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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 残された時間の中で

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『双子が静岡に行くまでは、今の自分に出来る事をしよう』



「え……双子が?」
「うん……」

 政二から、双子を引き取ってくれる祖父母の話を聞いて。無理矢理自分を納得させて、いつも通りに振る舞っていたはずなのに。
 梨生に「元気ないよ?」と言われて、明るくしていたはずなのに。
 結局強がりは見破られて、屋上で事情を話すことになってしまった。
 本当はいけない事なのだ、バイトとはいえ、働いている人間には守秘義務は当然あるべき事。けれど……。
 一人で抱え込むのは、辛かった。

「そっかぁ……。ずっと松永さんが育てていくものだと思ってたよ」
「……育ててるんじゃ、ないんだよ」

 痛いほど感じてしまう。双子が成長すればするほどに。

「え?」
「松永さんと、私がしてるのは……子育てじゃなくて、ただの子守なんだな、……って」
「え、ちゃんと子育てしてるじゃない?」
「ううん。……甘やかすことは出来ても、叱ってはあげられない。怒鳴りつけることは出来ても、言い聞かせられない。与えることは出来ても、私が教えてあげられる事は、本当に少ないの」

 詩春には、親がいない。ずっと施設で育ったから、家族というものを知らない。そしてそれは多分、政二も同じだ。両親はずっと不仲だと言っていたから……。

「……けどそれはさー、仕方ないんじゃない? 松永さんだって詩春だって、子育ての経験なんてないんだし」
「……うん。だから……、お祖父さんとお祖母さんが引き取るなら、その方がいいと思う……。けど」
「……淋しい、よね」
「うん……」

 淋しさは消えない。まだ先の話だと解っている。残された時間の中で自分に出来る事をしようと決めたばかりなのに、……揺らいでしまう。

「でもさ、詩春?」
「うん?」
「あの子達にとって、詩春は間違いなく必要だと思うよ?」
「……ありがと」

 梨生が心配して、そう言ってくれているのは解っていても、詩春はその言葉しか返せなかった。


*****


『って、梨生が言ってた』

 今日は早めに帰宅出来た政二の携帯電話に、健から電話がかかってきたのは数分前のこと。そこに詩春がいるなら少し離れて、との言葉に素直に従って、健の口から聞かされたのは、双子を引き取る事に対しての、詩春の気持ちだった。

「やっぱりか……」

 泣く事自体は悪い事ではないし、ましてそこまで双子に対して親身になってくれている詩春に感謝の念を覚えずにいられない。

『せーちゃんはさ、どう思ってんの? 茜と葵のこと』
「このまま、育てられるなら、とも思ったよ。だけど、今だって中村さんに頼らなきゃやってけない状態で……。中村さんだって、これから受験だし、大学に行けば、双子の面倒ばかり見てられないだろ?」

 今だけ、なのだ。今はまだ、詩春がいてくれるから何とかなっている。自分一人では、また以前に逆戻りなのが目に見えているのだから。
 ……そんな自分に育てられては、これからの二人の人生がどうなるか……。

「元々、茜と葵を育てようと思ったのは俺のエゴなんだよ。……それで、今度は静岡のご両親に任せるって言うのも、……都合良いかも知れないけどな」

 育てようとしたのなら、本来ならちゃんと責任を持つべきなのは解っているけれど。

『俺はさ、せーちゃん、頑張ってると思うよ?』
「頑張りだけじゃ、埋められないこともあるって、知ってるだろ」

 どれだけ頑張っても、足りないものはきっとある。義姉の両親が完璧であるとは言わないけれど、少なくとも、政二がこのまま双子を育て続けるよりは、一度でも子育ての経験がある祖父祖母に任せた方がいいはず……だ。

 一つ、健に気付かれぬようにそっと溜息を零す。

「……ありがとな、教えてくれて。吉井さんにもお礼言っておいて」
『おー。何かあったらさ、うちの親だって力になるからさ』
「ああ。……じゃあな」

 通話を終わらせると、微かに聞こえる双子と詩春の笑い声に気付く。

 離ればなれは、確かに、淋しいと思う。一年以上共に過ごして、苦労もさせられて。双子を可愛いと思うのは本当の気持ちだけれど……。

 政二は多分、自分で自分が信じられないでいるのだと思う。だから、義姉の両親の言葉に甘えようとしている。
 そう思っても、今の政二には、それが茜と葵にとって最良の選択だと、思うのだ。

(中村さんには、俺の選択の結果を押しつけてるようなものだもんな……)

 申し訳ないと、強く思う。

「あっ、せーたんいたー!」
「みてー!」
「なっ、おいこら、引っ張るなっ」

 茜と葵、二人がかりで脛の部分を小さな手で掴まれて、ぐいっと引っ張られる。バランスを崩しそうになりながらもリビングに戻ると、そこには色とりどりの積み木で作られたお城があった。

「おしろー!」
「……良く崩さなかったな」

 いつもなら、茜が真っ先に崩してしまうのだが、今日はちゃんとお城の形のまま残されていた。

「茜ちゃんが一番真剣になってましたから、今日は」
「へえ……」
「あおも! いっしょやった!」
「そうだねー、葵くんは、最後の屋根を乗っけてくれたよね」

 いいこいいこ、と二人の頭を撫でる詩春。その撫でられる感触に、嬉しそうに顔を綻ばせる双子。

 双子が静岡に行くまでは、今の自分に出来る事をしよう。詩春と同じ事を考えている事に気付かぬまま、政二も双子の頭を撫でた。


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