Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

泪に咲く花【2】

雨の弓 目次 一次創作Index

再会した三人の出した結論。

「……落ち着いた、泪ちゃん?」
「うん……。ごめんね、みっともないとこ見せちゃったわ」
「はっ、今更」

 あれだけ大泣きしておいて、とヨウが嘲笑う。泪花とコーリは揃ってヨウを睨み付けた。

「……元はといえば……」
「明人くんの無茶が原因じゃないの? 泪ちゃんがあそこまで怒るなんて、絶対相当な無茶したんでしょ!」
「無茶どころか無謀よ、透子、明人くんてばね────」
「泪花っ!」

 一体どんな無茶をしたんだろうと、コーリは呆れた。ヨウが命を落としたあの日に、すべて聞いたつもりでいたけれど、考えてみればあの再会はとても短い時間だったから、彼も掻い摘んだ説明しかしなかったのかもしれない。

「……まぁ、マスターの無茶は今に始まった事じゃないですけどね」
「嫌味か?」
「当然です。死神を統べる者マスターになる事だって、私には何も言わなかったじゃない……」
「言ったら反対しただろ、光梨は」
「そうだけど……」
「……あの、二人とも? マスターとか光梨って……誰のこと?」

 明人、でも、透子、でもないその呼称に首を傾げる人物が一人。そういえばまだ説明していなかった、とヨウとコーリは我に返った。

「マスターは俺のこと。死神を統べる者って意味のな」
「光梨は私の新しい名前。死神としてのね」
「死神……?」

 そう、とコーリは頷くと、自分達がここにいる経緯を説明した。

「本当なら、泪ちゃんは私達じゃなくて、別の人が迎えに来る予定だったんだけど……。明人くんの職権乱用で、私と一緒に迎えに来たの」
「って言うけどな。実際はこいつの願いだったんだぞ?」
「え……?」
「幻でもいい、俺達に会いたい。……泪花の中で心残りは、俺達を死なせた事だったから」

 ヨウの言葉に、泪花はこくりと息を呑む。そう、それは紛れもなく泪花の最期の願いだったのだ。

 天命を迎える事を知った泪花は、二人との再会を願った。それが例え幻であっても、夢であってもいい。
 ただ、二人に会って、「あなた達の分まで頑張って生きたのよ」と自慢したかった。来世では三人一緒に、おじいちゃんおばあちゃんになろうね、と約束をさせようと、思っていた。
 結局、二人の姿を認めた途端にそんな思惑などどこかに消えてしまって、二人に会えただけで、言葉が声になってくれなかった。喉の奥から漏れるのは呼吸のみで、瞳はだんだん熱くなっていった。

「……叶えて、くれたのね」
「最期の願いを叶える事が、俺達死神の仕事だからな。……まぁ、今回は例外だけど」

 最期の願いを知っていたとしても、それにはヨウとコーリが死神を続けていなければ、泪花には会えない。もしもどちらかが転生の門をくぐっていたら、幻を見せる力を持つ死神を、泪花の所へと使わせただろう。

「……そろそろ行くか。裁きの門へ」

 いつまでもこうしてはいられない。魂だけの彼女を導いて、裁きの門をくぐらせなければ。そう思ってヨウが口にした言葉を、泪花は正確に読み取ってしまったらしい。

「裁きの門? ……まさか、私だけ先にいけって言うんじゃないでしょうね!?」
「……泪ちゃん……」

 まさに、そのつもりだった。コーリはヨウが転生を決めるまでは側にいると決めているし、ヨウはまだ、自分の後継となるマスター候補を育てていない。だから今、裁きの門を三人でくぐる事は出来ないから、せめて泪花だけでも転生させよう。それが、ヨウとコーリが出した結論だった。のだが……。

「……そうなのね……」

 生きている時は、大切な二人の幼馴染みに先に逝かれ。死して尚、今度は先に転生しろと言う。
 二人の分まで頑張って幸せになろうと決めた。事実、幸せになった。けれど、透子と明人のいない日常は、いつも心にぽっかりと穴を開けて。

「泪花……」
「……また私だけ、置いてけぼり……? そんなの、……許さない……っ!」

 おさまっていた涙が、また瞳から零れ落ちる。せっかくこうして迎えに来てくれたのに、またすぐにさよならなんて。泪花には到底受け入れられるものではなかった。

「許さないんだから……絶対……っ!」

 手のひらでぐいっ、と瞼を擦っても、頬を伝う涙は止められなかった。

「……まぁ、そう言うとは思ってたんだけどな……」
「ちょっ、明人くん!?」
「俺だって嫌だったよ。せっかく透子に会えたのに、すぐにさよならなんてさ」

 コーリは、置いてけぼりにした側だ。置いてけぼりにされた側ではない。だから、ヨウと泪花の気持ちは解らなかった。

「……泪花」
「……何よ」
「死神になる気、あるか? 死神になれば、たくさんの命の終わりを見る事になる。長い時間を生きる事になるかもしれない。それでも……俺達と一緒に過ごす事を選ぶか?」

 ヨウの真剣な声に、泪花は迷わなかった。力強く頷いて、ヨウが差し出す手に触れた。
 お前は何を生み出す力が欲しい? そう訊いたヨウに、泪花が告げたのは────。




「我が名に刻まれし花よ、彼の者の望む花に咲け」

 白い手のひらから、緑の芽が顔を出し、ぐんぐんと成長していく。蕾をつけ、やがて咲いたその花は、コーリが思い描いていた赤いチューリップそのものだった。

「はい、コーリ」
「ありがとう!」
「へえ、短期間で大分上達したな、咲花ショウカ
「そりゃ必死よ。次の試験に合格しなくちゃいけないんだもの」
「でも、これなら大丈夫! 泪ちゃん絶対合格出来るよ!」

 泪花が得た新しい名は、咲く花、と書いて「ショウカ」。彼女が望んだ、その名に込めた願いはたった一つ。

『涙の後にも笑顔を咲かせる事が出来ますように……』

【1】へ ← 雨の弓 目次

スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。