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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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頂き物 桜涙 「真夏が咲かせたココロコトバ」

当ブログ2周年のお祝いに、またもや「空想 i 」の朱音さんが桜涙の二次創作を書いて下さいました!
では、追記からどうぞ。


 ありふれた表現かも知れない。使い古された言葉かも知れない。
 だけど目の前に現れた華やかさを、俺には『夜に咲いた花』としか表現出来なくて、同時にその花から目が離せないんだ。
「見て見てーっ! 朱里ちゃんの浴衣姿、可愛いでしょ?」
「藍里ってば。そんなことを聞くと竜城に迷惑でしょ?」
 キャッキャとはしゃぐ藍里は、鮮やかな水色の生地の上に大きな花が元気良く咲いている柄の浴衣。それに対して朱里は、大人しめな紺色の生地に小さな花が無数に咲いている浴衣を纏っている。
 すげぇ……。可愛いし、綺麗。素直にそう思ったのは、真夏の夜の効果だろうか。

 数週間前、街の掲示板に張り出されていた、毎年恒例の夏祭りと花火大会実施のお知らせ。
 例年の祭りには藍里と二人で行っていたけれど、今年は誰が言い始めた訳でも無く、三人で楽しむことになったんだ。三人と言うのはもちろん、藍里、俺、そして朱里。
 今まで姉妹らしく過ごしたことが無かった藍里は、朱里と一緒に祭りに行けることが楽しみらしく、数日前からわくわくそわそわしていたっけ。そんな彼女を苦笑しながらも、俺もこの日を楽しみにしていたんだ。
 そして、当日。待ち合わせ場所にやって来た朱里は、想像していなかった衣装を纏っていた。
 藍里の浴衣姿は今までも何度か見たことがある。だから普通に可愛いと思う以上の感想は無い。
 朱里だって顔は藍里とほとんど同じだ。なのに、どうしてこんなにもどきどきする? 目新しいものを見て、新鮮な気持ちを味わったから……だけの理由じゃないと心のどこかが教えていた。
「あ、あの、竜城……? やっぱりこんな格好、おかしいよね?」
 どことなく照れていそうで、居心地悪そうに頬を赤く染めた朱里の言葉。あまりに凝視してしまったから、誤解を招いてしまったか?
「いや、おかしくなんてねーよ。よく似合ってる」
「でしょ!? ほら、朱里ちゃん。竜城ちゃんも可愛いって言ってるよ!」
「た、竜城は似合ってると言ってくれただけで、可愛いとは言ってないよ……」
 テンション高めの妹に、小さな声でぼそっと反論する朱里の目が俺のことをちらっと見て。指先を擦り合わせながら、落ち着かなさそうに「……でも、ありがとう」と言ってくれた。
 礼を言われるようなことはしていないし、言っていない。むしろ浴衣姿を見せてくれてありがとうと、礼を言いたいのはこっちで。
 多分この時、俺の頬は朱里よりも赤くなっていたんだろうな。


