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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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執事様のお気に入り 昔と今と【後編】

執事様のお気に入り 目次へ  二次創作Index

※オリキャラ登場します。



「良ちゃん! いらっしゃーいっ!」

 懐かしい校舎に足を踏み入れ、以前とは違う教室に顔を出そうと廊下を歩いていた時。ドンッと背後から衝撃が与えられて思わず前のめりになったところを、伯王がすかさず支えてくれた。

「あ、ありがと伯王……。も~、こういう事やるのは、籐子だね?」

 お腹に回っている細腕をそっと引き離して振り向けば、「えへへ~」と照れたように笑う籐子がいた。

「元気そうだね、良ちゃん!」
「籐子もね」
「元気だけが取り柄だからなぁ」

 籐子を追いかけてきたのか、若干息を切らせて姿を現したのは春都と美月だ。

「……ちょっと春都、何でため息つきながら言うわけ?」
「オマエ、その取り柄のおかげで、どんだけ俺が迷惑を被ってると思ってんの?」
「ひどっ、仮にも彼女に向かって言う言葉!?」
「彼女でも何でも、言わなきゃお前にゃ通じないだろーが!」

 突如始まった二人のケンカに、これも相変わらずだなぁと思う。そして、この二人のケンカを鎮めるのはいつも美月の役目だった。

「いい加減にしなさい、二人共」
「だって籐子が」
「だって春都が」
「それ以上何か言ってごらんなさい。休憩時間無くして、ついでに後夜祭への参加権もなし、おまけにクラスの打ち上げをする店まで確保させるわよ」

 クラス委員長権限で、と美月がにーっこりと笑いながら告げた言葉に、籐子と春都はそろって顔面蒼白にした上に黙り込んだ。

「さっすが美月」
「相変わらずなのよ、この二人は。それより、良の友達?」
「あ、うん! 伯王は前に会ったよね。クラスメイトの朝宮薫子さんと、楠真琴さん。それから、伯王と同じクラスの仙堂征貴くん」

 良の紹介に合わせて、薫子が「こんにちは」とにっこり笑い、真琴は「初めまして」と頭を下げ、征貴はただ無言で会釈を返しただけだった。

「初めまして、良の友達の向井美月です。こっちは吉岡春都、それから篠坂籐子です」

 未だ睨み合いを続けていた籐子と春都が、ぺこりと会釈をした。

「じゃ、行こっか。みんな良ちゃん来るの待ってたんだよー!」
「え? みんなって……」
「みんなはみんな、その言葉通り。全員って事だよ」

 籐子と春都、美月に連れられて、彼らのクラスに辿り着く。と、籐子が大声を張り上げた。教室どころか廊下まで、隣のクラスにも聞こえそうなほどの音量で。

「みんなー! 良ちゃん来たよーっ」

 たった一言。それなのに、次の瞬間には教室中の人間が良を見ていて。

「なにぃ、氷村だと!?」
「えっ、どこよ良!?」
「良ちゃん!」
「ちょっ、休憩中の子呼び戻して! 良が来たって!」
「その前にお客さん! ほったらかしにしちゃ駄目でしょーっ!」

 ざわざわ、一気に賑やかになった教室内。わたわたと動き出す良の元クラスメイト達を正気に戻したのは、またもや美月の一声だった。

「落ち着きなさい!!」
「美月、声大きいよ?」
「そうでもしないとこのままだもの。とにかく、今お客様に応対してる人達はその仕事を終わらせなさい。他の人達は特別に休憩に入っていいわ、籐子と春都と私で何とか回すから。いいわね?」
「はーいっ!」

 美月の委員長権限は絶大らしい。クラスメイト達が素直に動き出し、手の空いている元クラスメイト達が良に群がろうとする。

「良、あっちにテーブルがあるから、そこ使って。みなさんはどうされます?」

 伯王と薫子、真琴と征貴。良はこれから懐かしい再会に追われるだろうから、この四人は別の所へ行っていてもいいのだけれど……。

「伯王、あの」
「俺はここにいる。お前がいなきゃ、この学校の案内は誰も出来ないんだからな?」
「あ」

 そうだった、と呟く良に、「忘れてたな?」と伯王が笑う。
 入場の際に、校門でパンフレットは貰ったし、それに校内の地図も載っているけれど、この学校の広さは半端じゃない。双星館よりは確かに狭いけれど、それでも公立校としては十分広い面積を持っている。どこがどこだか解らなければ、本気で迷子確定だ。

