Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

龍と魔法使い 夢の知らせ

その他版権 目次 二次創作Index

時系列は「緑のアルダ 約束の地」の後ですが、ほぼ「龍と魔法使い」2巻直後です(笑)

 懐かしい夢を見た。
 ただ、タギとレンの傍で笑っていられるだけで良かったあの頃。遥か昔、もう千年も前の記憶なのに、色褪せることなく、あの日の輝きは胸にある。



「シェイラ! こら待てっ!」

 黒髪の魔法使いが、フワフワの金髪の小さな女の子を追いかける。黒髪の魔法使いの名はタギ、金髪の女の子は、このフウキ国を守護する風龍・シェルローの一の姫であるシェイラギーニ。つまり、外見は人間だが、その本性は白銀に輝く龍なのである。

「タギが遅いんだ! 早く早く、今日はパーティなんだろう?」

 元々風龍はお祭り騒ぎが好きな種族だ。パーティーと聞けば、ワクワクするのは当然である。まして、まだ幼いシェイラなら。

「緑星亭は逃げませんよ、龍の姫」
「あっ、レン!」

 優しげな風貌の、金髪の魔法使いまでもが合流して、シェイラはやっと三人揃った、と満足げに笑った。
 いつも三人揃っているから、一人欠けると変な感じなのだ。一番好きなのはやっぱりタギだけれど。
 今日は先日起きた偽レン事件(至高の地位を羨んだ一人の魔法使いがレンに化けて騒動を起こした)が解決したお祝いのパーティー。被害に遭った店・緑星亭の常連達を招いて、大騒ぎをしようというのだ。

「ベラルダ! テオ!」
「シェイラちゃん! いらっしゃい!」

 酒場の歌姫・ベラルダの滑らかな手が頬に触れて、反対側の頬に軽く口づけられる。

「待ってたのよ。さ、入って入って」
「わあっ!」

 中に入った途端、鮮やかな色彩が目に飛び込んできた。そこかしこに飾り付けがされ、普段は殺風景な窓にまでレースがかかっている。食卓に並ぶのは店主自慢の料理の数々。

「うわぁっ、すごいすごいっ! これ、ベラルダがやったのか!?」
「実際にやったのはテオよ。私は監督してただけ」

 茶目っ気たっぷりに片目を閉じるベラルダに、シェイラも一緒に笑ってしまった。こき使われる下級の魔法使い・テオの姿が目に浮かぶ。

「そうなんですよ~。大将、ベラルダさん酷いんですよ! あっちが違うこっちが違うって俺の体は一つしかないのに! おまけに龍の絵まで描かされて!」

 ……どうやらシェイラが浮かべた映像に、間違いはなかったらしい。タギとレンに泣きつくテオの頭を、タギがぐしゃぐしゃにした。

「お前なぁ、女なんかにこき使われて……いや、ベラルダ相手じゃ無理があるか。それにしても、魔法使えばよかったじゃねぇか、あんな絵なんかすぐだぞ?」
「そ、それは大将だから言えるんです! 俺なんか……」
「そんなんじゃ昇級試験受からねーぞ。もし落ちたら……そーだな、3ヶ月ぐらいブタに変えてやる」
「タギ、さすがにそれは……せめて3週間とか」
「って、ブタに変えられるのは決定ですか!」

 あははははっ、と、タギ達を見ていた周りの客が盛大に笑い始める。テオはがっくりとうなだれて、その様子がさらに笑いを誘う。

「そうだシェイラ! お前、間違ってもまた酒なんて飲むんじゃねーぞ!」
「あれは知らなかったんだ! 仕方ないだろう!?」
「絶対飲むなよ!? 後が大変なんだからなっ、お前を背負って帰るのは一苦労……」
「私はそんなに重くないっ!」

 言葉と同時に、タギの足のつま先を思いっきり踏みつけてやった。

「っ!! シェイラ!」
「まあまあ、いいじゃないの。さあ、功労者も揃ったことだし、パーティーを始めましょうか」

 ベラルダの一声に、わあっ、と歓声が上がる。

 タギはゲームに夢中になり、レンは「女装、似合ってたよ」と客にからかわれ、フウキ国王子の指南役であるサフネル伯爵と大貴族のエバンス公爵は酒をのみ交わし。シェイラはベラルダたっての希望で、一緒にステージの上で歌い始めた。もちろん、タギの言いつけは守って、今回は酒を飲まずに。
 ベラルダが最初のフレーズを歌い出す。すっ、と息を吸い込んでシェイラも一緒になって歌い始める。
 それは、とても甘い恋の歌だった。




