Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

執事様のお気に入り ケーキバイキング

執事様のお気に入り 目次 二次創作Index

かほさんから頂いたリクエスト、『執事様のお気に入りで、伯王と良ちゃんが幸せ』です。
幸せ……に、なっていると良いなぁ。
では、続きからどうぞ。


「わあっ。おいしそう!! え、どれにしよう? 迷っちゃうよーっ」
「……とにかく、中に入るぞ氷村」
「あっ、うん!」

 目当ての場所に着くなり、ウィンドウにへばりついた良の右腕がぐいっ、と引かれた。そうだ、悩むのは中に入ってからでも出来る。いつの間にか自然に繋がれていた手にエスコートされながら、良は可愛らしい飾り付けの店内へと入っていった。
 ショーケースの中に並ぶ、たくさんのケーキとタルト。どれもこれも良の掌の半分くらいの大きさだったが、その分たくさんの種類が食べられる。

「ねーねー伯王っ、どれから食べる!?」
「好きなのから食べればいいだろ。ほら」

 繋いだ手はそのままに、トングが良に手渡されて、伯王がトレイを持ってくれる。ここにいられる時間を考えれば、早く決めないと食べる時間が減ってしまう。

「よーっし、じゃあとりあえずっ、ショートケーキと、チョコケーキと、あっ! モンブランも美味しいよね!」
「……嬉しいのは解ったから、少し落ち着け?」
「だってだって、半額デーだよー? こんな安い時なんて滅多にないんだから、食べなくちゃ! その為に朝ご飯、ちょびっとしか食べなかったんだし」
「太るぞ?」

 ふっ、と笑った伯王に耳元で囁かれて、良はびくりと体を震わせた。

「ん? どうした?」
「な、何でもない……っ」

 伯王にしてみれば、周りの賑わいの中、確実に良の耳に届くように屈んだのだろうけれど、突然はっきり聞こえた低い声に、良はどぎまぎしてしまう。
 今までは、こんな事なかったのに。近くで声を聞くだけで、鼓動が速くなる。自分の気持ちを自覚してしまってから、伯王の傍にいるのが怖くて、なのに、嬉しくて。

(矛盾、してるなぁ……)

 自分から伯王の手を離す事だけは、絶対にないことだけは確かだけれど。

「氷村? 手が止まってるぞ?」
「あ、えっと。あとどれにしようかなぁって……。ね、伯王はどれがいい?」
「いいから、氷村が好きなのを……」
「私だけが楽しむんじゃ意味ないよ。だから、伯王も選んで?」
「……なら、そっちのブルーベリーケーキ」
「これ? あっ、こっちの方がちょっとだけ大きいからこっちにしようっと!」
「そんなに変わらないと思うけどな?」
「いいのー!」

 その後、目に付く片端から取ろうとする良を慌てて伯王が止めたのは言うまでもない。




 とりあえず、10個のケーキをトレイに乗せて、二人で座れる場所を探す。カウンターにちょうど隣同士空いている席を見つけて、良と伯王はそこに座った。

「ふふふ~」

 甘いものを前にした良が、嬉しそうに笑う。女の子は、というか良は特にそうだ。

「氷村、最初はどれが良い?」
「あっ、自分で」
「いいから」

 俺の仕事を取る気か? と、伯王は笑った。別に学外でも「執事」をしなくたっていいのは解ってるけれど、伯王が良にそうしたいのだから仕方がない。

「えっと、じゃあ……チーズケーキ」
「ほら、フォーク」
「ありがと、伯王」

 取り皿に一つ、チーズケーキをのせて差し出すと、良はふわふわの生地を潰さないようにそっとフォークを入れた。抵抗なく切れたその端を、ゆっくりと口に含んで。

「美味しい……!」
「良かったな?」
「うん!」

 にまにまと緩む頬。幸せそうなその顔を見ていれば、伯王まで嬉しくなる。

「あっ、伯王にも食べさせてあげようと思ったのに」

 食べちゃった、と良が呟く。いつの間にか、皿にあったはずのケーキは跡形もなく無くなっていた。顔に「失敗した」と書いてある良を見て、伯王はくくっ、と喉の奥で笑った。

「欲しかったら自分で取ってくるから」
「えー、だってそれじゃたくさん食べられないじゃない。次からは半分こねっ」

 半分ずつ食べれば、種類もたくさん食べられる。そう主張する良に、伯王は心の中でそっと思った。

(色気より食い気……。というか、花より団子タイプだな、氷村は)

 もっとも、見ている方はそっちの方が楽しかったりもするのだが。

「甘いもの食べると、幸せな気分になるよねー」

 にこっ、とあどけない少女のように微笑む彼女。こんな些細な事で幸せになれる。そしてそれを、幸せだと実感出来る。そんな人間がどれだけいるだろう。

 人間ひとは「幸せ」にはすぐ慣れてしまう。それが「当然」だと思ってしまう。より大きな「幸せ」を求めて、些細な事には見向きもしなくなる。
 けれど本当は、こんな風に大切だと想う人の傍にいられる事が、一番幸せな事なのかも知れない。

「伯王? 食べないの?」
「……いや、お前の食べっぷりがすごくて」
「えっ、そんなにがっついてた!?」
「ゆっくり食べろ、せっかくの味がもったいないぞ?」
「うんっ」

 時間制限はあるけれど、せっかく美味しいものを食べに来ているのだから、味わわなければ損だと、伯王もチョコケーキを皿に取り、口に運ぶ。

「美味しい? 伯王」
「ああ。……でも、お前のケーキの方が美味い」
「えー。売ってるものには敵わないよ」
「俺にとっては、お前のケーキがいいんだよ」

 万人に評価される菓子ではなくて、伯王の為だけに作られたケーキがいい。……それを口に出す事は躊躇われたけれど。

「じゃ、今度作るねっ」
「楽しみにしてる」
「うん!」

 照れているらしく、ほんの少しだけ彼女の頬が赤い。だけど、嬉しそうに笑うから……つられて伯王も笑顔になる。
 【神澤】の跡取りとしての伯王ではなくて。一人の人間として、執事として、彼女に一番近い異性として。
 傍にいられる現在いまを、大切にしたいと思った。

「はい、伯王、半分こね?」
「……お前、これ半分以上食べてるぞ……?」
「え、……っと。気のせいだよ、うん」
「今日が終わったらしばらくダイエット決定な、氷村」
「えーっ!!」

 体調管理も執事の務めだ、と平然と言い返すと、次に良から差し出された皿に乗っていたケーキは、きっちり半分になっていたという。

<FIN>


※後書き 兼 かほさんへの私信

 今回の大震災でご心配頂きまして、本当にありがとうございます。大分時間がかかってしまってごめんなさい。
 頂いたリクエスト、上手く書けているか自信はないんですが……。
 二人がケーキを食べているのは、単に私が食べたかったからです(笑)
 こんなものでよければ、どうぞです。

 かほさんのみお持ち帰り可です。
 

執事様のお気に入り 目次 二次創作Index

スポンサーサイト

Comment

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by
  • 2011.04/20 21:40分
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR