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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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七夕SS 「Your side」

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突発七夕SSです。(現代・高校生)

「……騙したわね桐咲きりさき!」
 ひらひらと羽のように舞う中華風の衣装を着せられた少女が、足音荒く詰め寄るのは同い年の少年。しかし少年は、飄々と嘯いた。
「人聞きの悪い。仕方ないだろ、あいつらがどーしても新沢にいさわがいいって言うんだもん」
「もん、じゃないわよっ」
「いーだろ、彦星俺だし」
「そういう問題じゃないっ!」
 少女が一方的に語気を荒くする中、おずおずと声がかかる。
「せ、先輩方、そろそろ始めたいんですけど……」
「ほらほら新沢、そんな般若みたいな顔してると子供が怯えるぞ~?」
「誰のせいよ……」
 がくり、と肩を落としながらも、少女は仕方ないと覚悟を決めた。そして背後に控える後輩に軽く頷いてみせる。
「じゃ、始めます!」
 事の起こりは1時間前に遡る。
「ちょっとこら、離してってば!」
「まあまあ、どーせヒマだろ?」
「だから、説明してって言ってるの!」
 この状況に至った原因を! と喚いても、彼は「後で解るよ」とにっこり笑うだけ。あまりにも無邪気に笑うものだから、喚いている自分が何だか無駄な努力をしているかのように思えて、彼女は「はぁ……」と深くため息をついた。
 ただのクラスメイト兼同じ部活の仲間である桐咲進吾しんごが、新沢真由まゆの家を突然訪ねてきたのは15分前。ちょうど本屋へ行こうと玄関を出た真由を見つけるなり、「ラッキー」と笑って細腕を強引に掴んだのだ。
「……誘拐、拉致、横暴、暴挙。どれに当て嵌まると思う?」
「とりあえず誘拐は違うな、拉致はまぁ……認めざるを得ないか。横暴とか暴挙とか言われるほど、乱暴にはしてないつもりだけど?」
「じゃあ拉致にする。で、私をどこに連れてくつもりなの?」
「答えはあそこ」
「幼稚園? ……あ!」
 思い出したか? と訊かれ、素直に真由は頷いた。
「毎年恒例の……」
「そ」
 真由達が通う高校の演劇部の一年は、毎年七夕の話を、付属の幼稚園で披露している。劇といっても、ある意味影絵と同じで顔は一切出ない。ナレーションと役の声は別の人間が担当し、スクリーンの影で黙って演技をするのが主役と鵲達、そして天帝だ。
「で、何で私がここに来る必要があるのかしら?」
 確か2年生以上は自由参加だったはずだ。
「ま、中に入りゃ解るって」
 そうして足を踏み入れたのがそもそもの間違いだった。詳しく聞いて、何が何でも帰れば良かった。
 真由は、急遽来られなくなってしまった本来の織姫の代役をお願いされたのだった。
 七夕の織姫は、去年も演じた。たかだか30分ぐらいの簡略的ストーリーだし、演じることに問題はない。問題があるとすれば……。
(ダメだ、集中しないと)
 ステージに立ったら自分は捨てる。自分ではなく、演じる相手その者になる。パンっ、と両手で軽く頬を叩いて、真由はステージに足を進めた。

*****

『天帝は、仕事熱心な娘の織姫にふさわしい夫をと、天の川の向こう岸にいる彦星と結婚させました。けれど結婚した二人は、全く仕事もせずに遊ぶばかりです。それに怒った天帝は二人を別れさせました。けれど今度は、会えない苦しさで織姫は泣き崩れ、仕事どころか食事さえ取れなくなりました。困った天帝が、年に一度だけ彦星と会うことを許した日、それが7月7日なのです……』