「お祭りと言えば、焼きそば、たこ焼き、綿菓子、かき氷! それから、えーと……」
「お前な。食べることばっか考えてるな」
「だってお母さんにお祭りで晩御飯を済ませて来なさいって言われたんだもん。ねぇ、朱里ちゃんは何が食べたいっ?」
「え、っと。よく分からないし、藍里におまかせするよ」
「じゃあまずはたこ焼きから! 私、買って来るから二人はここで待っててね!」
 慣れない下駄をからからと鳴らしながら、輝いた瞳で目的の夜店へと駆け出して行った藍里。
 こんな時だけ素早い彼女の行動をしばらくぽかんとしながら見送って、その後朱里とゆっくり顔を合わせて笑う。
「あいつ、最近、食い意地張ってるよなぁ」
「元気なところが藍里らしいけどね。ちょっと羨ましいなぁ」
「だけど去年までは、ヨーヨー釣りがしたいとか食べる物も林檎飴がいいとか、女の子らしかったんだぞ? なのに今年は初っ端からたこ焼きだもんな」
 自身に宿る能力を受け入れたあの時辺りから、藍里は強くなり、元気になった。同時に食欲も旺盛になったんだよなと思うと、喉の奥から笑いが漏れてしまう。
 今の藍里を想って自然と和んだ俺に反して、
「そっか。二人は今までも一緒にお祭りに来てたんだよね」
「あ……」
 俯き加減で呟いた朱里の笑みが、ほんの少し悲しげな色に変わった気がした。
 傷付けるつもりなんて無い。過去の出来事を穿り返すつもりは無い。そうは思っていても、今まで三人で祭りに来たことが無かったのは事実。
 その理由はただ一つ。俺が今まで散々朱里を遠ざけていたから――
「ねぇ、竜城」
「な、何だ?」
 薄い笑顔のまま静かに呟かれた名前に反応する。右手で風に揺られた髪を耳にかけていて、真正面から俺を見てこんなことを口にした。
「本当は今まで通り、藍里と二人でお祭りに来たかったんじゃないの? 私、お邪魔だったよね」
「……何を言ってるんだよ! 藍里だってお前と一緒にいられる今年の祭りが一番楽しそうなんだぞ」
 そして俺だって、朱里と同じ時間を過ごせることを祈っていたんだ。馬鹿にされてしまうかも知れないけれど、この日が楽しみで指折り数えてみたこともあったくらいに。
 本音を伝えたくて、でも恥ずかしくて言えない。朱里に伝えれば藍里に筒抜けてしまい、『竜城ちゃんってば三人で行くお祭りがそんなにも楽しみだったんだ。可愛い!』などと言われてしまうのが見えるし。
 じゃあ、どうすればこの気持ちを伝えられる? と考えた時。
「お待たせ! ほかほかのたこ焼きを買って来たよー」
 微妙な空気を払拭してくれる元気娘が、船型の入れ物に並んだたこ焼きを両手に片船ずつ抱えて帰って来た。
 はいっ、と手渡された一つの船。そしてもう一つの船はと言うと、双子の姉妹で半分こするようだ。
「朱里ちゃん。はい、あーん」
「え? 私、自分で食べられるよ?」
「分かってるよぉ。だけどこうして朱里ちゃんとあーんってし合うのが、今日の私のまず第一の目標なの!」
「そうなの?」
 そんな目標は聞いたことがないなぁと苦笑しながらも、妹のお願いを聞き入れた姉。小さく開いた朱里の唇に、どきっと反応してしまう。
 どうしてだ? どうして今日は朱里から目が離せない?
「次は朱里ちゃんが私にあーんして?」
「はいはい」
 お互いに食べさせてもらいあい、微笑みあう二人を見ていると思わず笑ってしまう。藍里の奴、朱里の雛みたいに見えるぞ。
 それにしても、気持ちを正直に口に出来る藍里が羨ましいな……。なんてことを考えたのが伝わってしまったのか、彼女の目がらんらんとしてこちらを捉えた。
「竜城ちゃんもあーんして欲しいの!?」
「なぁ!? そ、そんな訳ないだろ!」
「遠慮しなくていいよ。はい、お口を開けて下さーい」
「お、俺はっ、自分で食べられるっての!」
 爪楊枝に突き刺した球体を差し述べた藍里に、もう少しで『どちらかと言うと朱里に食わせてもらいたいんだよ』と言い掛けるところだった。危ない危ない。


 たこ焼きを食い終わり、時計に目をやるものの、花火が打ち上げられるまでにはまだ時間がある。
「どうする? 何か買ってこようか?」
「じゃあ、綿菓子をお願い!」
 びしっと挙手として意見を述べた藍里と、申し訳なさそうにしている朱里に手を振って俺だけ人ごみに紛れよう。
 綿菓子が売っている夜店へ向かう途中、がやがやと聞こえる声や何かのおもちゃの音を耳にしながらも、どこかへ浮遊する心。
 今日は朱里を意識しっぱなしだな。三人での初めて祭りに興奮しているのか、共に過ごせる時間を全て記憶にしたいと思っているからか。
 ……いや、本当は分かってる。浴衣姿の彼女が可愛過ぎるから、必要以上に意識してしまうんだ。

