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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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頂き物 「隠し事」

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 もう2ヶ月ほど前になりますが、相互リンクさせて頂いている風月りおんさまのサイト『蒼銀の月』が5周年を迎えられ、フリー配布のSSを頂いて来ちゃいました!

ほのぼの暖かなお話をお楽しみ下さいませ。

※著作権は風月りおんさまにあります。転載は禁止です。

 


 俺には。
 絶対に彼女にだけは知られちゃならない事がある。


≪隠し事≫


 俺には昔から、よく好きでやってる事がある。
 別に趣味という訳ではない……と思う。
 ただ、それをしていると無心になれるから気分が落ち着くという、いわば精神統一の為の手段に近いものがある。
 けれど、それは他人から言わせればただの言い訳に聞こえるらしく。
 親しい友人や、昔の彼女なんかに言わせれば、立派な趣味にカテゴライズされるらしい。
 そうしてそれは、およそ男らしさからかけ離れており。
 ……まぁ、ぶっちゃけいつもそれが原因で、イメージと違うだの何だの言われて、振られてしまうんだ。
 だから、今の彼女にはどうしても知られたくない。
 というか。
 ……いい加減、コレが原因で振られるのは勘弁してくれって感じなんだよっ。

 俺の絶対知られちゃならない事。
 それは。

 料理・裁縫・編み物・その他家事全般。

 という内容だ。
 勿論、主夫を目指している訳ではなく。
 暇さえあれば、それに勤しんでいる訳でもない。
 ただ、ムシャクシャしたり、気分転換したかったり、そういう気が向いた時にだけやる、といった感じだ。
 けれど、どうやらそれは他人には理解されないらしい。
 加えて、近年は乙女系男子とかいう言葉も作られたりして。

 俺は断じて乙メンとかじゃない!

 と、声を大にして言いたい。

 だってそうだろう。
 男が料理をして何が悪い。男子厨房に入るべからず、という言葉があるが、それじゃあシェフとか板前はどうなるんだ。大半が男だぞ?

 ソーイングセットを持ち歩いて何が悪い。いざって時に簡単なボタン付けとか出来れば、外出先でも困らないだろうが。

 編み物が出来て何が悪い。編みぐるみとか作れれば、手先が器用になるじゃないか。

 家事全般出来れば、結婚した時にお得だぞ?共働きでも家事が分担できるんだから。

 とまあ、コレが俺の言い分だったりする。
 なのに今までの彼女は……っ!
「男らしくない」だの「もっとましな趣味を持て」だの、極めつけは「キモい」だぞ!?
 ……確かに、改めて趣味を聞かれると、これといって思い浮かぶ事がないのも事実だけどな。
 でも普通にスポーツで体動かしたり、ゲームしたり、本読んだりも好きだぞ?むしろそっちの方がプライベートで占める割合多いしな。
 なのに。
 なのにだ!
 ちょっとでも露見すると、隠れ趣味だとか言われるんだよな……。

 今の彼女とは付き合って数ヶ月。
 今までの失敗を踏まえて、ボロはまだ出していない。
 ……ハズ。


 今日はその彼女とデートの日。
 天気もいいし、弁当持って……といきたい所だが、最初の彼女との初デートの時に作って行ったら、嫌がらせ(料理が苦手な子だった為) と勘違いされて振られたから止めておく。
「そろそろ出るか……」
 と、そこで裾がほつれているのが目に留まる。
 今から着替えるのは面倒だし、このくらいなら軽く縫い止めすればいいか、と手早く縫ってしまう。

 そうして待ち合わせ場所に着いて。
 すぐに彼女も着いた。
「おはよう」
「おはよ~。ごめんね、待った?」
「ううん、全然」
「良かった。あれ?糸屑付いてるよ?」
 その言葉に俺は思わずギクッとする。

 まさかあれか、今朝のか!?

「ほ、本当だ。どこで付いたんだろうな、はは」
 後ろめたい訳ではないが、バレたくないという気持ちから、思わず乾いた笑いがもれてしまう。
「?」


 その後はいつも通りデートを楽しみ、夕食を食べた後。
「ね、ちょっとだけ、家に寄ってもいい……?」
 彼女の方からそんな事を言ってきた。
 その言葉に俺は、心の中でガッツポーズをして、快く了承する。

 そうして着いた俺の家。
 普段から家事全般はお手の物。急な来客に慌てる必要もない。
「どうぞ、上がって?」
「うん。お邪魔しまーす」
 俺の家は、玄関を入ってすぐにキッチンがあって、奥にリビングと部屋一つある1DK。
 彼女は部屋の中を何だか嬉しそうに見回している。
 と、そこで。
「あ、ちゃんと自炊してるんだね。すごーい」
 彼女が突然そんな事を言った。
「な、何でっ!?」
「え、だって調味料とか食器洗い用の洗剤があるから……違った?」
「ち、違わないけど……」

 やばい、引かれたか……?