*****

 劇そのものが終わった後も、衣装を着たまま子供達の前に出されてしまった真由と進吾は、途端に子供達に囲まれた。
「おりひめ、あえたらうれしい?」
 ひこぼしに、と訊ねて来る幼子に、真由は膝をついてにっこり「うん」と笑ってみせる。
「あのね、たんざくのねがいごと、ふたりがあえますよーに、ってかいたのー」
「そっかぁ、じゃあ今晩晴れて、本当の二人が会えるといいね」
 真っすぐでサラサラな黒髪を撫でると、少女は満面の笑みを咲かせた。
「うん!」
 ぱたぱたと友達のところに走って行ってしまった後ろ姿を見送り、さてそろそろ着替えようかと立ち上がれば。
「……どしたの桐咲?」
「あ、いや、何でもねーよっ」
 何か視線を奪われるものでもあったのか、ぼーっと突っ立っていた進吾に訊ねると、彼は慌てたように顔を背けた。
「さっさと着替えて帰るぞ、俺らもうお役御免だろっ」
「って、元々私を連れてきたのはあんたでしょうがっ」
 ぺしっ、と自分よりも高い位置にある頭を背伸びして叩き、「いてっ!」と短い悲鳴から逃れるように、真由は更衣室がわりの部屋へと駆け出した。
 着替え終わり、後輩達に見送られながら帰途につく。河原沿いを歩きながら、進吾が「あーあ」と伸びをした。
「……何か疲れたな」
「人を引きずり込んどいて……」
 そこまで告げて、真由は「あれ?」と違和感を抱いた。
「ねぇ、桐咲?」
「何だ?」
「何であんたが彦星役だったわけ?」
 本来の織姫役が急遽来られなくなった理由は聞いた。が、彦星役は健在だったはずだ。ならば真由の相手役として、進吾が彦星役になるのは不自然だろう。
 そして更に不自然に映る笑いを浮かべて、進吾は「……気にするな?」と口にする。
「気にするわよ」
「俺は気にしない」
「私はするの!」
 歩みを止めて、真由はじっ、と進吾の顔を見上げる。逸らされる瞳にも、顔にも負けずに、その視界に入り込んで。
 やがて真由の行動に根負けしたのか、進吾が深く息を吐いて呟いた。
「……嫌だっただけだよ」
「何が?」
「だから、新沢の相手が俺以外の奴なんて許せなかったっつってんの!」
(────え?)
 言葉の意味を理解した途端、真由は自分の頬が熱くなるのを自覚した。
「けど、失敗だった」
「失敗……?」
 何か大きなミスをしたかと思い浮かべるけれど、思い当たることはない。
「演技だって解っててもやっぱり、……抱きしめる時は緊張したし」
 鼓動伝わるんじゃないかってさ、と自嘲気味に告げる進吾が、土手に座り込む。
「あー情けな」
 少しだけ耳を赤くして、拗ねたような彼の隣に座り込む。
「私も、一緒だよ?」
「新沢?」
「ドキドキしまくってて、聞こえないかビクビクしてた」
 一年前、二人で演じた時にはこんな感情はなかった。抱きしめても、抱きしめられても、キスの振りだって平気だった。
 だけど、今日は。今日は触れる度に顔が熱くなった。鼓動が速くなって、気取られないように必死で平静を装って、演技を続けて。
 二人の視線が絡む。お互いの瞳に己が映る。それを認めた瞬間、真由も進吾も、同じ言葉を口にした。
「好きだ」
「好きです」
 僅かな沈黙の後、互いに真面目な顔がなかなか維持出来なくて、小さく吹き出して。笑いながら進吾が、真由の体を抱きしめた。
「桐咲?」
「あー、何か、彦星達の気持ち解るかも」
「……解っちゃ困ると思うんだけど」
「まぁな。でも、ちょっと離れ難くない?」
「確かに、ね」
 同じ想いが繋がったから、もう少しだけこのままでいたいと思う気持ちは、解らないでもない。
 そう思った真由は、自然と彼に体を預けた。
 これからは、彼の隣が自分のいる場所になるのかも知れないと考えながら。

 ちなみに、真由が本来の目的だった本屋を思い出したのは翌日のことであったという。

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