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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 心からの感動

LOVE SO LIFE 目次  二次創作Index

なまはげをテレビで見ていたら。


「悪い子はいねかー!」
「泣ぐ子はいねがぁ!?」
「怠け者はいねぇかー!」

 緩やかな太鼓と銅鑼の音を合図にして、三人のなまはげが登場する。鉈や出刃包丁(もちろん段ボール製)を振り回しながら、既に顔をくしゃくしゃに歪め、瞳にいっぱい涙を溜めて、けれど恐怖で喉が引き攣る10歳くらいの子供に近づいていく。
 ついに見てられなくなったのか、小さな双子────茜と葵は一緒になって政二の胸に顔を埋めた。

「泣ぐ子か? 悪い子か!?」

 タイミングのいいことに、画面の向こうで怒鳴り声。

「茜と葵は、悪い子か?」

 政二が苦笑しながら訊ねると、二人は揃って首を横に振った。

「茜ちゃん、葵くん、テレビだから大丈夫だよー」
「「しはるたん~」」

 画面の中の出来事でも、小さな子供達になまはげのどアップは衝撃的だったらしい。

 今、詩春達が見ているのは、秋田県のなまはげの映像だ。温泉地の余興として、なまはげに扮した青年達が力強く太鼓を叩いている。

「なまはげが怖いのって絶対、あのお面のせいですよね」
「あとは包丁かな。偽物だけど」

 大きな声、荒々しい行動も原因だろうが。だが、それがなまはげの特徴だから仕方がない。
 ドン、ドン、ドンドンドンドドドド……。太鼓の音が段々速くなっていく。テレビだから音量調節が可能だけれど、これを生で聞いていたら大音量に子供達は耳を塞ぐかもしれない。
 リズムに合わせて、なまはげ達は片足を上げたり、撥をくるくる回したり。勇壮なその動きのままに、太鼓を叩く。

「……体中に響きそうですね……」
「うん、響くよ。空腹な時には行けない」
「和太鼓、聞かれたことあるんですか?」
「大学に和太鼓のサークルがあって、公演を見に行ったことがあるんだ。及川なんか、腹減ったって大騒ぎ。散々食べた後だったのに」

 部屋の中で、力強い五つの太鼓の音は反響し、増幅し、体を駆け巡っていく。
 揃っていく5人の動きと余韻を残して消えていく太鼓の音に、何故か詩春の胸が詰まった。
 瞳の奥から零れそうなものをごまかすために、詩春はゆっくりと呼吸をした。

「……中村さん?」
「すごいな、って……。あんなに一生懸命に、一つの事に打ち込める事が」

 太鼓を叩く5人の顔は真剣で、全身全霊を込めて撥を振り下ろす。

「変ですね、泣きたくなるなんて」
「……感動してるんだから、いいと思うよ。泣いても」
「悲しいわけじゃ、ないんですけど……」
「中村さん、『感動』の意味取り違えてる。何も、悲しいこととか切ないこととか、嬉しいことだけじゃないんだよ?」
「……え」
「心を強く動かされること。すごいな、と思って泣くのも有りって事だよ」

 心を強く動かされる……。ただ、「すごい」の一言しか出てこないのに、それで泣きたくなるようなこの感情も、『感動』なのだと政二は告げる。

(そんな風に、言われたら……)

 本当に泣いてしまいそう。悲しいわけでも、切ないわけでも、嬉しいわけでもないけれど。
 太鼓を叩く5人の姿(内3人はなまはげの仮面付きだが)を、すごいと思う。ただ、それだけで。

 瞳が熱くなって、頬を一筋の涙が伝う。泣いていいとは言われたけれど、やはりちょっと気恥ずかしくて、指先で雫を拭おうとして。
 先に、自分とは違う温もりが頬に触れた。

「しはるたん、こわい?」

 一生懸命腕を伸ばして涙を拭ってくれるのは、政二の膝の上にいる葵だった。

「ううん、怖くないよ。大丈夫」

 詩春が笑顔で告げた時、ドンッ! と一際大きな音がして、葵と茜の体はびくりと震えた。不意打ちの大きな音に、詩春の体も反射的に固くなる。
 それに気付いた政二に、小さく喉の奥で笑われた。

「ま、松永さん……っ」
「いや、うん、ごめんごめん」

 ぽん、と宥めるように頭を撫でられて、少しだけ怒りかけた気持ちがすんなり解けていったのは、詩春だけの秘密だ。


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