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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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虹霞~僕らの命の音~ 贈り物

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またまた勝手に書かせて頂きました。
いつもお世話になっている「空想 i 」さまの二次創作です。


「ハル、桜? 何を一生懸命……」
「あっ、リク! 見て~!」

 僅かに開いていた桜の部屋の扉から声をかけ、呼びかけに振り返った春雷が手にしているものを見て、六耀は目を丸くした。

「……何? その縮れた靴下みたいなの」
「……うぅ……。コースターに見えない?」
「……そう言われれば、見えなくも……ない、かも……?」
「疑問符付きで言われても嬉しくない~っ!」

 どこからどう見ても、縮れた靴下にしか見えないそれは、どうやらレース編みのコースターだったようだ。

「もうっ、編み直しーっ!」

 えいやっ、とばかりに勢いよく糸を解く春雷とは違い、すいすいと針を進めていく桜は、くすくすと笑った。

「大丈夫ですよ、春雷様。最初に比べれば格段にお上手になってらっしゃいますから」
「レース編み?」
「はい。六耀様もいかがですか?」
「……僕が出来ると思ってる、桜?」

 自慢ではないが、編み物なんかついぞしたことがない。昔は妖華に頼んでセーターを編んでもらったりもしたけれど、編み上がった物を目にすることはあっても、編んでいる場面を目にすることはなくなってしまった。

「あら、どなたにだって出来ないわけではありませんよ? 根気さえあれば」
「……遠慮しておくよ」

 やっても下手なのは解りきっているしね、と苦笑する。

「……リク、それって下手なあたしへのイヤミ?」
「そもそもやろうとしない僕が、やってるハルにイヤミなんか言えないよ」
「……言ってるよーに聞こえる……」
「僕にはそんな気はないってば。でも、見てていい?」
「ええ、どうぞ」

 左手に細い糸を、右手に金色のかぎ針を持ち、すいすいと編んでいく姿はまるでお姫様のようで。

(……って、桜は根っからのお姫様だった……)

 絵本の中の、お伽話のお姫様の趣味は決まって刺繍や編み物で。自分とは縁の遠い仕草に憧れを抱いていた頃もあった。

(まぁ、妖華のを間近で見てて、僕には無理だって諦めたんだけど)

 細々した作業はどうも自分には向いていないような気がする。人知れず溜息をつく六耀は、そのまましばらく楽しげな桜と真剣な春雷の横顔を見つめていた。

 根を詰めすぎたのか、それともなかなかうまく出来ない自分に苛立ったのか、とうとう春雷が音を上げた。

「全然うまく出来ないよーっ!」
「そろそろ休憩したら? お茶にしようよ」
「そうですわね、では……」
「あ、いいよ桜。僕がやる」

 かたん、と椅子を引いて、厨房からお茶のセットを借りてこようと部屋を出て行く六耀の背中に、「ありがとうございます」という桜の優しい、柔らかな声が届いた。

「六耀!」

 廊下に出た途端、聞き覚えのある声に名を呼ばれた。

「時雨。……そういえば朝から姿が見えなかったけど、どこか行ってたの?」
「頼んでた魔法書を取りに城下まで行ってた。……で、これ……なんだけど」
「何?」

 時雨に差し出されたのは細長い小さな箱。包装も何もされていないそれを、六耀は反射的に受け取ってしまった。

「書店の娘が、アクセサリーを作って売ってるんだ。……というか、あまりにも下手でなかなか売れなくて、店主に買ってくれ~……って目で見られたんだけど」

 勢いに負けて買ってしまった、と苦笑する時雨。かりかりと指先で頬を掻いて、照れたように見えるのは……プレゼント、という滅多にしない行為のせいか。

「開けていい?」
「大したものじゃないぞ?」

 何しろ下手で売れ残ってるぐらいなんだから、と時雨の注釈がつくのも構わずに、六耀はゆっくりと箱を開けた。




「あら、六耀様。そのコサージュ、どうなさったんです?」
「時雨がさっきくれたんだよ。せっかくだから付けてみたんだ」

 六耀の左胸元には、白いレース糸で編んだ、直径3cm程の巻きバラのコサージュがあった。中央に目立たぬ小さなパール、細い銀色のリボンが二本と細く編んだレース糸が三本、垂れ下がるように縫い付けられていた。

「気に入らなかったら捨てていいって言ったんだけどな……」

 何せ義理で買ったようなものだし、と、ティーポットを持った時雨が独りごちる。

「トキ、何で髪飾りにしなかったの? そしたらリクの髪型も色々変えて遊べるのに~っ」
「なかったんだよ!」
「いや、ハル? 僕はこの髪型で満足してるから」
「時雨さまとお揃いですものね」
「って、違うよ桜!」
「あら、そうですか? ふふ、それにしてもそのコサージュ、確かにとてもシンプルですわね」

 初心者ゆえに、手の込んだことが出来なかったのか、はたまた時雨が選んだものがたまたま飾り気のないシンプルなものだったのか。

「っていうか、下手だといいながら売り物にするってある意味すごいよな」
「そんなものをリクにあげちゃダメでしょ、トキ!」
「いやだって、俺が持ってても仕方ないし! うわ、かぎ針持ったまま殴るな春雷!」

 途端にバタバタし始める時雨と春雷を横目に、六耀はそっと胸元のコサージュを指先で撫でる。

 下手とか上手とか、そんなことはどうでも良くて。
 ただ、時雨からプレゼントをもらったという事実が嬉しいのだと彼が気付くことは、多分ないだろう。

 淡く微笑む六耀のその姿に気づいたのは桜だけだった。



※後書き 兼 言い訳
 久しぶりに書いたら、なんたる駄文……! 朱音さん、ごめんなさい~。
 年末あたりからずっとレース編みにはまっているので、それを題材に何か書けないかなと思い、何故か思いついたのは自分のキャラクターではなく、六耀さん達だったという……。
 私のキャラクターで編み物をさせるとしたら……誰だろうと悩んでしまいました(笑)

 朱音さんのみお持ち帰り可です。
 もしお気に召しましたらどうぞ~。

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