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明るき陽の光を【9】 恋人の時間

雨の弓 目次  一次創作Index

『……会いたくないわけじゃないんだからな?』



 現れたその姿に絶句して、お披露目が終わった後、コーリはフウマやカノ、ミズキに『どうして!?』と詰め寄ったが、彼等三人には飄々と『本人に聞けばいいだろ』と逸らされた。
 その言葉と勢いのままに、彼女は滅多に入ることのなかった死神を統べる者マスター専用の部屋の扉を、ノックも無しに開けた。

『……透子、お前ノックぐらい……』
『どういう事よ!?』

 息巻くコーリに、二代目の死神を統べる者となった明人────ヨウは、したり顔で笑って軽く言った。

『言っただろ? 「またな」って』
『な、あれって、そういう意味……っ?』
『誰がお前の望み通りに転生なんかしてやるか。大体俺、告白の返事、お前からちゃんと聞いてないし?』

 解ってるくせに────……。その呟きは、ヨウの腕の中でくぐもってしまった。

『……本当はさ、透子と同じ死神になるつもりだったんだけど……初代がな』
『初代のマスターが、……何……?』
『誰も代わりがいない役職に就いてしまえば、さすがのコーリも、無下には追い返せないだろう? って』

 さすが、全死神を掌握していた初代だ。コーリの性格が見抜かれている。

『どうして、そんなに……死神になりたかったの……?』
『……透子一人で、長い時間を過ごさせたくなかったからな』

 他にも死神はいるし、仲間だっているのは解っている。それでも、『透子』として生きた時間があまりにも短すぎたから……ならば、その長い時間を共に過ごそうと思ったと、ヨウが告げる。そして。

『……いつか、二人で泪花を迎えに行こうな?』
『……それ、職権乱用……』

 死神を統べる者が自ら魂を刈り取りに行くなんて前代未聞だ。そう告げるコーリに、ヨウは『上等』と笑ってみせた。




「あ~……癒される~……」
「ちょっと、こらっ。私は抱き枕じゃなーいっ!」

 ふわふわの亜麻色の髪を、ヨウの大きな手が撫でる。彼の膝の上に座らせられて、ぎゅううっ、と強く抱き締められてしまっている為、容易には抜け出せない。

「やってもやっても仕事終わらないし。光梨、やっぱ俺の補佐にならない?」
「いーやっ、私は死神が気に入ってるのっ、書類仕事なんかしたくないわ」
「補佐になってくれれば、お前の傍にいられるのになぁ……」

 ……その言葉には、正直、揺らぐ。ヨウは忙しくて、しょっちゅう仕事で顔は合わせているものの、二人きりで逢うことなんて月に一度あるかないか。
 傍にいられるレインとユミが羨ましかったのは、コーリとヨウは滅多に二人きりの時間がないからだ。

「……愚痴言ってても終わらないんだから、仕事したら?」
「お前、それが恋人に言う言葉か?」
「恋人としての時間なんかあったかしらー?」
「それを言うなよ……」

 がくり、とうなだれるその姿を、可愛いと口に出せば、絶対彼の反撃が来るから言わないが。

(可愛い以外に言葉、見つからないのよねー)

 幼なじみとして過ごした時間なんて、多分本当に幼い頃の間だけ。コーリの記憶の中では、どうしたって埋められない年齢差を突き付けられた、家庭教師の時間の分しか彼を知らない。
 こんな風に、甘えてくるヨウには、今でもドキドキさせられる。

「……透子」

 大切そうに呼ばれたかつての名前。視線を合わせようとすると、傾いた顔が近づいてくる。柔らかな唇が触れて、すぐに離れてしまう。ほんの少しだけ淋しさを感じて、だけど、心は温かくなる。

「俺だって、……会いたくないわけじゃないんだからな?」

 真剣にコーリの瞳を覗き込んでくるヨウの手が、コーリの白い頬を優しく撫でる。ふ、と優しく笑った後に、意地の悪い声で「お前はどうか知らないけど?」と告げてくる。

「そ……っ、そういう事言う!?」

 コーリが会いたくないわけはない。だったら羨ましげにレインとユミを見ていたりなど、そもそもしないだろう。妬ましく思うことだって……。

「だってお前、ちっとも会いに来てくれないし」
「仕事に追われている人の邪魔なんか出来るわけないでしょ!」
「……やっぱ透子だよな、そういうとこ」

 何が『やっぱ透子』なのかは解らなかったが、コーリは小さく溜息をついた。

「仕方ないから手伝ってあげる。もういっそ、レイン達も巻き込んで終わらせましょ」

 ぴょんっ、とヨウの膝から下りて、パタパタと扉に向かうコーリに、彼の慌てたような声がかけられる。

咲花ショウカは呼ぶなよ!? アクアなら良いけど!」
「アクアを連れてきたら泪ちゃんだって来るに決まってるじゃない」

 もう一人の幼馴染みであった泪花────それがショウカだ。コーリとヨウが迎えに行った時に大泣きして、自分も死神になると泣きながら訴えてくる彼女に、裁きの門をくぐらせることは出来なかった。

「あいつが来ると騒々しいんだよ……っ。光梨を蔑ろにするなだの、仕事のスピードが遅いだの……」

 光梨を蔑ろになんかしてねーっつの、と少年のような口調でヨウが拗ねる。

「じゃ、仕事終わらなくても良いの?」
「……それはダメ、だ」
「なら、諦めるのね。すぐ戻ってくるから、仕分けぐらいはしといてよ?」
「おー……」

 力のないその姿に苦笑しながら、コーリは扉をパタンと閉めた。



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