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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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雨の弓 【続・Holy Night 3】

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クリスマスSSのその後です。
※レイン×ユミ


「わぁっ、みんなすごーい!」

 それぞれの名に因んだ能力を組み合わせて出来る光景に、ユミはすっかり虜になっていた。

「あっ、カナミちゃんだ」
「カナミ? って誰だ?」
「私と同期で、こないだ初めてお話したの。奏でる水って書いて、奏水」

 余興に出られるかもって聞いてたから、見たかったの! と告げるユミの言葉に、レインがだからか、と呟く声が聞こえた。
 マスターとコーリは外に抜け出し、アクアとショウカも酔いを覚ましてくると席を外し。そろそろ部屋に戻ってゆっくりと二人になろうかとレインに促されるも、ユミは「もうちょっとだけ」とこの場を動かなかったのだ。
 カナミが操る水が弧を描き、照明の光で虹色に輝く。そこに花を生み出す死神が、小さな花を呼び出して、花びらが流れる川面のように見えた。

「すごいすごいっ」

 ぱちぱちと思わず拍手をしていると、頬にそっと触れられた。

「レイン?」
「そうだよな……。『ひかり』はずっと、暗闇を生きてきたんだもんな」

 確かに、死神となった今だからこそ、この瞳でいろんなものを見られるのだ。現世では見られなかったものも、全て。けれど。

「目が見えなくても、綺麗なものはたくさん見えてたよ?」
「え……」
「そりゃ、同情とか、哀れみとか、たくさんあったけど……ふとした時に助けてくれる人の気持ちとか、ずっとそばにいてくれた真澄ちゃんの気持ちとか。……暗闇ばかりじゃなかったよ?」

 目が見えない分、人の感情には敏感だったかつての自分ひかり。自ら命を絶とうとした事もあったけれど、目が見えなくても見えるものがあることに気づいた頃から、精一杯生きようと決めていた。

「それにね……」
「ユミ?」

 椅子に座っているレインに向かって身を屈め、彼の右目間際にキスを落とした。

「レインの……ううん、雫のこの瞳の色を、ずーっと覚えていられた」

 自分にとってとても大切だった人の瞳の色を、他の誰とも混ざることなく覚えていられた事が、ユミには何よりも嬉しかった。

「これからもっと、もっといっぱい、色んなもの一緒に見ようね!」

 こんな素敵なパーティーも、何気ない風景も。時には下に降りて、折々の季節を感じて。二人で過ごせなかった時をやり直したくて、ユミは死神になったようなものだから。

「ああ。昔見られなかった物も、たくさん、な?」

 お返し、とレインがユミの髪の一房を引き寄せて、かつては閉じられていた両の瞼にキスを贈ってくれた。

「約束、ね!」

 花が綻ぶかのように、これからの時を夢見るかのように、笑うユミを抱き締めようとレインの手が伸びかけた時。

「ユミちゃーん!」
「あっ、カナミちゃん!」
「見てた!? どーだった?」
「すっごい綺麗だった! どれぐらい練習したの!?」
「えーっとねぇ……」

 先程まで舞台で技を披露していた、ユミの同期だという少女が現れて、あっという間に連れ去られてしまう。

(けど、ま……いっか)

 死神として生きる限り、ユミとはずっと一緒にいられる。これから先何度だって、クリスマスはやってくるのだから。
 とはいえ、部屋に用意したプレゼントはいつ渡せばいいのやらと、レインはそっと溜息をついた。

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