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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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執事様のお気に入り 視線の先

執事様のお気に入り 目次 二次創作Index

以前「執事様の夏休み」という企画に参加させて頂いた時のSSです。

7/12 ホース

「兄上~。遊びたいよ~!」

 シャープペンシルだけではなく、手足も同時に放り出す弟・理皇。宝探しを終えた次の日の朝早くから、伯王は理皇の勉強を見ていた。

「ダメだ。ほら、そこ計算間違えてる」

 と、間違えてる箇所を指先で示そうとした途端。

「わわっ!?」
「氷村っ?」

 慌てた良の声が外から聞こえて、伯王は驚いて、さっきまでもたれていた窓際に舞い戻った。

「大丈夫か!?」
「あはは、大丈夫~! 足引っ掛けちゃったっ」

 庭に水を撒こうとしていたらしく、丸まったホースに足を引っ掛けたらしい。どうやら怪我はしていないようで安心はしたが。

「……気をつけろよ?」
「うん! 伯王も頑張ってね~!」

 ぶんぶんと大きく腕を振る良に、小さく手を上げて応える。と。

「……兄上、ずるい」

 背後で、低い唸り声。振り返れば、じとーっ、と恨みがましい瞳で理皇が伯王を睨んでいた。

「理皇?」
「良ばっか気にしてっ……! 兄上はオレの兄上なのにっ!」
「理皇、あのな……」
「そうよねぇ。理皇だって頑張ってるのにね~?」

 からかうような声音を帯びて、碧織衣が扉を開けて入ってきた。その後ろには人数分の飲み物を持った庵と、お菓子をトレイに乗せた隼斗の姿。

「姉さん」

 くすくす笑いながら、伯王の隣にやって来て、庭の花に楽しそうに水を撒く良の姿を見る碧織衣。

「心配するのと過保護は違うわよ?」
「伯王はほんとに心配性だよな~。ほら若、どれがいい?」
「氷村さんが危なっかしいのも本当だけどね。若、こぼさないようにね?」

 山盛りのお菓子を理皇の傍に置く隼斗と、ジュースを手に持たせる庵にまでからかわれ、伯王は「だからっ……」と反論しようとしたけれど、またもや理皇に邪魔をされた。

「ずーるーいーっ! 良ばっかり兄上に心配されてーっ!」
「ずるいわよねー?」

 すかさず理皇の味方をする碧織衣を見て、伯王はがくりと肩を落とす。伯王が双星館に行っている間に、この姉と弟は以前よりさらにパワーアップしているらしい事を実感して。

「別に、俺は……」

 良ばかりを心配しているつもりはない。理皇や碧織衣に何かあれば、同じように心配する。庵や隼斗も同様だ。
 ただ……多分、種類が違う。家族や、庵や隼斗に向ける想いと、良に向ける想いとは。
 庭にいる良に視線を移せば、いつの間にか薫子もやってきたらしい。二人ではしゃぎながらホースで水を撒いている様子が微笑ましく、伯王は口元を緩めた。

(あいつを見てると、飽きないしな)

