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10/08 秋明菊 「あせていく愛」

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10/08 秋明菊 「あせていく愛」
夜明けの光 アーシャ


 玉座から引きずり下ろした後に母を閉じ込めた離宮に、アーシャは一人で訪ねた。
 離宮とはいえ、引退した王や王妃が住むその宮は、華美でこそ無いものの、質素とは無縁だ。細かな彫刻が刻まれたドアを前にし、一つだけ、深呼吸をする。
 コンコン、と控えめにノックし、答えを待たぬままドアを開けた。
 窓から差し込む日差しのそば、母は窓の向こうをうつろな瞳で見ているだけ。

「……具合はいかがですか、お母様」

 問い掛けても、答えは返らない。返るはずもない。母の喉を、短い期間とは言え、毒を以って封じたのは自分自身だ。
 母は、アーシャを見もしない。部屋に入ってきた事さえ、気付いていないかも知れない。
 王である父がフレイルに殺され、そのフレイルを殺すよう命令を出し、その邪魔をしようとした実の息子であるティルまでをも、この母は殺そうとした。

(もう、私の覚えているお母様はどこにもいない……)

 母は変わってしまった。穏やかに笑うことも、きらきらした声でアーシャに語りかけることもない。
 出来るならば、もう一度昔の母と同じように笑って欲しかった。ティルを、フレイルを、分け隔て無く愛し育てた母に戻って欲しかった。
 しかし、母はもう自分を見はしない。己を裏切った実の娘など、どうでもいいのかも知れない。そう思うと同時に、アーシャが母に対して抱いていた感情が……色褪せていく。
 嫌いになったわけではない、今でも母を愛している。それでも……ティルやフレイルを殺そうとする母を見たくなくて、だから、……裏切った。

「お母様……。私が憎いですか……?」

 実の母親に薬を盛った自分を。そう呟くように告げて、まっすぐに母を見据える。

「憎いのであれば、どうぞ……私を、殺して下さいませ。その覚悟で私は、お母様に薬を」

 そこまで告げた時、母が息を呑む音が聞こえた。……ような気がした。
 母の首が、ゆっくりと巡る。視線が、アーシャを見つめる。

「お母様……?」

 けれど、その瞳は何も映していなかった。この部屋にある何もかも、アーシャの姿さえ。

「……また、来ます」

 何の反応も示さぬ母に、そこまで追い込んだのは自分自身だと解っていても切なくなって、アーシャはそれだけを呟いて部屋を出た。


夜明けの光 目次

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