Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

震災SS いつか……

TOPへ 東日本大震災と福島第一原発事故 目次

【注意!!】
 今日で、震災から2年が経ちました。
 何か変わったのか、何も変わっていないのか解らぬまま、時間だけが過ぎていくような気がします。
 先日聞いた、「軽々しく『福島に来て』とは言えなくなった」というお話を思い出して、ちょっと書いてみました。
 ある意味綺麗事(?)ですので、ご不快になられる方もいらっしゃると思います。お嫌な方はこのままトップページにお戻りください。












(あれから、2年。か……)

 テレビでは、震災の特集が放送されている。けれど彼は、それから目を逸らした。

「どうしたの? ……見るの、辛い?」

 去年は、彼から彼女に会いに行った。けれど今年は、彼女から会いに来てくれた。去年の彼と同じように、ケーキを持って。

「いや……。ただ、やるせないだけ」
「え?」
「2年が経っても……原発の被害はまだ続いてるから」
「そうだね……」

 福島原発は、廃炉に向けて動いてると言われているけれど、彼と彼女が住む関東圏では、あまり情報は流れない。彼の実家に聞くと、「まだまだ終わらないよ」とため息をつかれてしまう。

「……来週、帰ろうかと思ってる」
「実家に?」
「うん。だって俺の地元、大分放射線量下がったし。まぁ、公式発表を信じればだけど」
「……ご家族に怒られないといいね」

 一年以上、帰って来るなと言われ続けた彼を知っている彼女は、くすくすと笑った。

「そこで暮らしてる姉貴に言われたくないっつーの」

 開き直ったように宣言する彼が、どれだけ家族を心配しているか、彼女は知っている。

 遅々として進まない、放射性物質に汚染された震災瓦礫の処理。岩手や宮城の瓦礫の処理に反対する人々が放送される度、彼は苦しげな顔をしていた。

『気持ちは解るんだ。だけど……それよりももっと高い線量に囲まれてる人間もいるんだって思うと、な……』

 そう告げた、彼のとても淋しげな瞳を覚えている。
 彼の言っていることも解るし、瓦礫受け入れを反対する気持ちも解る。何も言えなくなった彼女に、彼は仕方ないよと笑ってくれたけれど。
 彼女は、福島を知らない。彼から聞いた話でしか、現状を知らない。だから。

「……私も行こうかな」
「は!?」

 何を言い出すのかと、彼は目に見えて慌てた。

「ば、連れていけるか!」
「どうして?」
「だって、福島だぞ!? ただでさえ敬遠されてるのに」
「でも、君は行くんでしょ?」
「俺は帰省! お前は違うだろ」

 元から福島出身の彼と、彼女は違う。帰省している間、例えばまた原発事故が起こったとしても、彼の場合はそれも覚悟の内だ。しかし、彼女は……。

「……お前に何かあっても、俺は、責任が取れないんだ」

 彼女が彼の地元へ行けば、少なからずとも被曝する事になる。食べ物だって……安全と言われてはいるけれど。
 どこまでが安全で、どこからが危険なのか、2年が経った今でも解らない場所へなんて、連れて行けない。

「言ってることが矛盾してるよ? さっき自分で言ったじゃない、線量も下がって来てるって」
「そうだけど!」

 矛盾していることは解っている。だけど、軽々しく「じゃあ行こう」なんて言えるはずがない。

(ああ、そうか────)

 だから家族は、帰って来てはダメだと彼に言うのだ。
 何も解らない。確定していない。地元から離れている彼でさえこんな風に考えてしまうのだから、地元にいる家族だって考えるだろう。

 何をどう言えば、彼女は諦めてくれるだろう……。そう考え込む彼に、彼女は、にこりと笑って彼に寄り添った。

「……考えてくれて、ありがと」
「え?」
「あんまり悩ませたくないから、今回は黙って見送ることにする」

 彼女の言葉に、彼は大袈裟なほどに胸を撫で下ろした。

「だけどいつか、連れていって欲しいな」
「……いつになるか解らないけど、お前がその時まで行きたいと思ってくれてたら、な」

 何年後か、解らないけれど。それでもいつか、彼女を連れて帰れたら……。そう、思った。



TOP
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR