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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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虹霞~僕らの命の音~ 白銀の欠片

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お礼SS
朱音さまの小説「虹霞~僕らの命の音~」の二次創作です。



 静かに 静かに舞い降りて 全ての音を閉じ込めて
 何故かざわめく この胸の音さえも

*****

「時雨さん、六耀さん!」

 聞き覚えのある声に呼ばれ、時雨と一緒に六耀も振り返った。

「ん? ああ、風美か」
「こんにちは! 時雨さん、最近本のご注文がありませんけど、もしかしてお勉強に飽きられました?」

 もちろん、自覚はなくとも勉強熱心な時雨は、そんなわけないだろ、と笑う。

「今は城の書庫にあるのを読んでるんだ。それで欲しいのがあったらまた頼みに行くよ」
「はい、お待ちしてますね! それでは、また。六耀さんも、お暇でしたらいらして下さいね?」
「え、あ、……うん……」

 六耀の返事に、風美はにこりと笑うと、踵を返して去っていく。

「忙しいなぁ、風美も」

 そう言って笑う時雨の顔が、何だかいつもよりも柔らかく映るのは、眩しいくらいに照らす太陽の光のせいだろうか。

(……?)

 何故か、胸が軋んだ。思わず握り締めた拳で、胸を押さえる。

「……六耀、どうした?」
「……別に、何もないよ?」

 そう、ただほんの少し、胸が軋んだだけ。どうして軋んだのかは、解らないけれど。

 それ以来、街で、時には城の中で、風美の姿を良く見かけるようになった。いや、今までだって風美とは良く会っていたのだけれど、やけに目に付くようになったのだ。時雨だけではなく、桜や春雷と笑う彼女の姿を。

「あ、フーちゃんっ」
「いらっしゃいませ、風美様」
「こんにちは、桜様、春雷さん」

 言葉を交わす三人の視界に入らない場所で、六耀は立ち竦んでいた。

「どうしたのー? トキに用事?」
「ええ、ちょっと。どちらにいらっしゃいます?」
「この時間なら、書庫にいると思うよ~。みんなでお茶でもしようって、今からトキとリクを迎えに行くの。フーちゃんも行く?」
「お邪魔でなければ」
「じゃ、行こー!」
「……っ!」

 連れ立って、こちらに歩いて来る三人から、六耀は反射的に身を隠した。

(な、何で?)

 春雷は六耀も迎えに来ると言っていた。姿を現して合流すれば手間も省けたのに……何故、隠れてしまったのだろう?
 桜達が立ち去った後も、六耀はその場を動かなかった。否、動けなかった。
 いつもなら楽しみなお茶の時間に、行きたくないと思ってしまった。

「ん? 六耀か?」
「と、時雨……っ!?」
「な、何だよ、そんな驚かせたか?」
「……ごめん、違うんだ……」
「……どうした?」

 様子のおかしい六耀に気づいたのか、時雨が顔を覗き込んで来る。
 どうしたんだろう。六耀にも解らない。

「……僕にも、解らない……。言葉に、出来ないんだ……」

 解るのはただ、風美がいる時にだけ胸が軋むということだけ。彼女が時雨といても、桜や春雷といても、六耀は胸がざわめく。
 風美といると、彼女の明るい雰囲気のせいか、皆が笑顔になる。笑顔になれないのは、六耀だけだ。

「六耀……?」
「……桜達が、探してたよ? お茶にしようって」
「そっか。六耀も行くだろ?」
「ごめん、僕は行けない……。何だか体がだるいんだ、部屋で休んでるよ」
「え、大丈夫か? 部屋まで送るか?」

 時雨の申し出を断って、六耀はそのまま自室へと戻り、ぱたんとベッドの上に横になった。

「何なんだろう……」

 ざわめく不安。そんな感情を持つ必要などないのに……。
 胸の裡に抱えたものを振り払うように、六耀はギュッと強く瞳を閉じた。

「え、あれ……?」

 何だか妙に外が明るい。夜を通り越して翌日になってしまったのかと窓から外を見ると……目に映ったのは、白銀の世界だった。

「雪……? いつの間に降ったんだろう」

 窓から見える椿の木の、四分の一が埋もれるなんて。六耀が眠っていたのはたかだか数時間だったのに。

「あ、リクー! 起きた?」
「体調はいかがですか、六耀さん」
「ハル……と、風美?」

 呼ばれて視線を移した六耀が見たのは、雪だるまや雪うさぎに囲まれた春雷と風美の姿だった。

「リクも作ろー!」

 ぶんぶんと片腕を大きく振る春雷の笑顔に、風美がいる事で軋む胸の痛みは薄らぎ、六耀もつられて笑顔になる。

「やだよ、寒いもん」

 その時、背後の扉がノックされ、時雨の声が聞こえた。

「六耀、起きてるか?」
「起きてるよ、どうぞ。……って、何持ってるの?」
「ん? 雪うさぎ。可愛いだろ?」

 緑の葉で耳二つ、赤い小さな木の実で目を二つ。時雨の片手に乗る雪うさぎは、何らかの魔法がかかっているのか、溶けもせずに形を保ったままだ。

「ほら」
「わ」

 時雨の手から、六耀の手へ。慌てて差し出した手の上で、雪うさぎの形がどんどん崩れていく。

「え、何で……っ」
「あ~、やっぱ研究が必要だな、うん」

 予定ではもう少し長く保つはずだったんだけど、と苦笑する時雨とは反対に、可愛い雪うさぎの形が崩れていくのを淋しげに見る六耀。けれど、その形が崩れていくと同時に、中から何かが現れるのに気付いた。

「……何か、入ってる……?」

 氷のように透明。けれど、六耀の掌の熱でも溶けない、何か尖った形の……。
 やがてすべての雪が溶け、緑の葉と赤い小さな木の実が2つずつ。そしてもう一つ残ったのは……。

「時雨……これ……?」

 本で、肉眼で、見たことがある。雪の結晶の形を模した、直径2cm程のペンダントがそこにあった。

「……雪はさ、全部覆い隠してくれるだろ?」

 降る時は、全ての音を閉じ込めて。綺麗なものも、汚いものも、降り積もれば白銀に変わる。

「言葉に出来ないもの、閉じ込めてくれるかもしれないから」
「え……」
「いいことも、悪いことも。……雪が解け出す頃には、いいことは胸に残って、悪いことは……一緒に流れて行ってくれるよ」

 今は言葉に出来ない感情も、時間が立てば口に出せるかもしれない。どんなものも、受け入れられるかもしれない。時雨は、そう言いたいのだろうか。

「水晶には浄化の力があるし。俺が持ってるより、六耀が持ってた方が良いと思ったからさ」
「……いいの?」

 こんな綺麗な物を貰っていいのかと問いかければ、もちろんという言葉と共に笑顔が返ってくる。

「……ありがとう……」

 雪の結晶を象った水晶のペンダントを、両手でそっと握り締める。
 まるで祈りを捧げているかのようなその姿に、時雨は思わず手を伸ばして、六耀の髪をそっと撫でた。



 もう既に過ぎてしまった事ですが、とある事に対して頂いたコメントがすごく嬉しくて、お礼にとまた虹霞のSSを書かせて頂きました。
 朱音さん、その節はありがとうございました!

 朱音さまのみお持ち帰り可です。
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