「シェイラギーニ、お客様だよ」

 唐突に声をかけられ、夢から覚めた。久しぶりに人間の姿になって、東屋で薔薇の香りを楽しんでいる内に、いつの間にか寝入ってしまっていたらしい。もう、幼い子供でもないのに、と心の中で苦笑する。

「お客様?」

 視線を移せば、親愛を誓ったギルトラントと、見知らぬ女性。そして、ギルトラントが一歩横にずれた背後には────。

「ヨール……?」
「風龍殿」

 千年前、自分が犯した罪を知る一匹ひとり。地狼のヨール。
 青の宝国をめぐる風の精霊達が、ヨールの体を撫でていく。日を浴びて、キラキラ輝くあの体に抱きついて、どれだけ慰めて貰っただろう。千年前、苦しくて苦しくて────それでも、黒髪の魔法使いと天使族の娘の傍にいたかった頃の事。

「そちらの方は? ……いえ、お会いした事がありますね。確かミズベの……」
「はい。リダーロイス王にお仕えしております、ヤチと申します」
「……あの魔法使いの事を研究しているらしい。ならば、風龍殿を欠かしてはいけないと思ってな」

 迎えに来たついでに、ここに連れてきてもらったと、ヨールが告げた。その声音は、どこか気遣いを含んでいて……。
 彼の事を思い出すだけで胸が震える。懐かしく、楽しい記憶の中に沈みたくなる。
 けれどシェイラは今、生きていて。生きているからこそ、彼の事を話す事が出来る。大好きだった彼を知るヨールもいてくれる。
 夢は、もしかしたらこの二人の訪れを報せていたのかも知れない。もう、思い出しても僅かにしか痛まぬ胸が、時の流れと、シェイラの気持ちが消化している事を報せている。
 シェイラはゆっくりと微笑んだ。もう散々歳を取って、ヨールの知る外見とは変わってしまっているだろうけれど。
 歩み寄って、膝をついて。あの頃と変わらぬ毛並みをそっと撫でて、首元に抱きつくように抱き締める。

「そんな顔をしないで、ヨール。大丈夫。もう千年も前の事……気持ちの整理はついています」
「……そうでなければ、あなたの事だ。この国の守龍には成り得なかった」
「ええ、そう。さぁ、お茶を飲みながら話をしましょうか」

 遠い、遠い過去の話。千年前に実在した、生意気で、欲張りで、口も悪くて。だけど。
 優しくて、とても強い魔法使いだった、彼の話を─────……。


<Fin>

その他版権 目次 二次創作Index





大好きな「龍と魔法使い」シリーズ。というよりも、この作者さんが好きです。「龍と魔法使い」と同じ世界観の本はほぼ持ってます(笑)
本棚の整理をしていたら、久しぶりに読みたくなって……そうしたら書いていました。
「緑のアルダ」の最終巻で、ヨールが「いつか(シェイラに)会いに行く」と言っていたので、ヨールにも登場して頂きました。
青の宝国で、シェイラが幸せでありますように。
東の果て半島で、アルダ・ココ達と共にヨールが幸せでありますように。
別々の場所にいても、千年前を知る二人が、お互いの支えでありますように。


スポンサーサイト

Comment

NoTitle

タギとレンとシェイラが懐かしすぎて泣きたくなりました。
いいですね。
  • posted by
  • URL
  • 2012.09/05 22:36分
  • [Edit]

読んで下さってありがとうございます!
タギとレンと、シェイラと。やっぱり、三人揃って笑っていたこの頃が、私は一番好きです。
今は遠い過去ですが、みんなが幸せだといいですよね。
コメント、ありがとうございました。
  • posted by 琳架
  • URL
  • 2012.09/06 17:35分
  • [Edit]

はじめまして。
なんとなく久しぶりに「今龍と魔法使いを調べたら何があるかな」と検索をかけたらこちらに辿り着きました。

原作とギャップがなく、すごく読みやすかったです。
ありがとうございました♪
  • posted by
  • URL
  • 2013.08/28 23:51分
  • [Edit]

Re: タイトルなし

初めまして。読んで下さってありがとうございます。
読みやすいと言って頂けて嬉しいです。原作のイメージは、出来れば崩したくないので……。

コメント、ありがとうございました。
  • posted by 琳架
  • URL
  • 2013.08/29 13:52分
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。