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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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MIRAGE【12】 ~巫女~

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『アリーナ様を、お守りするのですよ』


 その後、第2騎士隊も大広間に到着し、気絶した人々を客室へと運んでもらった。無事だった貴族達はそのまま光の神殿に赴き、光の巫女達の浄化を受けてもらう。

「……お兄様。私、大神殿へ行って参ります。……大巫女様だけではなく、神殿全てに何かあったのかも知れません」

 魔の侵入を阻む王都の結界、それよりも強固な王宮の結界。その二つが消えたからこそ、魔物の侵入を許した。
 ならば、光の大神殿そのものに、何か異常があったと考えるのが必定。

「……そうだな。頼む」
「はい」

 アリーナが身を翻し、ランディルが彼女の護衛として後を追う。が、血の気を喪ってしまっているせいでふらふらしている彼にだけ護衛を任せる訳にはいかないと思い、エイドはミュール王に向き直った。

「俺も行きます。ランディル一人じゃ」
「ああ。相当疲れてるはずだ。アリーナの護衛の任を一時解除する、と言うつもりだったんだが」

 言う前に行ってしまった、とミュールは苦笑する。それは普段見せない従兄としての顔だった。

「アリーナを守る事。今のランディルは、それしか考えてないよ。ってわけで、ちょっと行ってくる。……と」

 ファラスをここに置いていっても大丈夫だろうか。両親も、パミラもファラスの事は知っているけれど。

「彼女の事は心配しなくていい。我らを助けてくれた礼も、ちゃんとしたい」
「解りました。……ファラス?」
「大丈夫です。どうぞ、行って下さい」

 頷いて、走り出す。ランディルの後を追い、エイドは光の神殿を目指した。



 途中でランディル、アリーナと合流し、共に大神殿へと向かう。はっきり言ってランディルが足手まといになってしまっていて、そう早く走る事が出来ない。
 それでも、出来るだけ急いで大神殿へと辿り着く直前、白い光が爆発した。

「な……っ!?」
「浄化の光……。大巫女様!?」

 誰もが大巫女だと思った。あれ程の膨大な浄化の光を扱える存在は、大巫女しか知らなかったから。けれど、そこにいたのは────……エイドよりも年下であろう少女。魔を浄化した後の黒い霧さえも飲み込む白い光の中で、何処か悲しげに消えゆく魔物を見つめていた。

「エルレイン! こっちの浄化は」
「終わりました、神官長。大巫女様は……」
「危機は脱した。大丈夫だ」
「……良かった……」
「神官長」

 少女がホッと胸をなで下ろすのとほぼ同時、近づいていたアリーナが年嵩の男性の肩書きを呼ぶ。その時に初めて神官長は自分達の存在に気付いたらしく、慌てて地面に膝をついた。
 それに倣ったのか、少女も地面に膝をつく。

「これは、アリーナ様……っ。申し訳ありませぬ、神殿が魔物に襲われ、王宮の結界に人手を回す余裕がなく……!」
「違います。咎めに来たわけではなくて……事実確認をしに来ただけです。どうかお立ち下さい、神官長。……それから、あなたも」

 神官長は、アリーナの表情に怒りの色がない事を見て取ると、安心したような顔で立ち上がった。

「教えて下さい。一体何があったのですか?」

 アリーナの言葉に、神官長は厳かに話し始めた。

 原因は調査中である事、何の前触れもなく突如大量の魔物が出現し、聖堂にて祈りを捧げていた大巫女が襲われた事、神殿も浄化に手一杯だった事。
 一つだけ解る事と言えば、王都の光の結界は巫女達によって支えられているはずだから、彼らはその結界すらものともしなかった事になる。その事実だけだ。

「大巫女様も深手を負いましたが命に別状はありません。意識も戻りましたので、一週間程すればまた王宮の結界に集中出来ると……」
「面会は、可能ですか?」
「はい。エルレイン、アリーナ様を大巫女様の部屋へ」
「畏まりました。こちらです」

 エルレイン、と呼ばれた少女がくるりと踵を返すのに合わせて、エイド達も歩き出す。きびきびとした仕草で歩く少女の背中は、どことなく緊張していた。
 エルレインの案内で、大巫女の部屋に辿り着く。扉を開けた向こうには、大きな寝台。

「大巫女様っ」
「ああ……アリーナ様……」

 起きあがろうと両腕に力を込めた大巫女の体を、毛布の上からアリーナがそっと押さえつける。とても青白い顔色が、どれだけの力を奪われたのかを物語っている。

「アリーナ様……。どうか、ツァリアへの旅を、おやめ下さい……」
「……何か、理由があるのですか?」
「結界を通り抜ける魔物など……これまでは存在致しませんでした。いいえ、存在はしていたのかも知れませんが……それほど強力なものは、今までにいなかった……。ならば、何かが裏で糸を引いている、と考えるのが必定……そして」

 ふ、と一度浅く息を吐き出して、深く息を吸い込む。息を吐き出すようなささやかな声が、その場にいる全ての者の動きを止めた。

「その可能性が一番高いのは……ツァリアです」

 それは、誰もが考えるであろう可能性だった。
 かつてはヴァーロイスと同じ精霊の加護を受けていたのに、今や闇の王国となっているツァリア。だが、それを知っていてもアリーナは……。

「……それは出来ません。大巫女様」
「アリーナ様……」
「正式な使者をたてての要請を、断るわけには参りません。それに……数十人の巫女達を失う可能性を考えるのならば、私一人の方が良い」
「ですが……!」
「大丈夫です。信頼の置ける護衛がいますから」

 そういったアリーナが後ろを振り向くと同時に、エイドとランディルは大巫女に向かって安心させるように礼をした。
 大巫女は、観念したように、ふぅ、と大きな溜息をついた。

「……それに、神殿からも一人、私の旅に同行して下さる巫女がいるのでしょう?」
「……ええ、あなたの隣に」
「え?」

 アリーナの隣にいるのは、先程厳しい瞳で魔を浄化していた少女しかいない。

「え、だって確か名前は、シャスタでは……?」
「エルレイン・シャスタ。……それがこの者の名前です。……エルレイン」

 しわだらけの手が、エルレインに差し出される。少女はその手を包むように握りこむと、そっと自分の頬に押し当てた。

「大巫女様……」
「アリーナ様を、お守りするのですよ」
「この身に代えましても」
「……よい覚悟です。ですが、アリーナ様は犠牲など望んでおられない。己の身を、決して粗末にすることのなきように」

 はい、と小さく呟いたはずの少女の声が、何故か部屋に響いた。


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