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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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10/07 紫苑 「思い出」

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拍手SSの再掲です。
10/07 紫苑 「思い出」
※MIRAGE エイド×レイティア

 レイティアの薬草摘みに付き合って、色んな野原を歩いた。とは言っても、エイドは薬草の知識など皆無なので、専らレイティアの護衛という名目で昼寝をしに行っていたようなものだが。

「もうっ、こんな所で寝転がってて、風邪引いても知らないからね?」

 柔らかな草の上、片腕を枕にして寝転がるエイドを、真上から覗き込むレイティアの瞳は、言葉とは裏腹な優しいものだった。

「そんなヤワじゃねぇよ」

 よっ、と勢いをつけて起き上がれば、彼女はますますにっこりと微笑んだ。

「そんなこと言うと、次のお茶の時間に、エイドだけ毒入れちゃうから」
「……お前、それが光の巫女の台詞かよ……」
「あらだって、そんなにヤワじゃないんでしょ? だったらトリカブトの毒くらい平気よねー?」
「待てっ、トリカブトの毒なんぞ飲んだら死ぬだろうがっ!」

 トリカブトは有名な有毒植物だ。呼吸困難に臓器不全を引き起こす。そんなものをお茶に入れられたら即死は確実。

 あははっ、と楽しそうに笑うレイティアは光と癒しの巫女。だというのに、彼女はよくそうやって、エイドをからかった。何しろ、桁外れの薬草の知識を持つ彼女は、毒草の知識も持っていたからだ。
 毒と薬は紙一重。神の奇跡では治せぬ病を、レイティアは薬を煎じることで病の進行を僅かながらも遅らせたり、痛みを和らげたりしていた。

「喉渇いたでしょ? はい」
「何だこれ。まさかホントにトリカブト入り……」
「じゃ、ないけど近いかも」
「んなもん何気なく差し出すなっ」

 誰が好き好んで毒が入っているものを飲もうとする! と差し出された竹筒を全身で拒否すると、レイティアがまた、白い歯を見せて笑う。

「ふふっ、嘘よ。これは単なる果実酒」
「お前な……」
「疲労回復の効果を持つ薬草と一緒に漬け込んでみたんだけど、味がイマイチだったのを改良してみたの。飲んでみて?」

 恐る恐る口をつけて、予想外の爽やかさに「美味い」と告げたエイドに笑いかけたレイティアの笑顔はまだ鮮やかに思い出せる。

(でも、あいつは────)

 自らが持てる知識のすべてで、光の巫女であろうとした少女は、もう、この世界には亡い。
 レイティアの存在は、記憶は、共に過ごした人間の思い出の中にしか残っていない。

「レイティア……」

 思い出の場所で、エイドは優しくその名を呟いた。

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