「自炊できる男の人っていいよね」
 その言葉に俺は、パアッと目の前が明るくなる。
「……そうなんだよー!自炊した方が生活費も楽だし、栄養も偏らないしさー!」

 よし。料理が出来るのはマイナスにはならないらしい。

「ま、取り敢えずその辺に座ってよ。今何か飲み物を……」
「うん、ありがと。……あれ?」
 俺が飲み物を用意しようとキッチンで色々やってると、彼女が不思議そうな声を出した。
「どうかした?」
「このぬいぐるみかわいい~。ね、これどうしたの?」
「!?」

 それは俺が昨夜製作した編みぐるみ(約7cmサイズ)……!
 片付けるの忘れてたーーーっ!

「えっと、それは、その……」
 何か良い言い訳がないかとあれこれ考えて。
「そう!この間たまたま見つけてさー!あげようと思ってて、今日持っていくの忘れてたんだよー」
「え、じゃあ、これ私に?ありがと、嬉しい」
「喜んでもらえたなら良かったよー」
 そうホッと一息吐いたのも束の間。
「でも、どこで買ったの?」
「え゛」
「編みぐるみって売ってるお店少ないから」
 言い訳のせいで、一転窮地に陥って。
「ど、どこだったかなー?たまたま見つけてフラッと立ち寄ったトコだから、覚えてないなー。どこだったかなー、はは」
「そっかー残念」

 これは、切り抜けられたのか?切り抜けられたって事でいいよな!?

 しかし。
「……これ、本当に買ったもの?手作りじゃなくて?」
「ななななな何で!?」
「編みぐるみの本が……」
 彼女が指差したのは、テレビの横。
 いつも俺が、編みぐるみの本とかを置いている……。

 そこまで考えて、俺はサーッと血の気が引くのを感じた。

 終わった……。
 俺、完全に終わった。
 また振られるのかー……。

 そんな放心状態の俺の耳に、信じられない言葉が届いた。
「すごく器用なんだね!これ、大事にするから!」
「……え?」
「え?……やっぱり買ったやつだった?」
「……キモいとか、思わないの?」
「えー?すっごく可愛いよ、このぬいぐるみ」
「ありがと……じゃなくて!俺の事……」
「何で?」
「何でって……」
「うーん……びっくりしたけど、別にいいんじゃない?今って色んな趣味があるんだし。趣味で男らしさが決まる訳じゃないしね」
「や、趣味って訳じゃないんだけど」
「じゃあ特技?……とにかくね、私は別に、気にしないよ?それって個性だもん」
 そう言って、彼女はにっこりと笑った。

 彼女の言葉に、笑顔に俺は何だか救われた気がして。
 俺も自然と、笑顔になった。


 見た目や言動で決め付けられたりするのは不本意で。
 でも、好きな人には受け入れて欲しくて。
 だから。

 隠さなくてもいい相手に、巡り合えるのは幸せ。


=Fin=



 今って本当にたくさんの趣味があって、男とか女とかの差ってあまりなくなってるんですよね。編み物でも、男性の方が教えている事もありますし。
 それにしても、この彼は本当に器用なんだなぁ……。私編みぐるみはクマ(しかも小さい物)しか作れませんし。ボタン付けはまぁ、出来ますけど……最近針を持った覚えが全くないです。あ、でも数年前にラベンダー入りのフクロウを作ったかな? 料理は私よりレパートリーが多そうだな、と思いながら、彼女に振られないかとびくびくしている彼を心の中で応援しながら読んでいました。
 最後は受け入れて貰えて良かったです。そのうち彼女に編みぐるみの作り方とか教えていたりして。そんなほのぼのした温かい未来を想像して、私自身もほのぼの出来ました。

 風月さま、遅くなりましたが5周年、おめでとうございます。
 これからも優しいお話を紡いでいって頂ければなと思います。

 他にもたくさんの小説を書かれています風月りおんさまのサイトはこちらです。→『蒼銀の月
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