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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 手を繋いで【前編】

LOVE SO LIFE 目次  二次創作Index

『どこか行きたいところありませんか?』 ホワイトデー編


「しはるたん、だっこ~」

 両手を伸ばして抱っこをねだる葵に、詩春は笑って腕を伸ばした。

「そうだね、見えないもんね。って、待って待って、二人一緒には無理だよっ?」

 小さな手を伸ばす葵の隣では、同じように茜が手を伸ばしていた。詩春の腕力では二人一緒には抱き上げられない。
 どうしよう? と迷っていると、ひょいっ、と茜の体が宙に浮いた。

「こら、中村さんを困らせるな」
「松永さん?」
「茜は俺で我慢、な?」
「たかーい!」

 詩春よりも高い視界に、茜が楽しげに笑う。その事にホッとして、詩春は葵の小さな体を抱き上げた。

「しはるたん、これ、なぁに?」

 詩春の胸の高さにある水槽を指差す葵の言葉に、すぐそばにあるプレートを読み上げる。フロア全体が薄暗いおかげで、ちょっと読みづらい。

「えっと……? カブトガニ、だって」
「かにさん?」
「ん~、蟹さんとは違うかな」

 子供の頃、何かの教科書で、写真で見た覚えがあるけれど、まさかこんなに大きいものだったとは。優に50㎝はあるだろう。

「せーたん、あっち~」
「いてて、髪引っ張るな茜っ」

 腕に乗せた茜の小さな手に髪を引っ張られながら、政二は姪の指差す方向へと移動し、詩春もまたその後を付いて行った。

 3月12日、土曜日。詩春は松永家の三人と一緒にとある水族館へとやって来ていた。ここに来ることは、つい昨日決まったばかり。政二が突然、行きたいところはあるか、と訊いてきたからだった。




「中村さん、どこか行きたいところはありませんか?」
「え?」
「少し早いけど、明日の休み。バレンタインのお返しに、行きたいところとかあれば……」
「え、え、だって私、チョコは……っ」

 政二に渡すつもりだったチョコムースは、彼の手には渡らず茜のお腹の中に入ってしまった。それなのにお返しをもらうわけにはいかないと告げれば、彼が小さく笑う。

「サシェ。くれたでしょう?」
「あ……」

 元々、詩春は政二にチョコレートを渡すことを躊躇っていた。去年の段ボールに詰められたチョコレート達の行く末を知っているだけに。
 だから、チョコとは別のものを用意していた。それがハーブのサシェだ。

「どうかな?」
「あ、でも、えっと……」

 突然言われても、思い付くものがない。行きたいところ、と訊かれて一番に思い付くのはホームセンターとかスーパーだ。

「あ。ホームセンターとかは無しだよ?」
「……松永さん、何で考えてること解るんですか」

 先読みされてしまった悔しさと恥ずかしさで、顔を両手で覆う詩春は、政二が苦笑を堪えていることに気づかなかった。

「ゆっくり考えて。俺、着替えて来るから」

 すたすた、ぱたん。政二が部屋を出たことが解っても、詩春は頭を悩ませていた。

「しはるたん? どしたの?」
「どちたのー?」

 おもちゃで遊んでいた双子が、詩春の様子に気づいて声をかけてくる。

「……あのね、松永さんが明日お休みだから、好きなところに連れていってくれるって」

 すきなとこ? と、二人が首を傾げた。

「うん。でも、どこがいいかなあ……」

 3月も半ばとはいえまだ少し肌寒い。出来れば屋根のあるところで、政二ものんびり出来るところがいい。
 その時、テーブルの上にある一枚の広告が目に入った。リニューアルオープンした水族館のお知らせだ。

(あ……!)

 この広告を持って行けば、少なからず割引にもなるし、それに限定プレゼントもあるらしい。

「茜ちゃん、葵くん、お魚さん見に行こうか!」
「「おさかな?」」
「そう! いろーんなお魚さんがいるんだよ。ペンギンさんも見られるって」
「「みるーっ!」」

 と、双子も賛成してくれたので水族館に来ることになったのだった。



「せーたん、かえるさん!」
「しはるたん、おさかなちっちゃい~」

 エスカレーターで2階へ行くと、今度は低い位置に水槽があったので、双子を腕から下ろすと、たたっ、と走って行ってしまう。詩春は慌てて声をかけた。

「二人ともっ、はぐれちゃうからお手々繋いでね!」
「「あいっ」」

 どちらからともなく繋がれる手。お揃いの服を着た双子は、疎らな人波では目を引いた。

「ねー見て、双子かな」
「お揃いの服着てかわいーっ」

 そんな声が聞こえる中、詩春と政二は二人を見失わないように注意しながら歩いていく。不意に頭上から、申し訳なさそうな声が届いた。

「何か……ごめん。あんまり見て歩けないね」
「そんな事ないです。充分見てますよ!」

 魚は、確かにゆっくりは見て歩けはしないけれど、その代わり、茜と葵の楽しそうな顔をたくさん見ている。そして二人を優しく見守る政二の顔も。それだけで充分楽しい、とは、さすがに口には出せなかった。

「あ、危な……っ」
「え?」

 突然ぐっ、と腕を取られて引き寄せられる。何事かと思いきや、詩春が今まで立っていたその場所を、ものすごい勢いで駆けていく小学生くらいの子供達。

「あ! 茜ちゃん、葵くん!」

 あのままの勢いで走られたら、詩春達の前にいた双子など突き飛ばされてしまうと案じたが、政二が「大丈夫」と笑った。

「水槽にへばり付いてるから、あいつら」
「よ、良かった……」

 心配事が減ると同時に、今の自分の状況を思い出す。

(か、体が近い……っ)

 引き寄せられたのだから当然といえば当然だが、離れようにも何故か体が動いてくれない。

(……ど、どうしよう……)

 考えても肌で感じる至近距離が思考を掻き乱す。

「……はぐれないように」
「え……?」
「はぐれないように、繋いでていいかな」

 既に温かく大きな掌に包まれた詩春の手を、政二が僅かに持ち上げて見せる。断る理由が見つからなくて、詩春は素直に頷いた。
 最初のうちは、政二と手を繋ぐ気恥ずかしさでなかなか顔をあげられなかったのだけれど、「しはるたん! せーたん、こっち~!」と元気に双子が呼ぶ度に、政二と顔を見合わせて苦笑してしまって、いつしか二人の手の温度が一緒になっていることにも気づかなかった。


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