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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 直くんの葛藤

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ホワイトデーSS「手を繋いで」で着ぐるみを着ていたのは、実は……?



 友達がやるはずだった着ぐるみのバイトに駆り出された直は、リニューアルオープンしたばかりの水族館の出口付近で、館員の女性の隣で手を振っていた。

(やってらんねぇ……)

 着ぐるみは暑いし、喋ってはいけないという鉄則があるし。子供達はよじ登ろうとしてくるし、一体何度写真を撮られただろう。
 ややうんざりしながらも、仕事は仕事だ。今日一日だけだし、と思いながら狭い視界で着ぐるみの外を見た瞬間。

(詩春っ!?)

 同じ施設で暮らす、自分が想いを寄せている少女が楽しそうに笑っている。その隣で歩いているのは……イケメンアナウンサーと囁かれている松永政二。

(あ、あいつ……っ。何で詩春の手ェ握ってんだよっ!)

 詩春が自分から手を繋ぐわけはない。そんな女じゃない。ということは、政二の方からだろうが、どうして詩春は嫌がりもせずにいるのだ。
 どうにか繋がれているあの手を離したくて、直は無言のまま子供達と話している館員の女性の肩を叩いた。

「ん? どうしたの?」

 あれ、と詩春達の方を指差す。とはいっても、外見はペンギンの為、ただ方向を示しただけになったが。

「あら、ありがとう」

 帰るお客様を見つけてくれて、との事だろうが、この時の直は、一秒でも早くあの二人を引き離す事しか頭になかった。女性と一緒に歩いて、詩春達を呼び止める。

「ご来館ありがとうございました」
「おっきい!」
「ぺんぎんさん~」

(うわっ!? 待て、急に飛びかかるんじゃねーっ)

 ただでさえ動きづらい着ぐるみだ。重心がずれると転ぶ可能性が高い。そう判断して、直は両足に力を入れてそのまま動かずにいた。
 じーっ、と双子が直を(正確にはペンギンを)見上げてくる。ふと、女の子の方がにっこりと笑う。と……。

(よ、よじ登るなーっ!)

 小さな手でも掴みやすい、フワフワの生地が、こんな時ばかりは恨めしい。けれど下手に動けば子供達に怪我をさせるし、施設の子供達ならば遠慮無くやるが、相手は一応客だ。どうすればいい、と悩んでいる時、政二が直の異変に気付いて慌てた声を上げた。

「こら、茜、葵っ! よじ登るなっ!」

 うんしょ、うんしょ、と登ってきた女の子と一緒に、男の子の方まで登ってきていた。すでに腰辺りまで到達されていて、余計に身動きが取れなくなってしまう。ここで落としたらそれこそ大変だ。

(詩春っ! 助けろ、お前こいつらのベビーシッターだろーがっ)

「ふ、二人ともっ。下りてあげないとペンギンさん可哀相だよ!?」

 直の心の声が聞こえたのか、心地よい声が双子の上昇を止める。

「ぺんぎんさん、あそぶの~」
「あーそーぼーっ」

(遊べるかぁっ!)

 無理に決まってる。辛うじてまだ自由が利く腕と首を総動員して、拒否を示す。声さえ出せるなら、怒鳴りつけられるのに。
 ……が、そうすれば正体がバレるだけではなく、詩春に「もー、直くん!」と窘められてしまうだろう。

「ペンギンさんは、まだお仕事あるんだよ~。だから、二人とも降りよう? ね?」
「おしごと?」
「あるの……?」

 またもや大きな瞳でじーっ、と見つめられて、直は慌てて頷いた。今日来ている子供達はこの子達だけではないのは確かだ。

「ね?」
「……ん」
「おりる……」
「うん、二人ともいいこいいこ」

 しゃがみ込んで、二人の頭を撫でようとした詩春の手が止まる。繋がれたままの手に、視線が注がれる。

(そーだ、そのまま手ぇ離せっ)

 本来の目的はそっちだ。詩春と政二の間で繋がれている手が、無性に苛つく。

「あ、あの……手……」
「手? あっ! ご、ごめん、ずっと繋いだままだった!」

(ずっとって、いつから手ぇ繋いでたんだ!?)

 が、その後に続いた詩春の言葉に、直は思いっきりショックを受けた。

「いいえ。……温かかったです」

 僅かに頬を赤らめて、政二を見上げるその顔は、直が見たことがない表情だった。ベビーシッターに行くようになるまでは、詩春の世界は施設と学校だけで。その中でも直は、ずっとずっと詩春と一緒にいて、色んな表情を見てきたのに。
 どうして、知らない顔をするんだろう。どうして、その表情を真正面から見るのが自分ではないのだろう。
 と、いうか。

(少しぐらい危機感持てっつーの、このバカ!)

 詩春は政二を大人の男の人だと言うけれど、そんな表情を見せられて、揺らがない男などいない。惚れた男の欲目と言われればそれまでだが、現に政二ははにかんだように笑っている。
 着ぐるみさえ着ていなければ、今すぐにその細い手首を捕まえて、家に連れ戻したい気分だった。




 一日限りのバイトを終えて施設に辿り着いた時、直は詩春と玄関先でばったり会ってしまった。

「あれ、直くん。直くんも今帰り?」

 そう言って笑う詩春を見た途端、水族館での彼女の笑顔を思い出した。自分の前では決してしない、あの笑顔を。

「今日ね、水族館に行ったんだよ。ホワイトデーのお返しにって、松永さんが連れて行ってくれたの。それでね」

(知ってるよ。見てたんだから……!)

 悔しい。どうしてそばにいるのが自分ではないのだ。……とはいえ、この気持ちを素直に詩春に伝えることなんて、自分には到底出来そうにないけれど。
 ついでに言えば、詩春に気づけと言うのも無理な話だ。

「みんなにお土産でお菓子買ってきたから、明日みんなで食べようね! じゃ、お休み~っ」

 パタパタと、部屋へと帰ってしまう詩春の背中を見送りながら、直はそっと呟いた。

「……菓子なんかいらねぇよ……」

 それよりも、もっと欲しいものが直にはある。
 そう、例えば────自分だけに見せる、最高の笑顔とか。
 と、そこまで思って、またもや水族館での政二と詩春の姿を思い出してしまい、悶々と眠れない夜を過ごしたのだった。




~翌朝~

「直くん、目が赤いよ? 眠れなかったの?」
「……お前のせいだよっ」
「え? え、何で? ちょっと、直くんーっ?」

 スタスタと詩春から離れていってしまった直に言われた言葉を必死に考えてみるも、詩春にはさっぱり原因が解らなかった。




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  • 2013.10/18 01:39分
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