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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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明るき陽の光を【5】 温かな抱擁

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『嫌なら振り解けよ。簡単だろ?』



「……解ったか?」
「なに、を……? え? いま、なに……」
「だーかーら。俺はお前が好きだってこと!」

 すき? 隙? 数寄? 鋤? 色んな漢字が頭を過ぎる。そして最終的にたどり着いた「好き」を理解した途端、コーリは自分の鼓動がバクバクと早鐘を打つのに気付いた。
 触れた唇を両手で覆い隠す。顔が赤く染まっていくのが解る。

(だってこんな、不意打ち……!)

 どう行動すればいいのかが解らない。何か言葉を発しようにも、頭では何も考えられなくて唇は震えるだけだった。

「ったく……本気で眼中になかったわけか」
「違っ、そんなわけ……!」

 反射的に否定してしまって、コーリは失敗したと思った。これでは自分も彼を好きだと言っているようなものだ。
 明人の顔が、呆れから徐々に喜びに変わっていくのを目の当たりにして、言葉にしかけたことを後悔した。

「……良かった」

 言葉と同時に、ふわり、と抱き締められる。否、抱き着かれる、の方が正しいかもしれない。魂だけの彼は、コーリを抱き寄せることが出来ないのだから。

「な、何この体勢!」
「嫌なら振り解けよ。簡単だろ?」

 気恥ずかしさから声を荒げても、明人は喉の奥で笑うだけ。何だか悔しくて、でも、……振り解くことなんか、出来なかった。
 明人が命を落としたのは、他ならぬ透子のせい。……いや、透子のため、と言い換えるべきかもしれない。……好きだと言った、彼の言葉が本当ならば。────でも。

「私は……」
「ん?」
「私は、そんな言葉なんて……永遠に聞けなくたって良かった……っ! それより、生きていてくれた方が、嬉しかったのに……!」
「まぁ、うん。それは謝る。ごめんな?」

 どうして……そこで謝ってしまうのだろう、彼は。反論してくれればいいのに。そうすれば、透子が感じてる罪悪感も、少しは薄まるのに……。
 謝られてしまったら、もう、何も言えなくなる────……。

「バカ……っ!」
「お前、さっきからバカしか言ってないぞ?」
「バカにバカって言って何が悪いのよっ!」
「あー、はいはい、解った解った」

 宥められるように亜麻色の髪を撫でられる。子供扱いされているようでちょっとだけ不満だったけれど、透子として生きた年齢にコーリとして生きた年齢を合わせても、明人が生きた時間は追い越せない。

「……泪ちゃん、きっと泣いてる……」

 先程告げた言葉と同じ言葉。けれど、意味合いは少し違っている。
 泪花が明人と付き合っていなかったとしても、大切な幼馴染みだったのには間違いがない。それは、かつてのコーリが二人を大好きだったのと同じで、泪花だって……。

「まぁ、泣いてはいるだろうけど……大丈夫だよ。今の泪花は母親だ、いつまでも泣いてなんかいらんないって。……透子が殺された時は、半年以上泣き暮らしてたから、あいつ」

 明人にはどうにも出来なかった。彼は、透子に近すぎたから。会えばどうしても透子を思い出す。実際に、泪花を見舞った時、彼女は明人の姿を見ただけで泣いたという。
 その泪花の傍にいてくれたのが、今の彼女の結婚相手らしい。

「でもな、透子」
「なに……?」
「俺は、……後悔してないから」

 透子を殺した犯人を追いつめたこと。逆に殺されてしまったけれど、強盗殺人犯は逮捕された。それを間近で見ていた。消えそうになる意識を必死で繋ぎ止めて、明人はそれを見届けたと告げた。

「……後悔させてやりたいわ、思い切り」
「出来るものならやってみ」

 本当に、明人に後悔させて、この魂を現世に戻せるのならやってやりたいぐらいだ。もう、体から完璧に切り離されてしまった魂を体に戻すことなんて出来ないけれど。
 そのまま一度だけ、彼の体に腕を回して、ぎゅっと強く抱き締める。裁きの門をくぐってしまえばもう、『笹野明人』という存在は消えてしまうから。死神として生きている以上、コーリの記憶の中で生きる彼を、覚えていられるように。
 コーリの仕草に応えるように、明人の腕の力も強くなる。そして……。

「なぁ? 死神って、どうやったらなれるんだ?」

 思いもしない言葉が、彼の口から発せられた。



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