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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 手を繋いで【後編】

LOVE SO LIFE 目次  二次創作Index

『いいえ。……温かかったです』 ホワイトデー編


「ふぁあ~……おっきーねー!」
「アザラシだね。ほら、ちょうどお食事の時間だよ?」
「しはるたんっ、おさかなごっくん!」
「うん、お口おっきいからね~」
「茜と葵なんかバリバリ頭から食べられちゃうかもな?」
「……あかね、おいしくないも」
「あおくんも、おいしくないよ?」
「大丈夫だよ二人とも、食べられたりなんかしないよ~」
「「……ほんと?」」
「うん!」

 水槽の一番前を陣取った双子の後ろにしゃがみ込んで、他愛ない会話を繰り返し。茜と葵が飽きたらまた別の水槽へ。のんびり歩いて、たくさん色んなものを見て。メインイベントのイルカショーでは、双子は目をキラキラさせてイルカの動きを追っていた。

「イルカさん、しゅごい!」
「うん、すごかったね~!」

 イルカショーが終わり、四人はまた歩きだす。ショーを見ていた間は離れていた手もいつの間にか繋がれていて、それがとても自然なように思えてしまった。

『皆様にお知らせいたします。11時より、プール前にてペンギン達のお散歩が始まります。繰り返します……』

「ぺんぎんさん……」
「おさんぽー!」
「うん、行ってみよう!」

 ペンギン達のいるプールから繋がる専用通路の両脇に、たくさんの人々が集まる。やがて通路とプールを隔てる扉が開き、奥からひょこ、とペンギンが顔を出した。
 てと、てと、てと。幼い子供のように、拙い歩き方。障害物にぶつかるペンギン、うまく避けて通るペンギン、勢い余って前にいる別のペンギンにぶつかったりもしている。それを人間達は微笑ましく見つめ、茜と葵はガラスに張り付いていた。

「……さしずめ、あれが茜でその前が葵かな」

 ぶつかったペンギンと、ぶつかられたペンギンを指差し、政二が笑う。

「……ちびっこ怪獣は卒業ですか?」
「いや、それとこれは別で」
「え」
「だってこいつらのパワーは半端じゃないよ!? あの勢いで突進されて激突されたら呼吸困難は確実」
「……あ、あはは……」

 力加減というものが良く解らない双子にしてみれば、体全体で何かを表現するしかない。が、それで大変な目に遭っているのも事実だった。
 やがてペンギン達のお散歩は終わり、お土産を買って、水族館を出ようとした詩春達を呼び止めたのは、水族館員であろう女性。その隣にはペンギンの着ぐるみを着た誰かがいた。

「ご来館ありがとうございました」
「おっきい!」
「ぺんぎんさん~」

 ふわふわの感触に、双子がその足に飛びついた。ちょっと驚いたようだけれど、双子が怪我をしないように動かないでいてくれた。

「こちら、本日限定プレゼントになります。どうぞお持ち帰り下さい」

 渡されたのは、30センチぐらいの大きさの、ペンギンのぬいぐるみが二つと、小さな紙袋が二つ入れられた、少し大きめの一つの袋だった。

「あ、ありが」
「こら、茜、葵っ!」

 お礼を言おうとしたその言葉は、政二の慌てた声に掻き消された。

「よじ登るなっ!」

 見れば茜と葵が着ぐるみペンギンの頭を目指してよじ登っていた。着ぐるみなため、茜や葵の手でも掴みやすいらしく、すでに腰辺りまで到着している。

「ふ、二人ともっ。下りてあげないとペンギンさん可哀相だよ!?」
「ぺんぎんさん、あそぶの~」
「あーそーぼーっ」

 焦る着ぐるみペンギンは、ワタワタと身振り手振りを繰り返す。子供達の夢を壊さないため、着ぐるみは喋らないのが鉄則だからだ。

「ペンギンさんは、まだお仕事あるんだよ~。だから、二人とも降りよう? ね?」
「おしごと?」
「あるの……?」

 未だしがみついたままの双子に、着ぐるみペンギンがコクコクと頷く。

「ね?」
「……ん」
「おりる……」
「うん、二人ともいいこいいこ」

 しゃがみ込んで、二人の頭を撫でようとして……片手の存在をようやく思い出した。あまりにも繋がれているのが自然で、いつしか溶け合ってしまった体温が心地好くて。……離したくないとも、思ってしまったけど。どのみち水族館を出たら離れてしまう。政二から離されるのは、何となく、淋しいと思ってしまった詩春は、躊躇いがちに政二を見た。

「あ、あの……手……」
「手? あっ! ご、ごめん、ずっと繋いだままだった!」
「いいえ。……温かかったです」

 ドキドキして、落ち着かない気分にもなったけれど、どこかで安心もしていた。……温もりがそばにあることで、一人じゃないと言われているようで。

「しはるたん?」
「せーたん?」
「帰ろっか、茜ちゃん、葵くん!」

 いいこいいこ、と双子の頭を撫でれば、「えへ~っ」と照れたように笑った顔が可愛くて、ついその場で抱きしめてしまって館員の女性に笑われてしまった。




 松永家に帰り着いて、貰った限定プレゼントを開けてみた。

「何だった?」
「ストラップ、みたいです。すごく、綺麗な……」

 水色の花の形から、青い花の形へ。そんなグラデーションの中に、所々パールのビーズが入っている。もう一つの袋には同じモチーフの色違い。ピンクから赤のグラデーションだった。

「中村さん、二つ持って行って良いよ」
「え……。そ、そんな……頂けませんっ。だって私、連れて行って頂けただけで充分っ……」
「水族館はバレンタインのお返し。それは、行った記念品。ね」

 でも、と言いよどむ詩春に、政二はいいから、と笑う。

「……じゃあ、赤い方だけ頂いても、良いですか?」
「両方持ってっていいのに」
「いえ……青は、松永さんの方が似合いそうだから……」

 お揃いになってしまいますけど、と詩春は小さな声で呟いた。女友達との『お揃い』はあっても、男の人……それも年上の人とはない。嫌がられるかも、と不安になっていると、不意に詩春の手に乗っていた青いストラップの僅かな重みが消えた。

「じゃ、こっちは俺。……いい?」
「はいっ……!」

 政二との『お揃い』は、ちょっとだけ気恥ずかしかったけれど、それよりも、同じ物を持っていると思うだけで、何だかとても心が温かくなる詩春だった。


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