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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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明るき陽の光を【4】 的外れの勘違い

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『違わない、私のせいじゃない!』



「……許せなかったんだよ」

 透子を殺した犯人を許せなかったと、明人は言う。

「やっと高校生になって、まだたくさんの未来があったのに」

 あの時の恐怖を思い出す。真っ暗な家の中、口を塞がれ、ナイフで腹部を刺された。
 誰か助けて。そう思った時に現れたのは、透子の魂を刈り取りに来た、二人の死神。この痛みから逃れられるなら……と、透子は願った。『生』をどれだけ願っても、もう、ダメなのだと……自分自身で解っていた。
 迫る死を受け入れる事よりも、大好きな二人を悲しませてしまうであろう事の方が、透子には辛かったけれど。

「バカ……! どうしてよ! どうして、私の事なんかっ……!」

 透子よりも大切な泪花がいるのに、どうして透子を殺した犯人を追い掛けたのだろう。もう一度、バカ! と罵ろうとしたのに……明人が紡いだ言葉に、コーリの言葉は封じられてしまった。

「透子を殺されて、黙ってられるか」

 交番勤務ではあったものの、警察官という地位にいて、刑事とはまた違う捜査が出来る自分が。
 大切に見守ってきた少女を殺されて、そのまま犯人を野放しにするなんて、出来るはずがないだろう? そう、明人は告げた。

「私、の……せい……」
「違う。……そう思うと思ったから、言いたくなかったんだ」
「違わない、私のせいじゃない!」

 彼が幼馴染みと言った『透子』の存在がなければ、こんな事にはならなかったはずだ。
 後悔が押し寄せる。殺されたあの日、どうしてもう少し頑張らなかったのだろう。
 ううん、自分ではどうにもならなかった、だって、指先すら自分の思い通りに動いてはくれなくて、明人や泪花が来るのを待つ時間なんて、透子には残されていなかった。

「……透子のせいじゃないよ。俺が、勝手にやったことだ」
「……どうしてよ……!? だって、泪ちゃんがいるのに!」
「何でそこで泪花が出てくる?」
「付き合ってたんでしょう!?」

 コーリがその言葉を発した途端、明人は不思議そうな顔をして「は?」と呟いた。

「何がどうなってそうなったんだ……?」
「だっ、て……」

 楽しそうに腕を組んで、ジュエリーショップに入って行った二人。顔を寄せ合って、見た事のない笑顔で笑っていた。あれは、見間違いなんかじゃなかった。
 それを告げると、明人は少し思案顔になった。

「あ。もしかして、あれか……? 駅前の宝石店。泪花と二人で行った……って」

 どうやらその時のことを思い出したらしい明人が、コーリに向かって盛大な溜息と呆れた視線を向けた。

「……透子、お前すっげ的外れな勘違いしてる。あれはなぁ、お前にあげるプレゼント買いに行ってたんだよ。腕時計欲しいって言ってたんだろ? 泪花に」
「え……?」

 確かに、欲しいと言った。それまで使っていた腕時計は子供っぽくて、高校生になったのだから少しは大人っぽいものが欲しいと……。

「あの時は二人で探しに行ってただけ。……結局、その腕時計は透子に渡せなかったから、今は泪花が持ってる」

 いずれ、ゆきなの物になるんじゃないかな、と呟く明人。聞いたことのない人の名前に、コーリは首を傾げた。

「ゆきな?」
「泪花と、俺の同僚の娘。去年生まれたばっかの女の子で……お前の漢字もらって、透菜ゆきなって言うんだ」
「……る、泪ちゃん結婚したのっ!?」

 うん、と明人が事も無げに頷く。泪花が、結婚していた。明人とは違う誰かと。
 あんなに、仲が良かったのに─────?

「まさか明人くん、泪ちゃんに振られて自棄になって、私を殺した犯人探し」
「なわけあるかっ」
「だってそれ以外考えられないんだもの!」
「……お前、意外と鈍感……って、そうだよなぁ。家庭教師やってた時も、全っ然気にもしてなかったもんな、俺の事」
「……何の話をしてるの?」
「何で俺が家庭教師を買って出たか、透子を殺した犯人探しをしてたか、本当に見当付かない?」

 家庭教師を頼んだのは確か、泪花だったはずだけれど……。その家庭教師だって曜日が決まっていたわけではなくて、都合のいい日があれば教えてもらう。ただそれだけだった。犯人探しは多分、警察官としての意識がそうさせたのだと思うけれど……明確な答えは返せなくて、コーリは明人の顔に正解がないかと探してみる。

「……透子、もう少しこっち」
「え?」
「俺、この位置にいるだけで手一杯なんだからさ。だから、透子が傍に来て」

 手を伸ばせば届く距離。小さく一歩を踏み出すと、「もう少し」と言われてしまう。

「もう、何なのよ、……っ?」

 近づいて、明人を見上げた途端に下りてきた顔。魂に唯一触れられる死神でなければきっと────感じることさえなかった淡い、キスをされた。




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