「じゃあ、少しだけいいかなぁ? ごめんね、薫子さん、楠さん。仙堂くん」
「あら、良ちゃんが謝る事はないわよ? 久しぶりに会ったんでしょう? なのにこれだけ歓迎されてるんだもの、良ちゃんたら人気者ねぇ」
「お気になさらないで下さい、行きたいと言ったのは私ですから……」

 薫子と真琴の言葉にありがとうと返し、とりあえずテーブル席へと足を運ぶ。プリントアウトするために少し時間がかかるためか、麦茶とクッキーが用意されていた。

「お聞きしていませんでしたけれど、このクラスは何をされてるんですか?」
「あ、そっか。楠さん達には言ってなかったね。あのね、向こうに色んな服があるでしょう? あれをお客さんに着てもらって、それで写真を撮るんだって」
「写真……」

 呟いて、ちらりと征貴を見上げる真琴。その視線に気付いていても、征貴は何の感情も読めない顔のまま、真琴の視線を受け止めるだけだった。
 真琴が着られないような服なんて、そうそう無いだろうとは思う。何しろ楠家のご令嬢なのだし、こんな所で着る服よりも高価な服を持っているだろう。それでも、征貴と一緒の写真を撮ってみたいらしい真琴に、良は言葉を投げかける。

「行ってきてみたら? 珍しい服もあるかも知れないし。仙堂くん、一緒に」

 行ってあげて、と全てを言い終わる前に、征貴が立ち上がり、すっと手を差し出した。

「ご興味がおありなら、参りましょう。真琴様」

 ぶっきらぼうな声音だったけれど、真琴は小さく微笑んで、その手を取った。

「ちょっとちょっと、良! なになに、あの子、お嬢様か何か!? 『真琴様』なんて」
「あー、うん。でも、お家がそうなだけで、楠さん本人は、本当に普通の女の子だよ?」

 征貴といる時の表情を見れば、彼女が彼に対してどんな感情を抱いているのかが解る。 寮に入ってから、彼女は少しずつ変わっていっている。特別扱いをする人間も、どんどん少なくなっているのだ。彼女自身がそれをどう思っているかは解らないけれど、良はそれを、いい変化だと思う事にしている。

「良ちゃん、私も少し見てくるわね? みなさんとゆっくりお喋りしていて?」
「ありがとう、薫子さん。ね、伯王、薫子さんと一緒に行っててくれる?」
「ああ。水入らずの方がいいだろう?」

 ここにいるとは言ったけれど、元クラスメイトとの再会を邪魔するつもりはない。そう言った伯王の穏やかな表情を間近に見てしまって、良の頬がほんの少し朱色に染まった。




 その後、良は久しぶりに元クラスメイト達と再会を喜び、たくさん話をした。
 お昼は「割引券あげる」と美月から小さなチケットを五枚貰って、みんなでホットケーキセットやうどんを食べた。滅多に食べないものだから、薫子や真琴は最初こそ躊躇いを見せたけれど、運ばれてきたお昼は庶民的感覚でもおいしい物だった。
 その後はバルーンアート、縁日もどき。お化け屋敷にクレープ。チョコバナナの誘惑に負けそうな良を伯王が引き留め、けれど伯王も誘惑に耐えられずに、結局人数分を購入したりと、良にとってはとても楽しい一日になった。

「あ! お喋りに夢中で写真撮ってもらうの忘れてた!」
「何か着たい服があったのか?」
「ううん、そうじゃなくて。伯王と一緒の写真ってあんまり無いから……撮ってもらおうと思ってたのに~……」
「何だ、そんな事か」
「う……」

 伯王と一緒の写真を『そんな事』呼ばわりされて、良は若干落ち込んだ。が、不意に左手が包まれて、きゅっと握られる。

「写真ぐらい、いつでも一緒に撮ってやる」

 そう言った伯王の横顔が、何だか照れているようで。何だか可愛いと思いながら、良は「ありがとう」と満面の笑みを返した。

 昔の友達も大切だけれど、今の友達も大切。
 もう、良の居場所はどこにもないあのクラスで、良がいない間の事を楽しそうに話されると少し淋しさを感じたけれど、今は伯王達が傍にいてくれる、そう思う事で淋しさは和らいだ。
 昔と、今と、変わっていく時の中。
 籐子や春都、美月が良を覚えていてくれたように、変わらないものもあるのだと、そう思った。


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