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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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執事様のお気に入り 小さな決意

執事様のお気に入り 目次 二次創作Index

以前「執事様の夏休み」という企画に参加させて頂いた時のSSです。

7/1 ○○始めました。(真琴×征貴)


「どうかされましたか、真琴様」
「征貴……」

 廊下の窓際で一人、ぽつんと立つ真琴をどこから見つけたのか、気づけば楠家の執事である仙堂の弟が傍にいた。

「いえ……。伯王さんと氷村さんがあちらにいらっしゃるから」

 二人で何やら楽しそうに話をしている。時折伯王が良の頭を小突いたり、かと思えばすごく優しい顔で笑ったり。

「主従関係には見えませんね……」
「彼女にとって神澤は、『同級生の男子』だそうですから」
「……そうですか」

 あの神澤の御曹司の事を、『同級生の男子』と言える彼女は、自由にのびのびと育てられて来たのだろう。家の名に縛られることもなく。

『私が攫われた時、お一人でも逃げれば良かったのに』
『え? そんな事、全然思いもつかなかったよ』

 あの、狂言誘拐の日。自分だけではなく、真琴をも助けようとしてくれた。打算的な思惑もなく、ただ純粋にあの場所から抜け出すことを考えていた。

 嬉しかったのだと、思う。真琴を『楠家の娘』としてではなく、一人の人間として見てくれた事が。
 だから、本来なら仙堂に口裏を合わせるはずだったあの時、咄嗟に嘘をついたのだ……きっと。

『自分の好きなように選んでいいと思う』
『何でも好きなの選んでいいんだよ?』

 幼い頃に伯王に言われた言葉と、先日良に言われた言葉。そして。

『ご立派だと、私は思います』

 自分で選びたいと思った、そう呟いた真琴に、征貴はそう言ってくれた。

 だから、少しだけ……少しだけ、わがままを言ってもいいだろうか。

「征貴……」
「はい」
「私が寮生活をしたいといったら……あなたはどう答えてくれますか?」
「……真琴様のお望みのままに。兄は反対するかも知れませんが」

 反対されるのは目に見えている。けれど、真琴は楠家の人形ではいたくない。

『正直な気持ちで向き合いたいって、思ってるんじゃないかなぁ……』

 背くのではなく、楠真琴という一人の人間として、楠の名と向き合ってみたい。伯王のように強くはなれなくても、せめて、自分の意志で何かを決められるように。

「……説得、してみます」
「兄の陥落は難しいですよ」
「……負けません」

 窓の外を眺めて、静かに、決意を宿して呟く。

 真琴は知らない。いつもは無表情なその顔に、微かに笑みが浮かんでいたことを。そしてそれを見た征貴も、小さく笑い返したことを。

「……そろそろ兄が迎えに来る時間では? 門までお送りします」
「ありがとう、征貴」

 先立って歩き出す征貴の後に続こうとして、真琴は再び良と伯王に視線を移した。
 相変わらずじゃれ合っているようにしか見えない二人。真琴をほんの少しだけ変えてくれた二人に、そっと会釈をして、その場から離れた。

 家にたどり着いてから、父の帰りを待って、母と仙堂立ち合いの元、真琴は自分の望みを告げた。両親からも反対されるのを覚悟していたが、実質反対したのは仙堂のみで、両親は快く送り出してくれた。

*****

「何をしてらっしゃるんですか……?」

 ある日、生徒用の調理室からいい匂いがしたので中を覗いてみると、ガッシャガッシャとボウルと泡立て器を使う良がいた。

「あっ、楠さん! 蒸しパン作ってるの、伯王達と食べようと思って」

 隣で卵を割っている薫子がニコニコ笑っている。

「良ちゃんの作るお菓子はおいしいんですよ」
「よかったら一緒に作ってみる? みんなで蒸しパンパーティーしようよ」
「あら良ちゃん、それはいいわね」
「でしょ? ね、おいでよ楠さん!」

 良の明るい声に、真琴は歩きだした。家にいたら、絶対にさせてはもらえなかった事に興味を引かれたのだ。
 こういう時、寮に入ってよかったと思う。世界が広がるのが、自分で解る。

 人形ではない、意志を持った一人の人間として始めた、寮生活。
 これから何が起こるかは解らないけれど、そんな未来さえも真琴は楽しみだった。



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