Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

明るき陽の光を【7】 赤いチューリップ

雨の弓 目次  一次創作Index

『────ホント、バカ……っ!』



 自分の部屋に戻り、一人でぼーっとしていたコーリをカノが訊ねてきたのは、1時間後のこと。コーリは余計な事は何も言わず、自分が知りたかったことだけを訊ねた。

「……くぐった?」
「コーリちゃんに伝言、預かってきた」

 カノに伝言を預けた、と言う事は、彼は裁きの門をくぐったのだろう。

「……何て?」
「たった一言よ。『またな』ですって」

 再会を約束する言葉。それを伝えるのはカノの声なのに、何故かコーリの頭の中では明人の低い声に変換されて。同時に、そういって笑う彼の姿も思いだして……。

『よし、じゃあ続きは明日』
『えっ、明日も!? 仕事は!?』
『非番です。ってわけで、またな?』

 家庭教師をしてもらっていた中学三年の時、そうして何度も次の約束をした。明人に恋心を抱いたのはその頃からだ。勉強は嫌だったけれど、彼に会えるのは嬉しかった。

 その言葉が、好きだった─────。なのに今は、その言葉がとても切ない。

「……バカじゃないの」

 またな、なんて。裁きの門をくぐってしまったら、現世で生きた透子の事も、死神としてのコーリの事も、全部忘れてしまうのに。
 コーリはきっと、生まれ変わった明人を見つけられる。例えば泪花が寿命を終えて、転生したとしても、きっとコーリには解る。
 誰よりも大好きだった二人の魂なら、どんなに時間が経ったとしても、何度転生したとしても、絶対に見つけてみせる。そういう意味では、明人の「またな」も、あながち間違いではないけれど。

「────ホント、バカ……っ!」

 ずっと堪えていた涙が頬を伝う。明人の前では泣けなかった。彼が裁きの門をくぐって、この世界にいない事を知ってからでなければ泣かないと決めていた。
 声を押し殺して泣き続けるコーリを、カノがずっと抱き締めてくれていた。

 涙が収まりかけた頃、コーリはカノに一つの質問を投げかけた。

「明人くんの最期の願いって、何だったの?」

 何気なく問いかけたのに、カノは一瞬躊躇うように顔を背けた。

「カノちゃん?」
「……大切な女の子が眠るお墓に、赤いチューリップとかすみ草を。……そう言ったわ」

 その名前が刻まれたお墓は────『香住家』だったと。

 静かに、カノが告げた言葉に。枯れたはずの涙がまた瞳に溢れたのを覚えている。
 赤いチューリップの花言葉は「恋の告白」だったから。





「……だからコーリさん、私が死神になるって言った時に賛成してくれたんですね」
「レインが後悔するの、目に見えてたもの。ユミは必死で気付かなかっただろうけど、レインの顔に書いてあったわよ? 離したくないって」

 葛藤しているのがよく解った。それでも、ユミの意志が優先だからと、コーリは何も言わずにいたのだけれど。
 もし、あの時ユミが食い下がらなければきっとレインは、そのまま彼女の手を離していただろう。

「……レインは、あの人にも似てるし、多分、私にも似てるのね。だから、ユミと一緒にいるレインを見ると、羨ましいと同時に妬ましくもなっちゃうのよ」

 幸せな二人を見ていると、コーリも嬉しくなる。あの時の選択は間違っていなかったのだと知って……なのに、どうして自分の時に出来なかったのだろうと、時に後悔に苛まれたりもする。
 自嘲の笑みを唇に乗せた時、部屋のドアが小さくノックされた。

「コーリ、ユミ来てる?」
「あら、帰ってきたわ」
「レイン!」

 飛び跳ねるようにドアを開けに行くユミを苦笑しながら見送って、レインにも紅茶を入れようともう一つカップを用意する。その間にドアは開かれ、レインの瞳がコーリに向かう。

「ただいま、コーリ。ありがとな」
「べっつにー? レインの馬鹿話、ユミにたっぷり教え込んでおいたから」
「なっ? ユミ、一体何言われた!?」
「えー、教えちゃったら意味ないじゃない?」

 実際はそんな話などなかったのに、真に受けるレインはからかいがいがあって楽しい。後でユミが困らないように、本当にあった馬鹿話を一つや二つは教えておかなきゃとコーリは心の中で密かに笑った。

「レイン、紅茶飲むでしょ?」
「あ、待った。試験の事でマスターが呼んでる」
「ユミはともかく、私も?」
「まぁた試験官だとさ。俺も一緒に。あ、あとアクアとショウカもな」
「……すっごい面倒なんだけど。あれ」
「文句はマスターに言ってくれ」

 とはいうものの、今まで聞き入れられた文句なんてない。結局は、死神を統べる者の命令に従うしかないのがヒラ死神の悲しいところだ。

「じゃ、行きますか」

 説明だけならばそう時間はかからないだろうと、コーリはお茶のセットをそのままにして部屋を出た。



【6】へ ← 目次 → 【8】
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。