 その突飛な行動に、振り回される時もあるけれど。今の伯王は、それさえも楽しんでいる。

「……柔らかく笑うようになったわね」
「え?」
「あなた、そんな顔で笑う子だったかしら」

 つん、と頬を指先でつつかれて、反射的に眉を寄せれば、「眉間のシワが取れなくなるわよ?」と、またからかわれる。

「ねぇ伯王。……覚えておいてね」
「姉さん?」

 不意に真剣な声になった姉は、理皇に背を向けて呟くように、しかし伯王には聞こえるように囁いた。

「私も理皇も、あなたの事が大好きだから。今だけだとしても、ちゃんとわがまま言っていいのよ?」

 神澤の名に縛られないのは、おそらく高校にいる間だけだろう。碧織衣もそれを解っているからこその……言葉。

「叶えてあげられるかは解らない。でも、あなたはわがままを言わなさすぎるわ。頑張り過ぎてて心配になる」

 ああ、だから……彼女は良を誘拐したのか。手段としては少し常識を外れているけれど、その裏にある想いを察して、伯王は嬉しくなった。

「……ありがとう、姉さん」

 伯王の言葉に、碧織衣は言葉では返さずに、満足げな笑顔を見せた。

「伯王ーっ! 理皇くーん!」

 外から伯王と理皇を呼ぶ声。がたんっ、と理皇が椅子を蹴飛ばして、窓際にやって来る。

「何だよ、良っ!」
「見えるー? 虹だよー!」

 良の手にあるホースの先がつぶされて、細かい水滴が宙を舞う。そしてそこにうっすらと見える、小さな虹。

「虹……って、空に出来るんじゃ」
「ああ、理皇は見たことなかったか?」
「ないよ! 兄上、あれどうやるの!?」

 碧織衣と伯王は、小さい頃に庭師から教えてもらって遊んだことがあるけれど、理皇はやった事がないらしい。もっとも、理皇が大きくなる頃には、碧織衣は一緒に遊ぶような歳ではなかったし、伯王も自分の事で精一杯だった。

「兄上、オレもあれやりたい!」
「宿題は?」
「遊んだら絶対やる! だから兄上、一緒にやろうよ!」

 そういうと思った、と苦笑しながら碧織衣を見れば、「行ってらっしゃいな」と手を振られた。

「よし理皇、行くか」
「わっ! あ、兄上っ?」
「落ちるなよ?」

 小さな体を抱き上げて肩車をしてやれば、最初は驚いた理皇もすぐにはしゃぎ出す。

「見てろよー良っ! 良より大きいの作ってやる!」

 頭上で声高に宣言する理皇に、伯王は苦笑を零した。
 何だかんだ文句を言いながら、良に懐いているらしい理皇。彼女の行動は一切打算的なものがないからだろう。【神澤】の名を持つ者には、好意も悪意も寄って来るから。

「あれっ、伯王。理皇くん、宿題は?」
「お前が作った虹を見て、やってみたいと言うからな」
「良~っ、やり方教えろっ」

 肩から下ろせば、理皇はあっという間に良に駆け寄っていく。彼女は嫌な顔一つせずに、理皇にホースを渡し、やり方を説明している。

(楽しそうだな)

 理皇も、彼女も、薫子も笑っている。おそらくは二階の窓から見ているであろう、碧織衣や庵、隼斗も。
 彼女が楽しそうに笑うから―――、つられてしまう。

「よーしっ、行くぞ~っ!」
「あっ、理皇くんそっち向けちゃ……っ」
「伯王さん!」
「え?」

 不意に呼ばれて視線を移せば。
 ザアッ、と伯王の頭上から大量の水が降ってきた。
 ぽた、ぽた、と髪先から雫が落ち、着ていたシャツもびしょ濡れ状態。一瞬何が起きたのかわからなくて、呆然と佇む。

「あ……兄、上……?」
「伯王、大丈夫!?」

 慌てて駆け寄ってきた良が、ポケットからハンドタオルを取り出して、伯王の顔を拭ってくれる。その時点でようやく我に返り、伯王は良からハンドタオルを受け取って「ありがとう」と伝えた。

「伯王、着替えてきた方がいいよ。風邪引いちゃう」
「ああ、そうする。けどその前に……理皇!」
「う……はい……」
「やる時はちゃんと周りを見てから! 俺だからいいようなものの」
「ご、ごめんなさい兄上~っ!」



 その頃、二階の窓際から一部始終を見ていた碧織衣と庵、隼斗の三人は。

「ってかさ。今、伯王が見てたのって絶対氷村嬢だよな?」
「うん。じゃなかったら、あの伯王が頭から水被るなんて有り得ないでしょ」
「あらあら、責任転嫁? 理皇に八つ当たりなんて大人げないわね~」
「いや、あれ絶対気付いてませんよ」
「ええ、八つ当たりしてる事も解ってませんね、多分」
「……鈍感?」
「伯王ですから」
「だな」

 年上三人に話のネタにされていることも気づかず、伯王の理皇に対する説教は懇々と続いていた。

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