Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

雨の弓 【Holy Night】

雨の弓 目次へ 一次創作Index

出来るかな? と思ったら一日で書けたのでアップします。
でも少し消化不良気味……かもです。それでも良ければ追記からどうぞ。



「なぁ、ユミっていつまでサンタクロース信じてた?」

 脚立の上に乗ってリボンを壁に貼り付けていたレインが、傍で紙の花を作っているユミに訊ねた。

「ん~……幼稚園の年長までかな。両親から貰ったプレゼントが嬉しくて持ち歩いてたら、近所のお兄さんに『サンタクロースなんていないんだぞ』って言われて、『そんな事ないもんっ!』って言い返して泣いた覚えがある。コーリさんは?」

 細く切った折り紙を輪っかにしているコーリは苦笑しながら、遠い記憶を呼び起こす。

「私は結構信じてたわよ? 明人くんも泪ちゃんも、そんな意地悪しなかったし」

 それを聞いていたショウカが、本物のもみの木を使ったクリスマスツリーに綿を乗せながらクスクスと笑う。

「今だから言うけど、明人くんには私が釘刺したのよ。私も明人くんにバラされたクチだから」
「え、そうなの?」

 透子────コーリにとっては、生まれた時から面倒見のいい、兄と姉のような幼馴染み二人だったから、ケンカ三昧と言われてもいまいちぴんと来ないのだ。

「そうよ。だから前から言ってるじゃない、透子がいなかったら私と明人くんはケンカ三昧だったって。あ、ねぇアクアは?」
「俺はサンタってよりイエス様だな。キリスト教だったから。教会に行って讃美歌歌ったりしてたよ」

 ツリーに様々なオーナメントを飾り付けているアクアが笑う。

「しっかし、今年も大がかりだよなぁ……」

 一番広い大広間には、沢山のテーブルが用意され、そのテーブルには白いクロスがかけられて。ところどころに花籠が置かれている。

「一応俺達、死神なんだけどな」

 死神がクリスマスパーティー。どうにも毎年違和感が拭えなくもないが、結局楽しめれば何でもありなのだ。下の世界と同じように。

「私は初めてだからすっごい楽しみ!」

 余興とかもあるんでしょ? と、ユミが満面の笑みでレインを見上げ、レインはそんなユミの髪をくしゃりと撫でた。

「初めて一緒に過ごすクリスマス、だもんな」
「うん!」

 70年という歳月を超えて再会した二人にとっては、きっと想い出に残るクリスマスになるだろう。そんな二人を微笑ましく見ていたコーリに、アクアが話しかけてきた。

「コーリ、マスターは?」

 未だ姿の見えない、死神を統べる者マスター。その所在を訊ねられたが、コーリはさあ? と首を傾げた。

「まだ仕事してるんじゃない?」
「じゃない? って……呼びに行くとか手伝うとかしてやれよ……」

 ヨウとコーリ。かつての幼馴染みであり、今は恋人という関係ではある。が、一介の死神に過ぎないコーリが手伝える事は、本当に小さな事で。余計足手まといになっては意味がない。

「いーのよ、ヨウくんは。最後の最後で、コーリに甘えられれば」

 自分が、彼にとって甘えられる存在になっているのなら、素直に嬉しい。緩む顔を誰にも見られたくなくて、コーリは輪っかを繋げる指先に視線を落とした。

*****

『メリークリスマス!』

 今回の幹事となった死神の号令で、それぞれが持っていたグラスを一度掲げ、ぐっと飲み干す。その後盛大な拍手が会場を満たし、クリスマスパーティーが始まった。
 たくさんの料理が運び込まれた会場には、仕事を終えた死神達も次から次へと集まってくる。もちろん、これから仕事の者達も多々いるのだが、皆、一年に一回のクリスマスパーティーを楽しみにしているのだ。

「コーリさん、ショウカさん! 見てみて、この飴細工すごい綺麗!」
「わ……、すごい繊細……っ」
「ふふふ、こっちのサンタも可愛いわよ? トナカイも赤鼻になってるわ」

 繊細な飴細工とマジパン細工に、(見た目は)少女達の顔が綻ぶ。傍で見ているアクアとレインは、それぞれ自分の恋人に手を伸ばしかけるけれど、少女達はすり抜けるように別の飾りに魅入られて行ってしまう。

「……解ったろ、レイン。女の子達にとったら、俺達は飴細工以下だって」
「……ああ、よーく解った……」

 ユミと再会する前────去年までは、コーリとショウカがケーキやデザートの飾りに目を奪われても苦笑するだけで済んだけれど、今年は違う。
 愛しい恋人が、自分ではなく別の物に目を奪われている光景というのは、何とも情けなく、切なかった。

「お~、今年も盛大だなぁ」
「あ。マスター、お疲れ様です」
「お前らも準備お疲れさん。今年はユミがいるからか? いつもよりはしゃいでるみたいだな」
「はあ……すみません」
「お前が謝る必要はないよ、レイン。……俺と咲花、光梨にとって、この日を笑って過ごせるのは願ったり叶ったりだ」

 コーリが、否、かつての透子が命を終えたのは、クリスマスイヴである今日。死神として過ごした時間が長いとはいえ、あの日の記憶は三人の心にいつまでも消えないトゲとなって引っかかっている。
 だから、その日を笑って過ごせるのならそれでいい。そう、ヨウは笑った。

 レインは手近なテーブルからワインを取り、グラスに注いでヨウに渡した。

「それにしても……今年のケーキはでかいなぁ。ん? ……ケーキ、なのか?」
「コンセプトはクリスマスツリーだそうですよ?」

 今、少女達が見上げているのは、高さ一メートルほどの、大きさの違う土台を重ねたタワーのようなもの。その土台にはピックで一口大に切られたフルーツが差し込まれている。そのすぐそばにはチョコレートファウンテンがあり、コーリ達は喜びながらフルーツをチョコにつけて食べ始めていた。
 幸せそうに笑う恋人達を見て、知らずのうちに顔が緩む。

「……いつになったら気付くか、賭けるか?」
「賭けになりませんよマスター」
「声をかけるか捕まえるかしないと、ずっとこのままです」
「……だよな」

 せっかくのクリスマスだというのに、何故か色気より食い気に走っている三人娘は、食べる事とお喋りに夢中のようで。

「そろそろ置いてけぼりの俺達を思い出させますか」
「だな」
「ですね」

 手に持っていたグラスをテーブルの上に置き。あれ可愛い! や、これ美味しい! と、きゃっきゃと騒ぐ三人娘の背後にそっと近寄って、腕を伸ばして。

「わっ?」
「きゃ」
「……っ、レインっ?」

 コーリ、ショウカ、そしてユミ。それぞれの小さな悲鳴が混ざり合う。

「俺が来た事にも気付かないで何に夢中になってるんだ?」
「は、始まるまでに来ないマスターが悪いんですっ」
「そういう事をいう口はこの口か?」

 びよーん、とコーリの白い頬を指先でつまんで伸ばすヨウ。

「毎年毎年飽きもせずにはしゃぐんだよな、ショウカは……」
「だって可愛いものいっぱいなんだもの」

 抱き締められた事には微塵も驚かず、頭上から見下ろしてくるアクアにしれっと答えるショウカ。

「捕まえた」
「……捕まっちゃった」

 じゃれ合うように笑いあう、レインとユミ。

 聖なる夜は、まだまだ始まったばかり。


雨の弓 目次へ → 【続・Holy Night 1】
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。