 ふわふわした甘く白い雲を二つ持ちながら戻って来ると、遠目に見えた二人の姿。
 距離があるので何を話しているのかは分からないけれど、藍里の口がパクパクと動いて、それに反応して朱里が笑う。その笑顔を浮かべたまま朱里が何かを言うと、藍里も笑う。
 何だかいいな、こう言うのって。ほのぼのしていて、ずっと心のどこかで求め続けていた関係になれている気がするんだ。
「はいよ、お待たせ」
「わーい、ありがとう! ……ん? 竜城ちゃんったら、にやにやしてどうしたの?」
 綿菓子を二人に手渡したと同時に、藍里はそんな突っ込みを入れてきた。やべ、微笑ましいなぁと思っていたのが表情に出ていたか?
「いや、何でも無い。ほらほら、俺のことは気にせずに綿菓子を堪能しろよ」
「そう? じゃあ、いただきまーす!」
「え、竜城の分は?」
「俺はいいよ」
「せっかく買って来てくれたのに、そんなの悪いよ。……あ、そうだ」
 もふり、と言う効果音が似合いそうなほどに勢い良くかぶりつく藍里。だけど朱里はそうじゃなくて。気なんて遣わずにその甘さを味わえばいい。
 なのに一つ一つの事柄に真剣に人を想うのが朱里なんだよな。なんてことを考えた直後、目の前にそっと差し出された綿菓子の破片。それを摘まんでいるのは彼女の人差し指と親指。
「竜城、あーん」
「……は? えっ、え?」
「少しでもいいから一緒に綿菓子を楽しもうよ。ね?」
 柔らかな笑みを浮かべながら、小首を傾げる彼女にどう抗議の声なんて唱えられたものか。頬が一気に熱を持ったのを自覚してしまった。
「ほら、竜城ちゃん! あーんだよ、あーん」
「藍里、うるせーぞ!」
 どうにかしてこの状況を打破しなければいけない。しかし、眼前には一心にこちらを見つめてくる、丸く可愛らしい四つの瞳。
 あぁ、だめだ。このままじゃ二人とも引き下がってはくれないだろう。となるとこの展開を終わらせる方法はたった一つ、小さく口を開くこと。
 かなり大きく、早く鳴る心臓の動き。視線はどこにやればいいのか分からなくて、俯き気味で彷徨って。そして、唇に優しく触れた細い指。
「美味しい?」
「あ、あぁ……、うん」
 正直に言おう。味なんてさっぱり分からなかった。ただ、朱里が触れた唇にはかなりの熱が残っている。熱くて、痺れて、綿菓子だけじゃない甘さ。
 まだ感覚が残る唇に自分の指を持っていこうとした時、空高くから大きな音がした。
「もう花火大会が始まる時間なんだね」
 徐々に暗さを増して来ていた空に、赤、青、黄、緑と、色とりどりの花火が何発も打ち上げられる。
 定番の丸い形のものから、ハート形の花火もあったりして、一つ打ち上げられるごとに観客達の歓声が沸く。
 ここにいる皆が……、藍里も空を見上げることに夢中になっているから、気付かれないだろう。
「わぁー……、綺麗だね」
 呟きかけた朱里の横顔を見つめながら、その手をそっと握ってみると、
「たっ、たつき?」
 思い切りびっくりしたような表情で見てくるので、人差し指を口元に当てて、心の中で囁く。
『藍里に気付かれると、私も朱里ちゃんと手を繋ぐってうるさいだろ? だから俺だけ手を繋いでおきたいんだけどだめか?』
 心底驚き、信じられないと言った表情を浮かべたけれど、それは一瞬だけ。見開いた目が柔らかく細められて、微笑んで。何も言わずに静かに握り返してくれた指。これは……、繋いでいても構わないってことだよな。
 思ったことは心を通じて朱里に聞こえるのは分かっている。いや、むしろ言葉に出来ない想いは心で届け。

 来年の祭りも、イベントの無い普段の日々も、一緒にいような。俺達、三人で。
 後もう一つ。浴衣姿のお前のことを、花火よりも綺麗な夜に咲く花だと思ったのは……柄にもなく、気障過ぎるよな。うん。


 またもや朱音さんが桜涙のSSを書いてくださいました。
 以下、感想です。

 初めて朱里の浴衣姿を目の当たりにした竜城が照れてる……! しかも「夜に咲いた花」って……何ですかその文学的表現はっ! 読んでる私まで照れそうでした。竜城に(浴衣姿が)似合っていると言われて、「ありがとう」と呟く時の描写が朱里らしいです。
 藍里は藍里で見事にはっちゃけてますね。自らの内に眠っていた能力を自覚し、未熟ながらも封じることを覚えた彼女はもう、どれだけはしゃいでも、無茶をしても、能力が原因で熱を出し、倒れることはありません。代わりにずいぶん食べまくってますけど……藍里、どんだけ食べる気!? 太るよ!? と、ちょっと突っ込みたくなりました。
 朱里は未だに「3人」というのが慣れないみたいですね。1対1なら、そんなことはないのでしょうが……竜城と藍里は付き合ってると思い込んでますし(本編終了時点では。って、思い込ませたのは私ですが 笑)だからこそ、「竜城と藍里二人で」という単語がすぐに出てきてしまうんですよね~。朱里らしいというか何と言うか。竜城の苦労が目に浮かぶ……(遠い目)
 朱里が藍里にタコ焼きを食べさせるシーンでは、反射的に最近見たツバメの雛を思い出しました(笑)口を開けて入れてもらうのを待っている様子が何とも言えず想像出来て、微笑ましかったです。双子なのに、朱里が親みたいですよね♪
 綿菓子をつまんで竜城に食べさせようとする朱里。ほんっとに無意識に色々やるんだからこの子は……(苦笑)朱里にしてみれば、教えてもらったこと、藍里が喜んだことをそのまま返してるだけなんだと思います。
 夜空を彩る花火を見ながら繋がれた手が、これからの未来をも共に紡いでいける予言のようで嬉しかったです。
 最後に一言。しかし、相手が朱里じゃなかったら、竜城の表情から心情は駄々漏れだと思います!

 朱音さん、書いてくださってありがとうございました。
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