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暁のヨナ 風牙の都にて

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友人Mちゃんからのリクエスト、『暁のヨナで、風の部族日常ほのぼの』です。
「幸せの、夢の欠片」とちょっとリンクしています。

『ヨナが見た、幸せな夢』



(ここは、風牙の都……?)

 この場所を離れたのはほんの少し前のことなのに、何だかとても懐かしく、温かな……風の部族の地。
 これは夢だと解っていたから、ヨナは必死で目を覚まそうとした。

「あ。リナ、こっちこっち!」
「テヨン?」
「行こっ」

 自分よりも小さな手に導かれて、ヨナは反射的に走り出してしまう。心とは裏腹に、ヨナの両足はテヨンについて行く。
 この手を離さなければ、もしかしたら今日失うのはテヨンかも知れないのに─────。
 水害や山火事、竜巻、地震……そんな自然災害だけではなく、知らない誰かに、大切な誰かが殺されてしまう。ここ最近、ヨナを眠れなくさせている夢だ。
 だから、早く目を覚まさなければ……。でも、目の覚まし方なんて解るはずもなくて、いつももどかしい思いを抱える。

「ヘンデ! ちょこまか逃げるなっ」
「え~。だったらテウもやめようよ~」

 テヨンに連れられてきた場所でヨナが見たのは、テウがちょこまか飛び回るヘンデに向かって槍を捌いている光景だった。もっとも、早すぎてヨナの瞳では捉えきれなかったけれど。

「二人は喧嘩してるの? ハク」

 腕組みをしながら楽しそうに二人の様子を見ているハクを見上げると、違う違うと首を振られた。

「単にテウの槍の練習に、ヘンデが付き合わされているだけですよ」

 曰く、テウはハクに槍で勝ちたいのだけれど、何度勝負をしても全く勝てないのが悔しいらしい。

「俺に勝てたら部族長な、って言ってあるんですがねぇ……」
「ハクが部族長よりはいいんじゃない?」
「……何か言ったか? 姫さん」
「いいえ?」

 くすり、と笑ってヨナはテウとヘンデに視線を移す。ビュンビュン振り回される槍の軌跡が全く見えないけれど、ヘンデも良く避けているなぁと感心してしまう。それとも、武術を修める者はあれが当たり前なのだろうか。

「おお、リナ殿。こちらへおいでなされ、お茶でもいかがか?」
「……ムンドク、お昼からお酒?」
「月見酒もいいですが、昼間からの酒も格別でしてな」

 ほろ酔い加減なのか、僅かに顔が赤い。そのムンドクの傍に、テヨンがまとわりつく。

「あっ、ずるいじっちゃん、オレも~っ」
「ふむ、テヨンは蜂蜜入りの薬じゃな」
「……じっちゃん~」

 情けない声を出すテヨンの頭を、ぽんぽんと撫でるムンドクの顔がとても優しい。

「リナ、嬉しい?」
「え?」
「笑ってるから」

 無意識の内に、笑みが零れていたらしい。思わず両手を顔に当てようとすると、大きな手がぷに、とヨナの両頬をつまんだ。

「ハ、ハク、何を……っ」
「いえ、何だかその間抜け面が無性にムカつきまして」
「ま、間抜け面って……!」

 反論しながらも、ヨナはほっとしていた。

 どうしてだろう? ハクに意地悪されているのに、心の中が温かい。
 ……違う。心の中じゃなくて、ヨナの周りの空気が、とても温かい。……何かに、包まれているかのように。

(ハクの、腕……?)

 ヨナを守る為に、ずっと傍にいてくれるハク。彼は目の前にいるのに、何故……?
 ハクに抱き締められて、守られているような感覚がある。

「……どうしました? いつもならもっと噛み付くのに」
「噛み付いたりしないわよ……っ!」
「そーですか」

 ニッ、とハクが余裕顔で笑ってみせる。年上の余裕なのかも知れないけれど、それがとても悔しい。

「あーっ! ハク兄ちゃん、ヘンデ兄ちゃん危ないよ!」
「は? おっ、とうとう根負けかぁ?」

 見れば、ひょいひょいとテウの槍を避けていたヘンデが地面に倒れている。そのヘンデに向かって、テウの槍が迫り─────。……当然、寸止めだった。

「あはは~。やられちゃった~」

 へらへらと笑いながら戻って来るヘンデと入れ違いに、今度はハクが槍を持って歩き出す。

「ハク?」
「んじゃ、次は俺が相手してやるか」
「げっ。ハク様それはずるくないですか!? 俺今、ヘンデと一戦……っ!」
「そんぐらい平気だろ、ほらっ」
「ちょっ、ハク様横暴ーっ!!」

 ガツンッ、と槍と槍がぶつかる音。高華の雷獣と謳われるハクの攻撃を真正面から受け止めるテウも、相当強いのだろう。

「リナ、はいお茶!」
「ありがとう、テヨン」

 覚めないで─────。こんな幸せな夢ならば、覚めたくない。現実になど戻りたくない。
 ヨナの心の中で、そう囁く声がある。いつまでも夢の中にいたい。そう、すべてが夢であったなら、どんなに─────……。
 でも。……だけど。
 スウォンが父を殺したのは事実。ハクが、ヨナと一緒に城を飛び出してきたのも事実。
 現実から目を背けていては、……戦えない。
 それでも、意識が現実に戻るまでは、この幸せな夢が続いて欲しい。

「あっ、ハク兄ちゃんが勝ったーっ!」
「部族長はまだまだハクじゃなぁ」

 目を輝かせてハクに駆け寄るテヨンと、満足げに髭をさするムンドクと。ヘンデは地面に突っ伏しているテウを、「やーい」と指先でツンツンとつつき、テウはテウで「やめろ~……」とヘンデの手を払おうとするも上手くいかず。
 くすくす、と笑うヨナを見て、ハクがホッとしたように笑う。
 その笑い声がだんだん遠くなって、目を覚ましたヨナがハクに抱きかかえられている事に気付くのは、もう少し後の事。




※Mちゃんから許可が出たので掲載させて頂きました!
 これ、速攻でリクエストされたんですよね~。間髪入れずに(笑)

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