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10/25 秋の野ケシ 「控えめ」

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10/25 秋の野ケシ 「控えめ」
桜涙 竜城×朱里


 いつもひっそりと生きてきた。藍里の影としてさえ、存在しないものとして、大気に溶ける空気のように、目立たぬように息を殺し、行動のすべてを控えめにして。

(……私は、存在してはいけないモノ)

 人ですらない。ただ、人の形をとっているだけの化け物。……そう、認識しているのに。

(どうして私は、私を殺せないの)

 自ら命を絶てるなら、朱里の知る世界に平和が訪れる。解っているのに、朱里はまだ、図太く生きてしまっている。
 だから、この命を絶つことが出来ないのならせめて、存在しないモノであろうと朱里は目立つことなく、『自分』を表に出さずに生きて。

「近寄るな! 化け物!」

 それでも、どうしてだろう……。竜城にだけは、いつも見つかってしまう。冷たい瞳が、朱里を射抜いて、すぐさま去って行ってしまうのに。

(何故……? まだ、足りないの……?)

 もっともっと、この存在を希薄なものにしなければ……竜城の瞳に映らぬようにならなければ……。
 既に凍りついた心には、もう傷一つ付かないと……思っていたのに。

 まだ、傷つく。彼の瞳に。
 心を凍らせて、いつか体まで凍りつけばいい。そうすれば、きっと────。

*****

「……かり。朱里?」

 病院の薄い毛布の上から体を揺すられ、朱里はゆっくりと瞳を開けた。

「どうした? 悲しい夢でも見てたのか?」

 目の前には、あの頃と違う温かな瞳。柔らかな笑顔。心の奥でずっと、望んでいたもの。

「泣いてたから起こしたんだけど……大丈夫か?」
「……どんな夢見てたか、忘れちゃった……」

 嘘だ。昔の夢を見た。ただこの身を控えめに生きることだけを考えていた頃の夢を。

「悲しい夢なら忘れていいよ。楽しい夢だけ覚えてればさ」

 な、と同意を求める声に、朱里はゆっくりと口角をあげた。

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