょ!?」
「ははっ、お前も顔真っ赤」
「~~~ヨウくんっ!」
 ドン、と握った拳でヨウの胸を叩くも、彼はびくともせずに、穏やかに笑うだけ。
「……不安な時は、ちゃんと言えよ?」
 抱き寄せられて、そっと髪を撫でる手が優しい。
「ヨウくん……?」
「例えば俺が泪花と距離を置くって言ってもさ。お前、俺が泪花と喋らなくても不安になるだろ?」
 昔、明人と泪花がしばらく口を聞かなかったことがある。その時、透子は大好きな二人が険悪なのがとても、とても嫌で。未だに喧嘩の理由は知らないけれど、透子が泣きそうなくらい顔をくしゃくしゃにして「仲直り、して?」とお願いをしたくらいだ。
 答えないコーリに、ヨウは「やっぱりな」と息をついた。
「大丈夫だから、……信じてろ」
「ん……」
 こて、とヨウの肩に額を寄せる。温かな腕に身を任せて、瞳を閉じ……。
「って、ヨウくん仕事!」
「んー、今はコーリのが大事」
「だ、ダメだってば、もう!」
 この腕から抜け出さなければ。そう身をよじった時、死神を統べる者の部屋の扉がものすごい勢いで開かれた。
「明人くんっ!」
「お? 泪花」
「る、泪ちゃん助けて……」
「もうっ、ユミが顔を真っ赤にして帰ってきたから何事かと思えば……!」
 カツカツと靴音を鳴らして近づくショウカの手がコーリに伸び、ヨウは先程までの強い抱擁が嘘のように、あっさりと愛しい彼女の体を解放した。
「イチャイチャさせるために、透子を差し向けたわけじゃないんだからね!?」
 大事なものを守るかのようにコーリを抱きしめるショウカに、「解ってるよ」とヨウが笑いかける。
「一応、心配してくれたんだろ?」
「心配なんかしてないわよ」
 口ではそういうけれど、ショウカの瞳がそっと和んだことにコーリは気付いた。
 きっと、ショウカが来た時のヨウは、こんな風に笑わなかったのだろう。
「せっかく来たんだ、お前も手伝え」
「え、嫌よ!」
死神を統べる者マスター命令。そこで様子窺ってる三人もな!」
「げ」
「うわ」
「あ、あはは……」
 結局5人で死神を統べる者マスターの仕事を手伝う羽目になり。前倒しで翌々日までの大きな仕事をも片付け、ヨウとコーリが久々のデートに出掛けるのは、数時間後の話。



 きっと飽きることなく、この子達は一緒にいそうな気がします。
 三日月だけではなく、どんな刃物でも引き裂く事の出来ない、強い絆を紡いでいくでしょう。例え、転生したとしても。

 朱音さん、素敵な誕生日プレゼントをありがとうございました!
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