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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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泪に咲く花【1】

雨の弓 目次 一次創作Index

コーリとヨウが迎えに行ったのは……。

『……いつか、二人で泪花を迎えに行こうな?』
『……それ、職権乱用……』

 そんな約束から、長い長い月日が流れ……二人は今、空の上に浮かんでいた。




「あ、雪……?」

 はらはらと舞い落ちる、六花。と、思ったら、違った。白い綿を腹に付けた、小さな羽虫が、コーリが差し出した手のひらにふわりと止まる。それを隣から覗き込んだヨウが、からかうように告げた。

「雪虫だな。……潰すなよ?」
「潰さないわよっ、子供じゃないんだから……」
「子供の頃やっただろーが」

 ふわりと捕まえるのではなく、両手を広げてパンッと雪虫を捕まえた、幼い自分を思い出す。無論、その勢いに小さな羽虫が耐えられるはずもなく、絶命させてしまったが。
 そしてその行動は、とあるアニメの幼い少女を彷彿させ、彼と彼女は二人で笑い転げたのだった。

「もう、ずっと……ずーっと昔の事なんだね」
「ああ。……長生きしたよな、泪花は」
「うん……私達の分まで、生きてくれたよね」

 二人の死神────ヨウとコーリ。生前は明人と透子という名の一人の人間だった。二人は若くしてその命を失い、死神として生きてきた。ずっとずっと先になるであろう事を願った、約束とともに。
 明人と透子には、幼馴染みがいた。明人にとっては妹のような、透子にとっては姉のような存在だった彼女は、二人分の命を背負ったかのように長い時間を生きてきた。
 それが、泪花だ。……今、二人の眼下に映る病室の白いベッドの上で、天命を迎えようとしている、一人の老婆。
 もう、目を開ける気力すらないのだろう。孫であろう少女が、「おばあちゃん!」と呼び掛けても、反応は僅かで。

「そろそろ、か」
「うん。……我が名に刻まれし光、彼の者の魂を導け」

 コーリが手の平の上に、白い光の玉を作り上げる。それは、彷徨う魂を導く光。
 すべての生命活動が停止し、やがて、老いた体から抜け出た魂が、コーリの元へとたどり着く。未だ体に繋がれている、細い魂の糸が、コーリの光の玉によって切り離される。

「……泪、ちゃん」
「泪花」

 コーリが、ヨウが、覚えているままの……泪花の姿。呼びかければ、ふるりと閉じていた瞼がかすかに震えて。
 呼びかけたコーリとヨウを探す瞳がさ迷い、焦点を合わせ。

「……うそ……」

 驚きに見開かれていく瞳と、震える唇を隠そうとする両手。コーリとヨウは泪花のそばに近寄り、その手に片方ずつ触れた。

「……ゆ、め……?」

 震える喉で、一生懸命この状況を把握しようと、泪花が瞬きを繰り返す。
 つ……っ、と零れ落ちた涙を、ヨウの指先が拭う。

「……夢じゃないよ、泪花」
「泪ちゃんを迎えに来たの、私達」

 コーリは泪花の細い指を両手でそっと包み込み、ヨウは彼女の瑞々しい黒髪をゆっくりと撫でる。何故か段々と俯いていく泪花の顔を覗き込もうとした瞬間────。

「────ばかぁっ!!」
「うわっ!?」
「明人くんっ!?」

 ドンッ、とヨウの体が泪花の手によって突き飛ばされた。慌てて片手を伸ばし、コーリはヨウの体を支える。

「る、泪ちゃん……!?」
「透子はっ! 透子は仕方ないわよっ! でも明人くんは……明人くんは、バカ以外の何者でもないっ!!」

 瞳にいっぱい涙を溜めて、それを零さないように必死に耐えて。泪花の視線はまっすぐヨウを見る。

「あの後、どれだけおじさんやおばさんが悲しんだと思ってるのよ!? 私が、陸巳が、どれだけ後悔したと……っ!!」

 透子を殺した犯人を捜し出す事は、明人と泪花、二人の願いだった。それは確かだ。
 犯人を捕まえる事が出来れば、明人だって透子を思い出にして生きていけると思ったから。だから泪花は何も言わなかった。後に泪花の夫となった明人の同僚・陸巳も、何も言わずに明人に協力していた。

「止めれば良かった……! 見つけたって電話がかかってきた時、何が何でも駆けつければ良かった! 陸巳と二人、何度後悔したと思うの!? ずっと、ずっと────」
「……泪花?」

 それまで威勢の良かった泪花の声が、途切れていく。

「……さ、淋しかっ……ずっと……!」
「泪花」
「と、とうこも、……明人く、も、いなくてっ……! わたし、頑張らなくちゃって……!」
「……泪ちゃん」

 コーリが握っている泪花の手のひらを、自分の頬に押し当てる。ヨウは両腕を伸ばして、泪花の魂を抱きしめた。

「……頑張ってくれて、ありがとな」

 優しい声が、泪花の頭上から降り注ぐ。もう、ずっとずっと遠い昔、泣き虫だった泪花を慰めてくれた明人と同じ仕草で、同じ声で。
 右手の指先に感じる透子の手の温もりも、泪花の涙腺を余計に緩ませる。

「……いいぞ、泣いて」

 かつては泪花を抱きしめられる立場にいた陸巳は既に亡い。今、泪花が泣ける場所は……ヨウの腕の中だけだ。

「……っ、う、あぁ────っ!」

 それ以上はもう言葉にさえならず、ただ泪花の泣き声が空に響いた。


雨の弓 目次 → 【2】
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