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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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桜涙【1】 夢

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『ずっと、このまま……願うのは、不変』



 静かに、静かに、誰かが泣いている。掠れてしまいそうな、ともすれば泣いていることさえ気付かれないような小さな声が、微かに、この空間に響いている。

「泣いているの……?」

 そっと、呼びかける。けれど、微かな泣き声は続いたまま。彼女の発した声にも、気付いた様子はない。
 ふわふわとした白い空間の中で、彼女は泣き声の方へとゆっくりと足を向けた。
 ……っ、ふぇ……っ。
 小さな身体を、更に小さく丸めて、握った拳を唇に当てて、嗚咽が零れないように必死になっている少女の姿が見えた。

「どうして、泣いてるの?」

 少女の隣にそっと座って、もう一度、問いかけた。

「……さみしいの……くるしいの……」
「……そう」

 彼女は、少女にかける言葉が見つからなかった。『淋しい』も、『苦しい』も、そんな感情はとうの昔に捨ててしまった。否、そんな感情を抱える心さえ、彼女には既になかった。

「みんな、ばけものだっていうの。わたしは、ひとのこころをよむ、ばけものだって」

 化け物。それは彼女にとっても耳慣れた言葉だ。幼い頃からずっと、大好きな人達に言われてきた、言葉。

「だから、ひとりでいるの……。でも、さみしいの……くるしいの……」

 少女は声を殺して泣き続ける。黒髪が顔を覆っていて、表情までは見えない。

「……捨ててしまえば、いい」
「え……?」

 彼女のように、『淋しさ』や『苦しさ』を痛みと感じる心など、捨ててしまえばいい。
 そうすれば、傷付くことも、痛みに気付くこともないのだから。
 不意に、少女が顔を上げた。その顔は、彼女自身に良く似ていた。

「……そうやって、あなたは私を切り捨てるんだね」

 幼い声音に似合わない、しっかりした口調に変わった幼い少女を、彼女はじっと見つめた。

「ずーっと、ずーっと……このままなの?」
「ずっと、ずっと……このままよ」

 変わることなどない。どうせもうすぐ、何もかもが終わる。今更、誰に理解して貰おうとも思わない。何も変わらず、ただ、あの子と彼の幸せを願うだけ……。
 震える瞳を向けるあの子を、そしてあの子を必死で化け物わたしから守る彼を、もう解放しよう。

「ずっと、このまま……」

 幼い少女と同じように、彼女も体を丸めた。自分の殻に閉じ籠もるように。
 両膝を両腕で抱え込んで、瞼を膝に押しつけて。小さく疼く胸の痛みを、気にしないように浅く呼吸をして。
 少女の幼い手が、彼女の頭に触れる。ゆっくり黒髪を梳るのは、小さな指先。
 いいこ、いいこ、と呟くその声が何故だか心地よくて、彼女はそのまま眠りに誘われた。


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