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暁のヨナ 代償

暁のヨナ 目次 二次創作Index

「命じる」という手段の代償は。


「ハク。剣を教えて。命令よ」
「仰せのままに」

 そう言って目の前で跪いたハクを見て、ヨナは複雑な心境だった。

(こんなに簡単に……人を従わせてしまうのね)

 今までヨナは、『命令』という行為をしたことがなかった。いや、自分が姫として『命令』出来る立場にあるとは解っていたけれど、その権利を行使したことはなかった。もちろんそれは、ハクがヨナを主と認めてくれるからこそ有効であるけれど……。

「……ハク。どうして今、命じろと言ったの」
「俺の反対を押し切ってでもやりたい事なら、命じるしかないってお教えしたまでです」
「でも、今までは『お願い』だったのに……」

 そこまで口にして、ヨナは気付いた。『お願い』でもハクが動いてくれたのは、彼が自分を甘やかしていたという証。そして今、『命令』という手段を教えた意味は……。

「……言葉の重みを、知れと言うこと……?」
「そうです。ご自分の言葉が人を従わせる。言葉一つで人が動く。これからは、姫様に必要となる覚悟ですから」

 四龍を全て集めたその先に待つものを、ヨナも、ハクも知らないけれど。もう、何も知らない無垢そのものだった姫ではないから、ヨナが持つ権利を、それの使い方を、ハクは教えてくれたのかも知れない。

「……私は『命令』なんて好きじゃない」
「好きとか嫌いとかの問題ではありません」
「だって、おかしいわ。……ハクが、遠くなったみたいに感じる……」

 武器を取って戦おうとする度に。ヨナが決意を確固たるものにする度に。誰よりも近い存在だったハクが、どんどん遠ざかっていくような気がする。
 彼は、ここに、目の前にいるのに。心はどこか、遠くなってしまったような気がする。

「本当なら、これが主従の距離ですよ」

 今までが、近すぎたんです。そう告げるハクは、未だに顔を上げない。跪いたまま、ヨナと視線を合わせない。
 それが何だか少し淋しくて、ヨナは地面に膝をついた。

「従者だけど……違うでしょう?」
「何がですか」
「従者である前に、ハクは私の幼なじみでしょう……?」

 命令なんかで縛れない。縛りたくない。城にいた頃はこんな事、思わなかったのに。態度のでかい、ただの従者でしかなかったのに、今は……。
 従者というよりも仲間に近い。命じて従う関係ではなく、互いに志を共にする者。

「ハク……お願い、顔を上げて」

 自分でも、心許ない小さな声で願う。

「お願い、ハク……」

 僅かな静寂のあと、「ったく……」と深いため息が聞こえた。

「……え……」

 膝とともに地面につけていた手を引かれ、踏ん張ることも出来ずにそのままハクの腕の中になだれ込んだ。

「……まだ、早かったみたいですね、姫さんには」

 耳元で、苦笑を交えながら呟かれた声が、何故か少しの安堵を含んでいるような気がした。

「それでも、あんたは俺の主だ。……それを、忘れるな」

 その言葉は、どこか突き放されているようで。また、ハクが遠ざかってしまいそうで、ヨナはハクの外套をぎゅっと握り締めた。

 雑魚寝している仲間の元に戻っても、ヨナはハクの隣にいることを望んだ。もう策略を練る必要はないと安心したのか、彼女はすぐさま眠りの中に引き込まれた。

「君は彼女を、どうしたいんだい?」
「……やっぱ着いてきてやがったか」

 静かに起き出したジェハに訊かれ、ハクは苦虫を噛み潰したような顔をした。何となく気配はしていたけれど、ヨナに気を取られていて、そのままにしていたのだ。

「ハクを見ていると、あえて従者でいようとしているようにしか見えない。……そのくせ、時折ヨナちゃんの幼なじみに戻ってしまう。『命令』という手段を教えたのは、距離を遠ざけようとしたからかい?」

『……ハクが、遠くなったみたいに感じる……』

 ヨナのその感覚は、あながち間違いではない。ヨナが力を欲すれば欲するほど、守るべき姫だと否応なしに認識させられる。力を欲するということは、それだけ危険な事を知っているから……どんな窮地からもヨナを守り抜く為には、私情は捨てざるを得なくなる。絶対的な忠誠心を以って。

「君は、離れちゃダメだ」

 いつもの口調とは裏腹に、真剣なジェハの瞳が暗闇で光る。

「君が従者であろうとしても、ヨナちゃんは『主』としての自覚が足りない。君からヨナちゃんを離しては、ダメだよ」
「……言われなくても」

 この手を離せるのなら、とっくに────。

「まぁ、例えハクがヨナちゃんを離したとしても、しっかり僕がヨナちゃんを受け止めるから心配はご無用────、うわっ!?」
「とっとと寝やがれ変態タレ目」

 立て掛けていた大刀を、ジェハの鼻先に突き付ける。その瞬間こそ目を見開いたジェハだが、それ以上の追撃がないと知ると、ふっ、と笑った。

「ハクもちゃんと寝るんだよ。眠れなくてもね」

 ハクに寄り掛かるように眠る、暁の髪の姫に視線を移す。無防備に、ハクを信用しきって安心した顔で────。

「……どーやって寝ろっつーんだよ」

 想いを寄せる女が傍にいて眠れるわけがない。一人ごちたハクの言葉に、ジェハが必死に笑いを堪えていた。


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